2016年12月22日

「驚きの明治工芸」

 年末ともなると、いろいろと行ってない展覧会もカバーせねばなりません。というわけでこちらもひとつ。



 まあ、まずはこの動画見てほしい。これ、鉄でできてる、と言ったら信じられます? 会場はフィギュアファン風のオタな人たちでいっぱいでした。あー知らなんだ。でも納得。これはすごいわ。おもわず図録買ってしまいましたもん。

 明治期の輸出の主力だった職人工芸の世界。作り手の名前がほとんど残っておらず、ほとんど関心を払われていなかった領域なのですが、これはマジですごい。鉄製なのにぐねぐね動いて、自由にポーズをつけることが可能。まさに現代のフィギュアの夢を150年も前に実現してしまった人たちがいたわけです。

 そして徹底して写実的な描写は、現代の海洋堂にもつながっていく伝統を感じさせますね。大きな龍とか鷹とか蛇とかだけではなくて、カマキリとかセミとかを本物そっくりに原寸大で作ってしまう徹底したこだわりぶりにはまさに絶句するしかない。まだ樹脂なんてぜんぜんない時代だというのに。

 そして木彫でわざわざ竹細工を模したり漆に見せかけたり。果てはひしゃくとその柄にチョコンと乗ったアマガエルを一木から掘り出してしまう。

 とにかくまあ、その執念にはあきれるばかり。京都の細見美術館では今週末まで。関西の人は御急ぎを。そのあと、川越に巡回するそうです。
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2016年12月14日

生誕300年 「若冲の京都 KYOTOの若冲」

 おっと、気が付けばもう会期終わってますな。でもいい展覧会でした。結構頻繁に展示替えがあったので、もっとマメに行きたかったなあ。



 この企画が嬉しかったのは、東京で春先にあった大回顧展が、われわれからすれば再放送めいたものでほとんど未見の作品がなかったのに対し、今回は「関西であまり見せてない、まだ展覧会で登場していない作品をまとめてお見せしよう」という、東京展のさらに一周先を行く企画であったこと。

 ニワトリといったって、花鳥画といったって、いつもの定番作品ばかりだとつまらない。まだまだ若冲作品はいくらでもあって、まだまだ我々をびっくりさせてくれる。

 というわけで今回は個人蔵作品が多い。京都市美術館、がんばったなあ。「鵜にどじょう図」とか「蝶に獅子図」とか。観たこともない作品が次から次へと出るわ出るわ。そしてそのエキセントリックな構図の面白さは相変わらずすごい。本当、若冲にはマンネリということがなかったんでしょうか。生涯。

 今回の白眉はなんといっても人物画で、人間嫌いのオタクで花鳥画ばっかり描いてた、という印象が強い若冲ですが、実は人物画にも面白いものが結構ある。なかでもアッカンベーした「布袋図」のオモロさは出色のものがあります。図録の表紙にもなっておりますが、それも納得。

 今回目玉の義仲寺の花卉図は、かなり剥落が進んでしまっていて残念。構図は実にバタくさい博物画で、これがちゃんと残っていたら、さぞ迫力あったろうなあと思うのですが。

 とにかくもう無茶苦茶人が入ってて、観るのも大変でした。さて、これで終わりではなくて、本日からは、総本山・京都国立博物館にて、「特集陳列 生誕300年 伊藤若冲」が開催。これもまた見たこともないものがずらりと並ぶそうで、楽しみ。やっぱ、若冲は京都で見ないとね。
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2016年11月04日

瀬戸芸行ってました

 またまた空けてしまってすみません〜

 会期末だっ! というわけで大慌てで瀬戸内芸術祭行ってきました。日本全土でアートだアートだと騒いでますが、やっぱり話題性と吸引力でひと味違うというか。とはいえ二日間べったりというのはほぼ初めての体験でした。楽しかった〜次回は春・夏も一回ずつ行けないかマジで検討してみたい。

 今回の大目標はなんといっても豊島を一周してボルタンスキーの二作品を制覇すること。ずっと行きたかった心電図の部屋、なかなかカッコよかったです。

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 今回の目玉である「ささやきの丘」の方は、人里離れた山の中に忽然と風鈴の森を作る、という無茶すぎる企画で、ここだけ行くのに山道を徒歩三十分かかる超難所! でもまあ、それだけの価値はあったかな。

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 寒暖の差は厳しかったけど、二日間すばらしい晴天だったのはうれしい限り。もう絶景ポイントの山でした。

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 あとは屈指の難所、小豆島・三都半島をレンタサイクルで攻めてみました。バスの時間とにらめっこで、必死にペダルをこいで総計3時間、半島の先端の1作品はさすがにあきらめましたが、あとはなんとか制覇。実際、作品のクオリティは皆高かったので、会期末に向けてこれから行かれる場合はおすすめかなあ。

 こちらなんとCGではありません。農業用メッシュを使って作られた、巨大動物彫刻。とにかくでかい!

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 全体に地域に根差したテーマ選びがとてもよかったと思いますよ。一番のお気に入りは、古い農機具小屋の中に設置された、木製の昆虫彫刻の数々。巨大カマキリ、すごい迫力!

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 スタンプ帳を見たら、なんだかんだで二日間で島三カ所、計50作品ほど見ている。小豆島フェリーを使うと片道2000円で済むし、民宿の宿は3200円だし、結構安く行けることがわかったのは収穫。豊島・直島は常設展示をずいぶんすっ飛ばしているので、会期外に行くのもまた手かも。
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2016年05月20日

第33回上野の森美術館大賞展

 ちょっと合間が出来たので、GW中に東京に行った際に観た展覧会の話でも。午後から不忍でイベントがあったため、中途半端に空いた時間を潰すために、上野の美術館を巡ることに。「若冲展」はアホほど混んでるみたいですが、もともと関西では既に見たものばかり。関東のみなさんはご愁傷様。

 そこで、ちょっと毛色を変えて「黄金のアフガン展」とこれを巡ることにしました。どっちもまあまあすいてて、それなりにいい時間潰しになりました。「アフガン」は世界史的にも意義あるイベントですしね。本当、これだけすごい財宝を抱えてる国があんなありさまなのはなんとも哀しい。これでもう少し感心が深まればいいんですが。

 まあそちらは今更私がどうこう言うたぐいのものでもないので、500円でぶらりと見たこちらを。関西でもボチボチセレクト展が始まりますし。

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 なんというかその、第一印象というか率直な印象としては「美術の道を選ばなくてよかった」なと。確かにみんなうまい。ものすごい量の作品が天井から床までびっしりと架けられていて、目が回る。しかし、どれもこれもどこかで観たような作風ばかり。具体風の抽象画や細密なデッサン画、ポップ調・パロディ調のデザイン画。みんな既出感がありあり。それは吉野家牛丼盆栽の大賞も変わらない。ていうか、個人的には、これと他の作品の違いがわからない。

 え、なんか違う? そもそもこれ山本太郎のニッポン画の後追いでしかないんでは?

 結局のところ、画学校的な技術論で機械的に評点を付けていった結果でしかないんだろうなあ。玄人目で見ればその差は歴然なのかもしれないけど、ここまで来たら、もう後はほとんど関係ないんでは? という素人気分がぬぐえませんでした。

 これだけいろいろ「なんでもあり」な状況で毎年大量のアーティスト予備軍が芸術系大学を卒業する状況にあっては、たとえ兼業でよしとするとしても飛び抜けた話題を掴むのは本当に難しい。いろいろ文句を言われつつも村上隆・奈良美智がどれだけがんばってオリジナリティを獲得したのかということを実感してしまいました。まあ村上隆はもうダメだなあとは思うけど。時代的果たした功績まで否定するのも違うとは思う。

 こんなコンペやっても多分次世代を担う芸術家は出てこない。ということを実感できたという点では、500円の価値はあったかなと思います。具体美術協会が関西にあってあれだけの個性派集団になり得たのは、まったく理不尽なボス・吉原治郎の支配があればこそで「あいつを出し抜いてやる」というメンバーの反撥がものすごい作品を生み出していったのだと思う。

 まあ、今の若手作家は壁がなさすぎて逆に苦労するとは思います。少なくともこんなところに出してたらダメだろ、それよりは犯罪にならずに社会面を飾る工夫を考えた方がいいと思う。まあアートに難しい時代だとは思いますけどね。みなさん本当におつかれさまでした。たぶん受賞者は明日の美術界を担わないとは思うが。

 
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2016年02月25日

「エッケホモ 現代の人間像を見よ展」「竹岡雄二展」

 なんかアート書くのも久しぶり。ちょっと間が空いたもので。

エッケホモ.jpg

 コンセプトとしては悪くない。戦後アートが人間をどうとらえてきたかという話なので。ただ、最近の収蔵品を集めた展示なので、ちょっと総集編みたいになってしまうのがちょい残念といえば残念かも。最近の国立国際美術館の現代アート展はほぼカバーしているので、ちょっと今更感が強くなりますね。大抵本展の時に観てしまっているのですよ。ただ、展示品の中から「これとこれを買ったのか」というのを再確認できる場としては面白い。なるほどねー国立国際美術館の「お買いもの報告」として見る楽しみはあると言えそうですね。

 それよりもむしろ衝撃だったのが竹岡雄二展。これは衝撃でしたよ。というかこんな人ぜんぜん知らなんだ。

竹岡雄二展.jpg

 美術品の台座のみを制作し、それ自体を作品として見せる。つまり「美術品の不在」を作品化したメタ的な作風というわけです。巨大なガラスケースになんも入ってない、とか、なかなか挑発的な表現がステキ。しかも台座そのものは結構職人的にきっちり作ってしまっているのがミソ。どこにでも売ってる既製品でもなく、露骨に主張する芸術作品でありすぎるわけでもない。そのあたりのほどよい挑発が見る者に刺激を与えてくれます。

 こういう出会いがあるから、国立国際美術館ウォッチは欠かせないのですよね。
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2015年05月22日

「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」

 ずいぶんあざといポスターに食傷して避けてたんですが、さすがに会期末なんで行ってきました。いやー行ってよかった。すごいなこれ。



 コレクター展というのは結構最近見かけます。まあ、コレクターという個性的な鑑識眼からアートを見直そうというのは比較的考えられる企画ではありますが。下手をするとお金持ちの自慢話になって結構ツラい。アートを身近に感じさせるという点では「ハーブ&ドロシー」が最高だろうし、鑑識眼の素晴らしさとコレクションのユニークさという点では「エツコ&ジョウ・プライス」がなんといってもすばらしい。プライスさん自体がすごい人ですしね。

 そういう点から言うと、今更「お金持ちのコレクション」てどうなんよ、と言いたくなるわけですが、そこを逆手にとって非常に挑発的な展示に持ち込んでいるのがこの展覧会のすごいところ。アートを身近に感じてもらうために「芸術的価値」と「経済的価値」を併記します、というミもフタもないことを言い出すわけですが。実はこの「経済的価値」というところが曲者。

 ヤゲオ財団の一方の柱は、中国・台湾を主体としたアジアアートのコレクションなのですが。大半は日本ではまったく無名。確かに作品のクオリティはなかなか皆すごいものだけど、それだけでは観客もぴんとこないんじゃないか、と「経済的価値」で観客を煽るあたりがすごいというかなんというか(^^;

 確かに村上隆と奈良美智は日本を代表するアーチストであり、作品は桁外れの高額でやりとりされています。でも、それはアジアの最高峰なんでしょうか?いえいえとんでもない。サンユウ(常玉)という台湾の巨匠の人気が最近高まっており、奈良美智の何倍もの落札価格で取引されている。ご存知でした?常玉。私はぜんぜん知らなかった。確かになかなか斬新な中華様式と西洋絵画の融合がみられます。

 蔡強國だけを知っていても中国アートを知ったことにはならないし、私たちのぜんぜん知らないところに世界の最先端はあるのかもしれない。もちろんアートの物差しは金額だけではないのは言うまでもありませんが、世界のトップ人気のアーチストが全然日本では知られずじまいなんてこともありうるということは知っておいて損はないでしょう。

 しかしコレクター展でここまで挑発してくるとは大したものです。会場の出口には「50億円お買いものゲーム」なる趣味の悪い企画もありますし(^^;え、私ですか?25億円もオーバーしてしまった。やっぱウォーホル選んだのが敗因やなー(−−;
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2015年05月15日

「赤瀬川原平の芸術原論」

 思い返してみると不思議なのですが、いつのころから赤瀬川原平のことが好きだったのかよく分からない。気が付けば追っかけていたし、アナーキズム的な過激さに惹かれていたということは、初期の前衛作品が好きだったということであるはず。ところが、何がきっかけだったのかよく思い出せない。

 というわけで、行ってきました大回顧展。わざわざ広島まで日帰りで。いや感慨深かった。



 まあ、たぶんネオ・ダダ時代あたりかハイ・レッド・センターあたりなんじゃないかな。でもどれもこれも面白くて、思わず見入ってしまった。これは間違いなく交通費かけてでも見に行く価値ありですよ。とりあえず行きは新幹線、帰りは昼間バスで。それで14000円くらい。ちなみにものすごく点数が多いので、一点ずつじっくり見て行ったら、軽く二時間はかかります。

 http://www.hiroshima-moca.jp/akasegawa/index.html

 既に現存しない作品も、再製作や写真・パーツなどで見ることができるので、当時の熱気は十分に堪能できます。やっぱハイ・レッド・センターのシェルタープランや、千円札拡大模写、櫻画報に「お座敷」を生で本物が見られるのはやっぱ感動。

 写真ではいくらでも出回ってますけど、意外と本物は見る機会少ないですよね。「お座敷」なんて、全編が生原稿で見られるんですけど、そのすさまじい描き込みに絶句します。これどんだけかけて描いたんだろうかと。こうして全体像がまとめて見られるのは初めてのことですけど、そんなことはほとんど不可能だということが実感できるほどの壮大な業績に圧倒されました。これでも近年のエッセイスト系列はだいぶんはしょってますからね。まさにマルチアーティストの鑑。尾辻克彦の生原稿まであるんですから、よくもまあここまで集めたものだと感心してしまう。これが終わったら、ここまで見る機会はもう、たぶん二度とないでしょう。

 鈍器にでも使えそうな電話帳なみの図録が超充実してます。行けない人は、ぜひ取り寄せてでも読むべし。これを読むだけでも、展覧会の活況が肌で感じられます。ともかくもこれほどお腹いっぱいに楽しめた回顧展は久しぶり。おすすめです。
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2015年03月15日

「フィオナ・タン まなざしの詩学」

 久々に展覧会行ってきました。なかなか充実の展示内容だけど、展示をすべて観るのは至難の業。結構能動的な鑑賞が求められますね。そういう点でも面白いといえば面白かった。



 フィオナ・タンは基本的にビデオアーチストですので、つまり個々の展示作品をフルに観ようと思えば、ある程度の時間作品の前で踏ん張っていなければならない。初期の代表作「ダウンサイド・アップ」などはほんの二分半ほどですから、それほど大変でもないのですが、展示を先に進むにつれてどんどん作品の所要時間は長くなっていきます。

 そもそも二本のドキュメンタリー(60分×2本)を観るだけで半日がつぶれるわけですから、大真面目に全部チェックしようとすれば軽く一日が吹っ飛ぶことになる。実際、この展示は一日に限って再入場が可となっています。本当は、複数日にまたがる鑑賞を認めてほしいところですねえ。

 とはいえそんなに時間もかけられないので、時間とともに変化するインスタレーション作品と割り切って、ぶらぶらと見歩きました。面白いのは、ある程度そうした鑑賞方法を許容する展示方式になっているということですね。入口があるけど出口はない。つまり、一度観た作品をもう一度時間を置いて再鑑賞しながら出ていく仕組みになっているというわけです。

 プロジェクターや液晶モニターという最新鋭のハードだけではなく、16ミリフィルムやブラウン管モニターも堂々と持ち出してくるところが、インスタレーションだなあと思います。特にカタカタ言いながら動き続ける映写機のアナログぶりは実に味わいぶかくていい。そういう意味で、展示会場の冒頭に置かれた「ゆりかご」、なかなかの味わいです。

 初期はバルーンとか崖を転げ落ちる自分自身とか、わかりやすくシンプルな素材が使われていましたけど、その後だんだん老人・自然・骨董品など意味ありげなガジェットをマルチスクリーン上で複雑に組み合わせ、不気味な雰囲気を高めていく作品が増えていきます。

 文句なしに代表作といえば、老女と若い女と大瀑布の映像を5.1chの大迫力で描いた「ライズ・アンド・フォール」なのでしょうけど、個人的に好きなのは、小さな縦型液晶モニターを使って、ゆっくりと動き続ける様々な年齢の人々のポートレイト「プロヴナンス」でしょうか。一見スチールポートレイトのように見えるのだけど、ぶらぶら見て回って戻ってきてみるとぜんぜん違う画面になっていたりするのがなんとも不思議で素敵。モノクロの静謐な画面が実に美しくて…

 さてしかし、これどのように観るかで印象ぜんぜん変わりますね。うーん可能なら会期末までにもう一回行きたいものです。
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2014年12月05日

「だまし絵U」

 前回は行列並んでの観覧でしたが、今回は夕方に急いで観たこともあってまあすいてました。子供に受けるプログラムということもあって、夕方の方がねらい目です。それでも子供けっこういたな。



 今回もジュゼッペ・アルチンボルドの作品が二点、本物が見られたのは喜ばしい。17世紀のアナモルフォーシス絵画が本物で見られたのもなんかすごい。

 しかし今回は大半が現代作品で、そして現代作品というのはなんらかの意味で遊びやだまし絵的要素を取り込んでいるものが大半なんだなと実感。遊びをただ遊びではなく、なんらかの批評行為として行うところがミソなんですけどね。福田美蘭のようになにを目指している人もいますが(^^;

 ゲルンハルト・リヒターや高松次郎がだまし絵と言われるとちょっと「え」という感じですが、マグリットが「だまし絵」という指摘には、「ああなるほど」とちょっと得心行くところもありまして。そういう点では前回とはまた違う面白さがあったというべきでしょうか。

 まあ、でも一番楽しかったのはダニエル・ローズィンの「木の鏡」でしょうね。カシャカシャ騒々しいけどとっても楽しい。
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2014年09月05日

「バルテュス展」

 久々に展覧会の話など。この夏最大の話題の展覧会のひとつ、ようやく行ってまいりましたよ。もう会期末ギリギリ。今日は雨だったんですけどねーなかなか京都に行く機会がなくて。

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 個人的にはほとんど思い入れのない画家だし、日本での知名度も決して高くない。でもものすごい反響だし、どこか引き付けられるところがある。というわけでなんとか会期末に行ってきました。行ってよかった。平日だっていうのに結構な人ですよ。

 確かに具象画・近代でここまで挑発的な表現を成し得た人というのはちょっと思いつかない。11歳の時に版画集を出版してしまうほどの抜群の画力、そして1930年代に活躍した画家であればたいていは抽象表現主義の方に移行したと思うのですが、この人、頑固なまでに生涯具象を貫いている。そして、それでただうまいだけで終わることなく、すさまじく挑発的で忘れがたい画風を確立してしまった。

 まあ、日本美術界も同調する形で抽象表現主義へ移行してしまったから、バルテュスがマイナーな地位にとどまったのも無理はない。これだけの画力の人ですから、抽象表現を取り入れたら、とんでもないものを描いたかもしれない、という気はしますけどね。

 今になってみれば、この具象性のおかげで一見間口が広くなり、しかもエロティシズムがテーマだということで、押すな押すなの盛況となっているのは皮肉なことです。マグリットと同じで、一見とっつきやすいんだけど、本気で解釈しようと思ったら超難しい。

 「挑発」だけでわかった気になっていたらおめでたいもいいところで、ではなんで必ず鏡を持っているのか、顔の表情はどうして微妙に歪んでいるのか、そもそもこのポーズにどんな意味があるのかとか考え始めたら、ゾッとするほどの深淵が口を開いていることに気付いてしまう。

 ラファエル前派のように、きちんと仕組まれた記号ではなく、バルテュス自身も言語化できているかは定かではありません。しかし、暗号状態のままいきなりぶつけられてくる情報の強烈さはかなり衝撃的です。なんだかすごいものを見てしまった。人生の宿題を負ってしまった気分。
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2014年02月05日

「プライベート・ユートピア ここだけの場所」

 今回の東京行はアート目的ではないため美術館巡りはできなかったのですが、新幹線に乗る前に1時間足らずを利用して見たのがこちら。



 いやあ、こんな魅力的な箱があったとは知りませんでしたよ。鼻持ちならない森美術館や無色すぎる新国立近美と違って、適度に個性的で自由度も高い箱でこれからも期待できそう。なんで知らなかったんだろうと思ってましたが、場所柄普段はかなりしょうもない古典美術ばかりやってる模様。これからはぜひ現代アートにも力を入れてほしいですね。実によく映えるし。

 イギリスの現代アートといえばテートモダンで私もロンドンに行った時見てきましたが、これはまたかなり感触が違い、最先端の生きのいいところを凝縮した感じですばらしいセレクション。ふつうは波長が合わずトンチンカンに感じられたり時代とずれて錯誤的に感じたりするものですが…これはまたいい感じのものばかり集まりましたね。いわゆる巨匠や大家のものはひとつもないというのに。

 どれもよかったのですが、鳥の視点で人間社会を風刺的にウォッチしたマーカス・コーツや火星人みたいな架空の鳥の剥製とそれにまつわる故事来歴資料を集めたライアン・ガンダーのフェイク資料が面白かったですね。英国人らしい意地の悪いユーモアがなんともいい感じで。

 あとは、1分足らずのショートムービーでユーモアたっぷりの小粋なインスタレーションパフォーマンスを見せるウッド&ハリソンの二人組がすばらしい。アイデアもさることながら、登場する小道具の色や形などセンスの良さが光ります。

 1時間ほどでゆっくり見てまわれる展示規模もほどよいし、東京を発つ前にちょっとおすすめの場所となりそうです。これからも注目。
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2014年01月07日

「あなたの肖像−工藤哲巳回顧展」

 そろそろ会期末、ということで行ってきました。結構話題の展覧会なわけですが。



 実際行ってみて感じたこと。「なつかしい」

 結構入口の警告がすごくて「かなり激しい表現が多数用いられていますので覚悟して観てください」みたいなことが書いてあるわけですよ。どんだけすごいかとドキドキしましたけど、いやそれほどでもなかった。

 「なつかしい」というのは要するに、子供のころ家にあった美術全集とかが怖くてしょうがなかったんですけど、それって要するにこのあたりの反芸術表現のグロ描写じゃないかと思います。自分が怖がっていたのが工藤哲巳かどうかは実際のところ自信ないですが。まあ、でもたぶんこんな感じ。眼球とか内臓とかの。

 今見ると、結構70年代SFっぽくてそれはそれで楽しいのですが。公害とか文明批評とかが、今となっては素朴にすら見えるのは感慨深くもあります。

 ただ、これたぶん発表当時の姿だったらこんなにレトロフューチャーな雰囲気にはならなかったかもしれません。今回の回顧展で見て一番強く感じたのは「蛍光色って褪せるの早いな」ということでした。

 そう、だからかなり色褪せてレトロっぽい感じが強まってしまった。これが発表当時のギンギラな色彩を残していたら、もっと刺激的だったかもしれない。実際、保存状態の良いものも何点かあって、それは結構キツい毒がまだまだ感じられましたから。

 でも造形を維持するのはとても難しい。美術館の永遠の課題ですね。作家にとっても「作品の保存を考えて制作すべきか」というのは議論の残るところかもしれません。
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2013年11月04日

「瀬戸内国際芸術祭2013」「のんのんびより」#4

 いや、われながら何て取り合わせやねん(^^;

 しかし一泊二日で家族一緒に行ってきましたよ。



 家族はあまり現代美術に興味がない上に見るのもゆっくりなので、一緒に見ていると大量消化は難しい。興味がなさそうな方向には絶対行ってくれないしねーで、結局一泊二日で見たのは、初日小豆島で3点、二日目、男木島4点、宇野3点!!いやいくらなんでも少なすぎ(−−;あたしかさんに笑われる。

 しかしまあ、雰囲気はとてもよかった。次回は春期から一人で通おう(^^;

 一番気に入ったのが、昭和四十年会が休校中の校舎をまるごとジャックして行った展覧会で、一会場の展示としてはびっくりするほどもりだくさん。パルコ木下校長が、校庭に白線で巨大地上絵を描いてた。さすがにあんな不自由なものでもうまいもので、スルスルと男木島の姿が描き出されていくのにはびっくり。

 確かに駆け足で見ていくだけではわからないネタも多くて、教室の中にマジックミラーが対面に仕掛けられたインスタレーションでは、写真撮りながらいろいろ見ていくうちにふと仕掛けに気付いてぶったまげた。解説のこえびボランティアのお姉さんも分からない人には教えてくれない。「よくわかりましたね」とニヤニヤしながら教えてくれたけど人が悪いなあ。

 あとは、実際に学校で描かれて保管されてた「みらいのちからだ原子力」の児童画ポスター群をわざわざ大きなモノクロ写真に撮った展示もよかった。黒板にマグネットで「フクシマ」と書かれてて、とても辛辣。

 しかしこの学校、来年から再開されるそうです。小学校一クラス、中学校一クラスで保存されてて、実際最後には何人通ってたのかしらんけど、「のんのんびより」とマジいい勝負の規模ですね。

 実際に見てまわっていると、「のんのんびより」の世界がかなり正確に僻地分校の世界を再現していることがわかって、かなりびっくりしました。特に帰宅後見た「なつやすみがはじまった」のエピソードは、田舎の夏を実にきめこまかに再現してて感心した。ただの癒し系萌えアニメでないんやなあ。いやその要素もあるんだろうけど。
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2013年08月26日

「谷文晁展」

 東京でハシゴしてきた展覧会第四弾。改装後のサントリー美術館初めて行ってきました。ショッピングモールの上層階にあるのか。なんか白けるな。行けども行けども着かなくて疲れましたよ。店ばっか。しかも結構高そうな。

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まあ、森美術館と同じでひたすらこぎれいでバブリーな印象は変わりませんね。美術館の印象は正直言ってあまりよくない。まあそれでもよくぞここまで集めたもんだと思う。確かに谷文晁という画家は非常に多岐に渡る作風が特徴で、どれが代表作と言えるものがない。

 「なんでも鑑定団」見てると実によく出てきますから、骨董界隈では人気の絵師と言っていいでしょう。しかしニセモノもすごく多い。なんか山水画の軸ならニセモノ見分けられるんじゃないかと思うぐらい膨大に作例見てしまいましたよ。確かに山水画のスタイルは特徴的で特に俵文晁とか烏文晁とか時代によって特徴的なスタイルがまとめて見られたのは実にうれしい。

 個人的には「こんなものまで」という意味で「ファン・ロイエン筆花鳥図模写」と「駱駝図」がお気に入りでしたね。まずは先人の絵をとことんまで模写してそこから自分の個性を出していく、という文晁の教え方は、ある意味絵画というよりはマンガの描き方講座っぽいのですが、そこからなるほどこういう線が出てくるわけだと納得。

 ある意味、江戸絵画もまたマンガの源流にあるのだよなと納得した次第。いや北斎漫画だけじゃなくてね。

 文晁の模写力が最大限に発揮されたという点では「石山寺縁起絵巻」もまたすごい。わざわざ中世っぽく描かれたスタイルが伊達じゃないです。
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2013年08月20日

トーマス・バイルレ展

 東京でハシゴしてきたアート展第三弾。なんとこれは美術館ではなく、オシャレ名所青山一丁目のルイ・ヴィトン東京のギャラリーで開催されている無料展示です。ただし、訪問すると超豪華なハードカバー画集がもれなくもらえます。なんと無敵の多国籍企業。おそるべし。

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 トーマス・バイルレは実は結構思いいれのあるアーチストで、子供のころに見た「ロンリー・ランナー」が今も忘れられない。

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 これは1967年というから、私の生まれるよりも前。もっとデザイナー風のポップアーチストであったわけですが、これこの通り、だまし絵風のユーモラスな作風でいて、どこかペシミズムを感じさせる作風が印象的でした。それは、こちら「ベートーベン」でもおなじ。

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 日本ではこれで有名ですかねえ。この人は。

 でも今回は、より直接的にペシミスティックで、自動車文明によってもたらされる孤独のようなものが描かれている。フロア全体を使った巨大なインスタレーションに圧倒されます。より正統派の折り目正しい現代美術、でしょうか。けっこう真面目になってしまったんだなあ、バイルレ。

 でもこれはこれで洗練されていてかっこいい。ゴムの木の上で自動車に乗り降りするエンドレススチールアニメ映像とかも楽しいんですが、お高いヴィトンのブランド品が飾られた店内の一番奥に映像モニターがあるので、鑑賞していると店員からすごく不審な目で見られる(−−;じゃあそんなとこに置くなー(^^;

 何にしてもほんとうにひさびさのバイルレとの再会、なんかうれしかった。なんだ画集も出てるとは。思わず買ってしまった。

バイルレ 都市・集合・エロス―トーマス・バイルレ造形美の世界 [単行本] / トーマス・バイル...

 しかしこれ、1983年のなのね。結構古いな。
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2013年08月18日

「アメリカン・ポップ・アート展」

 東京でハシゴした美術展第二弾。

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 まあ普通は「いまどきポップ・アートだ?トーシロが」とバカにした目で見られてもおかしくないぐらいいまやメジャー化してしまってるわけでして。実のところちょっとはずかしいといえばはずかしい。観客もオバさんと若いカップルが大半ですわ。

 しかししかし。この超豪華きわまるラインナップはスルーするわけにはいきません。なにしろポップアートは大量生産されましたので、どんな田舎の美術館でも持ってるわけで、誰でも見たことがある。でも本当にその大量の作品群の中でもきわめつきの選り抜きの秀作ってみんなどのくらい見たことがあるんだろう。

 実際に見てみてタメ息が出た。ポップ・アートの大パトロン、ジョン・アンド・キミコ・パワーズ夫妻の集めた中でも本当に選りすぐりの最高傑作ばかり200点。ウォーホルやリキテンスタインなんて、「わかってる」と思い込んでたけど、今まで見ていたのがいかにどうでもいい凡作であったか思い知りましたよ。これがほんとうに正真正銘の最高傑作なのか。「200個のキャンベルスープ缶」。もちろん図録では見たことがあるけど、それではぜんぜん伝わらない。まさしくすさまじいほどの衝撃。本物の作品の前に立ち、この巨大さに打ちのめされなければわからない。

 「うわ…すげ…」

 となったのは、さらにロバート・ラウシェンバーグとジャスパー・ジョーンズ。今まで日本に来ていた作品がどんだけカスばかりだったのかと打ちのめされましたよ。これが本物か。コンバインペインティングも最良の作品はこんなにも巨大でこんなにも精神に直接刺さってくる。保存状態の良さにも驚かされる。ジャスパー・ジョーンズも国旗や数字を描く人というだけではなくて、「うす雪」シリーズなどさらにストイックな抽象画をいっぱい描いてた。この二人で全体の半分近い分量で、しかもとんでもない大作ばかり。

 こんな展覧会アメリカでも実現していないそうだし、めったに見られるものじゃない。チャンスがあればぜひ見てください。ポップアートがどんだけわかってないのか見せつけられるから。
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2013年08月14日

「福田美蘭展」

 今回の東京行では、短い滞在期間をフルに活用して、美術展をかたっぱしから見てきました。普通はこんなに見たいものが集中することはないんですけどねーいやあ、ハラハラドキドキ、最後まで廻り終えた時は達成感にヤッターってなりましたよ。

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 福田美蘭は九〇年代以降に一大潮流を築いたパロディ系現代美術の一人で、とにかく画力の高さとセンスの良さは抜群でした。十年ぐらい前に山梨県美までわざわざ見に行った「種まく人その後」とか「ブラックの静物画に添削」とか、捨て身のユーモアに喝采したもんでした。

 今回は久々にまとまって近年の作品が見られるということで、勇んで行ってきましたが、いやあすばらしかった。それにしてもコピーしてひねるセンスのよさは抜群で、しかもそこに明るいユーモアと非常に現代的な批評眼が見てとれる。「レンブラント−パレットを持つ自画像」なんて、「そう来たか!」とうれしくなってしまうパロディ精神。そしてこれを所蔵しているのが藤子プロだというのがまたおかしい。

 同じ模写系パロディストとしては会田誠がいますが、森美術館の大回顧展でかなり化けの皮がはがれた感じがありますね。さらされてみると結構しょうもない父に反発する不良息子ってだけ。

 これに対して福田美蘭はまだまだ謎ですね。美術史を茶化して何がやりたいのかさっぱり読めず、そこがまたすばらしい。意図が読めるようでは作家としては実はおしまい。だからこの前の大回顧展で「会田誠は終わったな」と思ったわけで。

 「解けそうで解けない謎」をどれだけ魅力的に提示できるかが作家の腕の見せ所なわけですよね。回顧展はある程度作家の歩みをさらしてしまうので、天下り的にヒントが下されてしまう可能性があり、諸刃の剣といえます。しかしそれでも全体像が「陳腐な私小説」となっていないなら、それはとんでもなくすごい。

 そういう意味で福田美蘭は本当にすごい、この人は本物だと思いました。だって、これだけ大量の作品を見ても、なんだかさっぱりわからないんですもん。
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2013年05月31日

「ボストン美術館 日本美術の至宝」

 実はボストンのジャパンコレクションというのは子供のころからのあこがれで、NYのMOMAとボストン美術館は一度は行ってみたい場所だったりします。アメリカ自体西海岸に行くのがやっとだからなあ。先は長い(^^;

 そんなボストンから名品が里帰り、とあらば行かないわけにはいかない。とにかくメチャクチャに混んでるということだったので戦々恐々、戦略を立てて閉館一時間前の午後4時に駆け込む作戦に。さすがにこの時間から見ようという人は少なく、それでも結構ごった返す会場を慌てて巡回していきました。

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 結論から言うと、やはりラストに置かれた蕭白が圧倒的。今まで結構な量を見てきたつもりでしたけど、なんか今回のはどれも格が違う。第一級の超大作ばかりよくぞここまで集めたり、という感じですね。

 「雲竜図」も画集などでは見たことがありますが、本物の超迫力には度肝を抜かれましたよ。こんなにでっかかったのか。このインパクトは実物を見ないとわからない。

 「風仙図屏風」の格闘マンガの見開きコマのような大迫力にも圧倒されました。ぐるぐるの渦巻き、吹き付ける突風。まさにマンガ的迫力。しかもこれ、屏風で立ててみることでものすごい迫力になるんですね。そのあたりを入念に計算に入れて書いているようなので、ぜひ実感していただきたい。

 古典美術の国宝級の大作群ももちろん大したもので、名のみ高い「平治物語絵巻」などは、ドキュメントの喧騒感がリアルに伝わるすばらしさ。中世の絵巻物でここまで衝撃を受けることは滅多にない。これもぜひ実物を見てほしい。とはいえやはり個人的な好みはやはり江戸絵画で、その遊び心の数々はいつ見ても楽しい。

 予想外の拾い物が尾形光琳の松島図屏風で、ほとんどポップアートのようなサイケデリックの色彩感覚に絶句。これ本当に江戸絵画か?

 ポップといえばわれらが若冲は「鸚鵡図」と「十六羅漢図」が出品。「鸚鵡図」は以前にも見たことがあるのですが、「十六羅漢図」は初見参。ユーモアたっぷりのしかも大胆不敵なペンタッチがすばらしい。まさしくこれぞ若冲。今回は4枚だけの出品だそうですが、ぜひ全部見たいなあ。いつか。
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2013年05月07日

特別展覧会「狩野山楽・山雪」

 このGW、見に行った展覧会といえば何よりもコレ!京都国立博物館はいつも尖ったポップな日本画展で時代を牽引してくれるので目が離せない。かつての若冲しかり、他にも蕭白や暁斎と次々埋もれた画家を発掘し私たちの日本画観を根底から覆してくれました。

 そして今回。狩野派ってそういう絵師の対極にある「つまんない絵」の象徴なんじゃなかったっけ…じつはそうではないようなのです。武家のお稽古事と化した江戸狩野と違い、京狩野は濃密なタッチを守り抜き、そのポップな精神は若冲ら京の町絵師たちに継承されていったのだそうです。

 久々に図録買ってしまいましたよ。これで2500円は安い!!

 個人的にすごく惹かれたのは山雪の方。山楽もなかなかかっこいい絵を描く人なんですけどね。

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 どちらかというと正統派の「うまい」日本画。ぴしっと正装で決めてくれます。うむなかなかかっちょいいタイガー&ドラゴンだ。

 これに対し娘婿の二代目山雪は実にユニーク。まあ見てくださいまし。

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 ぶははは。なんとかっこ悪い龍。虎に脅されてビビッてるし。あと鼻毛ぐらい手入れしようよ(^^;

 山雪がこんなに楽しくマンガ的な作風の人だとは知りませんでしたよ。技は確かだし筆も実に丁寧なのだけど、よほど人がいいのか、どこかすっとぼけた、ニンマリとさせる絵が多い。ぬいぐるみみたいにキュートなサルの絵とか、「ほへ」という感じにとぼけたフクロウの絵とか。楊貴妃の壮大な一代記絵巻もどこかマンガ的な表現に満ちていて、見ていて実に楽しい。

 こんなすばらしい展覧会がガッラガラなんですよ。永徳の時には死ぬほど並ばされたのにこの差はなんだ。

 土日でもゆっくりじっくり見られます。あと一週間でおしまいですが、駆け込みで行く価値は十分にあります。みなさん急げ!
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2013年05月05日

「交差する表現 工芸/デザイン/総合芸術」

 なんとまだ50年、いやいやもう50年。私にとっては大阪の国立国際とともにずっと入り浸ってる青春の原点というべき二大美術館の一方。50周年迎えました。

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 京都だから、ということで、工芸を中心にしたコレクションを進めてきたわけですねーなんかアヴァンギャルドの視点から見れば地味で面白くなさそうですが、実はそうでもない、というのが興味深いところ。

 工芸とはすなわちポップアートやデザインアートなど実は最先端の表現を、まだあまり注目されていないころからいち早く集めていたということになるわけですから。

 おもえば初期の収集物であった陶芸・漆芸も、日本ではごく早い時期から抽象デザインを取り込んでいたのでした。そしてそれらはごく自然にミニマリズムへと向かっていく、という流れが、収蔵品からわかってしまうというのはなんと贅沢な。八木一夫とかもこの系譜の上にあったのですね。

 そしてその後もテキスタイルやファイバーアート、前衛陶器など、尖った工芸を注目される前からガンガン集めてた。本当。最先端の実験場だったのです。わくわくする。

 これからも楽しみです。ぜひともこれからも尖った工芸を見せてほしい。
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2013年03月25日

「WHAT WE SEE 夢か、現か、幻か」

 本日は、久々にアートについて。

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 映像展示に力を入れている国立国際美術館がまた尖った展示をしてくれました。最先端の映像作家10人の作品を集め、映画館で見せるのではなく、インスタレーションとして展示スタイルで見せてしまおうという企画。以前話題を呼んだ「液晶絵画」は立っていても見られる短い映像が大半でしたが、今回はほとんどが60分を超える長いものばかり。

 えーと、どうやって見ればいいの(^^;開館と同時に入って閉館まで粘ったとしても到底全部は見られない。つまり、最初から全部付き合うことは想定されていないということですね。

 つまり長い映像の一瞬を切りとって体験することになる。通過する時間によって見る映像はぜんぜん違うことになる。それで何を感じ取ることになるか…まあ少なくとも情報と時間については考えこまざるをえない。あと、映像の展示とはなんだろうという点でも。

 実際、ヨハン・グリモンプレの「ダイヤル ヒ・ス・ト・リー」とかはむかし映画館で見たことがある。で、今回一瞬だけ見た印象はだいぶん違う。

 とはいえ一番印象に残ったのはクレメンス・フォン・ヴェーデマイヤー「死への抗い」でしょうね。わずか8分半のループ映像だから十分見られました。フィリピンの奥地に住む謎の種族に遭遇した男が不死の呪いを受けてしまう、というSFタッチのストーリー。始まりも終わりもないループ構造の映像がうまく使われていました。

 やはり自分はアートよりは映画の人間なんだなあと思うことしきり。瞬間だけ見て満足しろというのはストレスたまりますわ。どうしたって物語を映像の中に探してしまうし。そういう意味でも短い作品の方が美術館展示するのには向いてますね、うん。 
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2013年02月16日

「NOT ANNUAL 2012 風が吹けば桶屋が儲かる」

さて、今月始めに東京行った時に行ったもうひとつの美術展。そろそろ賞味期限切れになりそうなので、ごく簡単に。あたしかさんお薦めの展覧会でもありました。

 東京都現代美術館を舞台に、最先端の若手作家たちが作品が出来上がる課程そのものを見せていく、という野心的プログラム。美術館の箱を最大限に利用した、究極のインスタレーションの数々…なんだけど。実際に見た感じとしては活気は感じましたね。まあ、にぎやかなのはよいことだ。現代アートはやっぱ元気でないと。

 バブルの産物と化してる会田誠に比べれば、こっちの方がはるかに楽しかった。積極的に関与して楽しめるという意味でもね。やはり現代アートの器は、あまり色がつきすぎていてはいかんのだなとあらためて実感しました。

 ただ、こういうものはコンセプト勝負、目立ったもん勝ちなので、実は

「田中功起さんの作品は美術館にはありません。田中さんは美術館の外で活動しています」

 と切符もぎりのお姉さんに言われるだけ、というコンセプトの田中功起氏の圧勝なのは最初から見えているわけで。いやー本当ずるいわ。冒頭でいきなり会場に作品はない、といわれたらその人のことで頭がいっぱいになるにきまってるじゃあないか。

 じゃあ実際何をやっているのかというと、環状線でトークやってるだけという(^^;一応赤瀬川さんの東京ミキサー計画の再現というか検証なんですね。あの伝説となったパフォーマンスが実は環状線一周できなかった、とか今知る衝撃の事実ですよ。

 残るメンバーのうち気になったのは、美術館内にあちこちで仕掛けをした森田浩彰氏。でもこれ、藤本由紀夫氏が「美術館の遠足」シリーズで、大谷記念美術館を遊び尽くした企画の後追い的バリエーションでしかないんですよねーぶっちゃけて言えば今回の東京都現美の企画自体が「美術館の遠足」のバリエーションでしかない。

 本当、あんなに早い時期に10年もかけて美術館のハードを遊び尽くした藤本氏は本当にすごかった。逆に藤本氏の企画を意識して敬意を払ったと思われる田村友一郎氏が今回の企画を一番誠実に理解していたのかもしれない。美術館の歴史的背景に思いをはせ、過去の収蔵品を再構成して美術館の立地に思索を伸ばす姿勢は非常に共感できる。地下に古民家を建てFMラジオを飛ばす大胆さ。一番目立ったのは田中氏ですが、一番正解に近づいたのは田村氏だと思う。
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2013年02月05日

「会田誠 天才でごめんなさい展」

 今月初めにちょっと更新のおやすみをいただきましたが、どこに行ってたのかというと、東京行ってました。あたしかさんおすすめのアートスポットを巡ってきた次第。今回はそのうち一方をご紹介。

会田誠作品集 天才でごめんなさい [単行本(ソフトカバー)] / 会田誠 (著); 青幻舎 (刊)

会田誠作品集  天才でごめんなさい [単行本(ソフトカバー)] / 会田誠 (著); 青幻舎 (刊)
 
 会田誠って、長らくもてあましていた人ですが、ヨコハマトリエンナーレの時の「自殺装置」のバカバカしさに爆笑して「なんやこいつ只のアホか」と得心がいった次第。それ以来結構見てきていますが。今回は大回顧展ということで、並びも並んだり。今まで雑誌などで見てきた作品の数々がズラリと並びました。みんな、思ったよりも大きい。

 代表作というべきものをつらつらと見ていくと、なんだかかなり気分が悪くなった。これはちょっと意外でしたが、たぶんバブルの殿堂たる森美術館がぴったり似合いすぎているということなのでしょうね。これじゃあバブリーな勝ち組賛歌だ。どちらかというと、東京都現代美術館とか国立新美術館のようなお堅い器の方がふさわしいということなのでしょう。そうでないとミニマルアートとして成立しない。

 相田誠が好んで使う右翼的アイコンというのが、実は父親への反発と三島由紀夫へのあこがれから来ていると知ってちょっとがっかりしましたが。なんだ、安いなあ。「ミュータント花子」とか、初めて原画で見ましたけど、普通のエロ漫画にしか見えなかった。ミニマル的表層性が成立してないよ。あ、ていうか右翼思想そのものが表層しかないペラいものだから、表層を描くとすべてを描いたことになってしまう。それがどうやらわかってないようだということがわかったのはちょっと残念ですね。

 むしろ「才能の無駄遣い」こそが会田誠の真骨頂だと思うので、強烈に細密な日本画の技法を駆使して描かれた「女子高生水浴之図」とか、アホな作品の方がやっぱ面白いですわ。今回一番のお気に入りは、極彩色の絵巻物に、流麗な草書体で描かれた「2ちゃん用語集(笑)」見事な筆致で「あぼーん」とか「逝ってよし」とか書かれているのは笑うしかなかった。いやそれにしてもここまで多方面の技術を何に使ってくれるんでしょうねこの人は(^^;

 あ、そしてもちろん最高傑作は、「日本に亡命して現代美術作家になったビンラディン」のビデオ。これは世界中から引っ張りだこだったそうで、それも納得。何度見ても笑える。あ、でもこれお得意の高密度の技術はなんにもなんですけどね(^^;
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2012年12月06日

平等院養林庵書院 襖絵奉納記念 山口 晃展

 最終日にギリギリ行ってきました。最近活発なコミカル系日本画の第一人者ですね。現物をまとめて見るのは実は初めてかも。

山口晃 大画面作品集 [単行本(ソフトカバー)] / 山口晃 (著); 青幻舎 (刊)

山口晃 大画面作品集 [単行本(ソフトカバー)] / 山口晃 (著); 青幻舎 (刊)

 とにかくすごい人人。会場混んでました。確かにとてもわかりやすい絵の人だからなあ。日本画のタッチで現代風俗を画面に取り込んでいくという姿勢はおもろいもん好きの関西人の琴線に触れるし、とても敷居が低く親しみやすい。

 しかし現物を見て驚いたんだけど、なんとこれ、キャンバスに油絵でえがいているのね。なんという画力、そしてなんというセンス。これだけ画力を誇示する作風だと村上隆とかと違って反発は生みにくい。「電柱活花」なんてカラッとしたSF的なパロディをヌケヌケと提示してみせるとぼけたユーモアにはまさしく脱帽です。

 とにかく「洛中洛外図屏風」のような大作が多く、細かいところであれこれ遊んでいるので、みんな見るの時間がかかってそれでなおさら混むのでしょうね。

 はてさて、平等院に描いた絵というのはどういうものなのだろう。複製でも見てみたかったなあ。
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2012年08月19日

「アラブ・エクスプレス展」

 そしてこちらがもうひとつの東京でのハシゴ対象。まあ、新国立美術館寄ったら森美術館行くのは定番ですわね。実際お互い半券提示で割引になる模様。新国立美術館ははっきりと掲示してるのに森美術館は何も書いてないのは不誠実だと思うが。

http://www.mori.art.museum/contents/arab_express/index.html

 まあ、昔から森美術館の箱自体はあまりスキじゃないです。ここだけバブルがまだ続いてるかのような感覚がなんかイヤ。日本が浮かれてた時代のこと知りたい方はここ行けばいいですよ。まあ、日本全体があんな感じでした。そんなの長く続かんわな。

 とはいえレアなアートに積極的なのは認めるし、展示内容自体は充実してると認めざるを得ない。一般のアートマニアでない人をもひきつける戦略は非常に巧みで、いつも会場はいっぱいだしね。入場料は無駄に高いんだけど。

 今回もアラブアートに目をつけるあたりはなかなか。最近イスラームに関心がある私としても、これは見ないわけに行かない。結果として、アラブのアーティストたちが気にする西欧の目線にややよりかかりすぎていたのが残念でしたが、映像から立体・インスタレーションまで実にバラエティ豊かなラインナップはなかなか見ごたえがありました。

 個人的には、「アラビアンナイトを朗読するテロリスト」のビデオが一番インパクトありました。本当、ただ朗読してるだけなのに犯行声明にしか思えないんだ、まったく。これはアイデアの勝利ですが、いろいろなことを思い起こさせますなあ。

 ただ、トルコ好きとしては「トルコはアラブとちゃうのか」と複雑な気になりましたけど。やっぱりヨーロッパの範疇なのかね。でも含めてもよかった気が。イスタンブールで見てきた感触からして、トルコのアートは本当、すごい。いつかこれは別個に紹介すべきなのかもしれませんけどね。
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