2015年08月31日

米魂参加

 久々にSF大会行ってきました。今年は米子。最初は遠くて無理無理、とか言ってたんですけど、5000円を切るお値段で高速バスが出てるとあれば、行かないわけにはいかない。



 いやー意外と近いのね、鳥取。琴浦さん聖地も行かなくては。

 なかなかアットホームで、楽しめた大会でしたよ。ネギマンがずーっと暴れてたし、パーティでご当地食が食べられて酒も飲めたし。トリピーまで来てたんですよ、実は。

 たぶん、これまででいちばん自治体が深くかかわった大会かもしれない。知事が延々漫談を披露した大会なんてこれが初めてでしょう。地元放送局のアナウンサーが司会を務めてくれたんですが、絶妙のボケ加減がお見事。本人は「危ない危ない」とか言ってましたが、マジで「暗黒星雲賞」の価値十分にアリという感じでした。今回もいろいろと伝説を残した大会でしたが、暗黒星雲賞の加藤さんが「柴野拓美章」を受賞したのにはなんか感動。

 韓国SF入門、大変でしたよね、朴さんおつかれさまでした。とりあえず無事帰宅。寝るか(^^;
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2014年05月27日

「SFマガジン700号」

 やー久々にSFカテゴリーですな。

S-Fマガジン 2014年 07月号 [雑誌] -
S-Fマガジン 2014年 07月号 [雑誌] -

 この雑誌は記念号にいつも殺人的な厚さの誌面を展開するのですが。今回は584ページ。まあまあこんなもんかな。ほぼ三冊分てことで。

 今回は厚さの割に軽くてページもめくりやすかったのが特徴でしょうか。真ん中近くのページ開いてそのままテーブルに置くこともできる。そして、今回は小説主体ではなく、いわゆる「記事」を主役に、創刊号から最新号まで日本SFの歴史を振り返るという趣向。これがこんなに面白いとは思わなかった。いや夢中でぐいぐい読んでしまうもの。自分が「SFマガジン」を読み始めたのは1987年1月号からだから、未読は全体の40%ほど。もちろん号数としては半分近くが未読ということになるのだけど、今からみればずっと薄かったからねえ昔のSFマガジンは。

 そしてリアルタイムで読んだ「SFマガジン」はまさしく「サイバーパンク以降」ということになるんだけど、意外に今となってみるとサイバーパンクの影が薄い。結構独自の文化を築いてきたんだなあ日本SF界はとしみじみ思いますよ。

 そして今回の目玉、歴代ベストSF作品。海外部門は前回と同じ「ソラリス」。「夏への扉」は9位に後退してめでたいかぎり。そして日本SFはなんと「ハーモニー」が1位。変わったなあ。飛浩隆「グラン・ヴァカンス」が4位なのもびっくりだし。かつての巨匠たちがずいぶん減りました。つまり新陳代謝に成功したってことなのか。いいことだよね、うん。
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2013年12月21日

日本SF大賞が今期から候補作一般公募らしいんだけど

 というわけでSF大賞の公募を広く一般に募るそうです。

http://sfwj.jp/award/

 いきなりですね。しかしファンの意見を取り入れるのはよいことです。過去の例を見ていると、ひねりすぎて「えー」という回もありましたもんね。基本は「今年の顔」となる一作でいいんだと思う。だから一昨年の「華竜の宮」は問題ないんだけど、昨年がちょっと…(^^;いや、普通に「屍者の帝国」でよかったでしょうに。一度取った作家は外す、という不文律もこの際考えない方がいいんじゃないだろうか。

 しかし今年はなんでしょうね。今年は結構難しいけど…普通に考えれば「皆勤の徒」かなあ。

 それにしてもまだひとつも投票されてません。みなさんぜひぜひ!なんか「どうぞどうぞ」状態なんだろうか(笑)
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2013年11月20日

ハヤカワSFコンテスト贈賞式

 ハヤカワ、勝負賭けてます。すごいなあ。東京に行ってきました。明治記念館に読者・関係者300人以上を招いての一大イベント。読者はネットの応募者から抽選で選んだ…とのことだけど、「落ちた」という報告は不思議と聞かない(^^;

 みずは無間 (Jコレクション) [単行本] / 六冬 和生 (著); 早川書房 (刊)

みずは無間 (Jコレクション) [単行本] / 六冬 和生 (著); 早川書房 (刊)

 これが受賞作。なんと受賞者は女性でした。二度びっくり。

 冒頭で社長が英語で挨拶するし、人気作家たちの新作も次々と発表される。冲方丁と円城塔を同じ舞台に上げるってTOTOコンビ、ってダジャレ?(^^;

 これだけの巨大イベントを気合入れて仕掛けるというのは、SFがそれに見合ったマーケットになりつつあるということなんだろうなあ。そういう意味では結構うれしい。

 そして終了後には、参加者全員に受賞作がプレゼントされるというすさまじい太っ腹さ。いや、黙っててもみんな買うと思うんだけど(^^;
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2013年09月12日

「本の雑誌」2013年10月号

 本日発売、待ちかねて買ってきていきなり特集読みきってしまいました。なぜってサンリオSF文庫特集だったから(^^;

本の雑誌364号 [単行本(ソフトカバー)] / 本の雑誌編集部 (編集); 本の雑誌社 (刊)

本の雑誌364号 [単行本(ソフトカバー)] / 本の雑誌編集部 (編集); 本の雑誌社 (刊)

 いやあそれにしても読ませる内容だったなあ。もちろん山野浩一インタビューなんて「そうだったのか」と目から鱗の連続で、本当、SF界の伝説風聞て当てにならない。出なかった作品の大半が「原稿が上がらなかったから」というのは驚きだし。本当、翻訳家確保には苦労したんですね。でも翻訳終わってるのに出なかったのも何冊かあるはず…

 SF撤退の牧眞司の古書価レート付き全冊リストなんてまさしく永久保存版もの。あ永久に保存したらレートが変わってしまうか(^^;

 しかしサンリオ文庫は古書価と切っても切れない。実は新書でリアルタイムに購入してるのは本当に数えるほどで、なかなか集まらず焦った挙句、新社会人のころに「新しいSF」を思い切って5000円で買ったら、なぜかザラザラと集まるようになってきた。今2000円ぐらいで手に入るらしいけど。後悔はしていない(−−:しかしまあ、筑摩とかの復刊で読めた本も随分ありますよね。こないだの「生ける屍」とか「憑かれた女」とか。

 個人的ベストというと何だろう。ディッシュの「334」とオールディスの「マラキア・タペストリ」かなあ。どっちも歴代ベストに入れてる。そしてどっちも復刊されてない(^^;

 未刊作品では、オールディスの「頭の上の裸足」とブラナーの「羊は見上げる」でしょうか。国書ががんばってだいぶんと未刊作品を減らしてくれたんだけど、このあたりはまだですねえ。創元も早川も絶版たくさんるけど、サンリオほど伝説を作ってくれたレーベルはなかった気がする。

 さて、積読分をもう少し減らさねば…まだちょっと残ってるんだこれが。
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2012年10月06日

京都SFフェス行ってきます

 秋の関西の名物行事、京都SFフェスに行ってきます。昨年は山形で欠席したので、2年ぶりの参加ですが、今年はなんといっても「屍者の帝国」とラファティが大注目だなあ。

http://kyofes.kusfa.jp/cgi-bin/Kyo_fes/wiki.cgi

 そしてその翌日は京都映画祭。

http://www.kyoto-filmfes.jp/

 あの一殺多生剣が初見参!もう眠れそうにありません(^^;

 んでは、行ってきます。
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2012年06月07日

国書刊行会三大がっかり事件

 ツイッターをやらないのでまったく知らなかったのですが、いま巷では「国書刊行会」を巡るツイッターログが飛び交っているそうな(^^;

 私も先日初めて知ったのですが、詳細はこちらを。

http://togetter.com/li/314987

 このブログを長く読んでおられる方ならご存知でしょうが、私は幻想文学にせよSFにせよ国書の出す本が大好きでして、まあこのバカ高い叢書の大のお得意さんです。もちろん、もっと首までどっぷり国書、という方はおられるでしょうが。私は最近河出に浮気してるし(^^;

 しかし国書というのはすごく使命感に燃えた少数精鋭の知性派集団というイメージがあるのに(社長は10ヶ国語できるとか聞いたことがある)、このツイッターログのおちゃらけぶりには卒倒しました(^^;確かにこれはあっという間に拡散するわ。
 なんというか、すごい。いろんな意味で。

 まあ、まずは読んでください。それにしてもこの愉快きわまる書き込みを担当しているのは誰なんだろう。樽本周馬さんかな。SFフェスで見かけたときはひたすら爆睡してはったけど。それにしてもめっちゃ国書な名前でありますよ樽本さん。国書で編集するために生を受けたかのような。

 ところでこのツイッター、途中から国書出身の藤原編集室さんが参加されて国書40年の歩みが語られてます。ここで国書刊行会という妙な社名の由来も明かされています。ちなみに藤原さんも指摘しておられますが、右翼はぜんぜん関係なし。まさかそんな脱力な理由からの命名とは思いませんでしたが(^^;

 そしてついに明かされる「国書刊行会三大がっかり事件」とは?いやーすごすぎですわ。特にドラキュラ叢書の話なんて。国書では毎日宇野元首相を呪詛してたなんて(笑)

 そして現在、このツイッター騒動に乗じて、国書ツイッターでは
「こんなに読者がいるのなら、国書刊行会がこうも◯◯◯◯であるはずないのだが」
という書き込みの◯◯◯◯の穴埋めを募集中であるそうな。ってケータイ大喜利かいっ!!
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2012年02月18日

「ほとんど無害」

 芥川賞の授賞式が行われました。相変わらず時の人なのは田中慎弥氏の方で、今回も「どうもありがとうございました」とブスッとひとこと言っておしまいだったそうです。

 まあ高卒以来一度も仕事せず引き籠って小説を書き続けてきたという経歴、それでいて内容はわかりやすい私小説ですからね。無理もないんですが。私はこの人には良くも悪くもあまり関心がもてない。

 それより、授賞式でも輝いていたのはやはり円城塔氏。確かに受賞作が込みいってて判りにくいのは認めます。田中氏ほどはどうやったって売れないでしょう。だとしても、文学史に残るのは間違いなくこっち。だって筒井さんが「虚構船団」以降孤軍奮闘して広めてきた「純文学」の意味を変える作業がこれでようやく結実したことになるんだもの。

道化師の蝶 [単行本] / 円城 塔 (著); 講談社 (刊)

道化師の蝶 [単行本] / 円城 塔 (著); 講談社 (刊)

 私小説で追える文学の可能性なんてたかが知れてる。文字を用いた最大限の表現ってのはなんなのか?それは文字をメタフィジカルに突き詰めていくこの方向にしかない。そして、その分野でどこよりも先んじているのが我らがSF。だから円城さんの受賞が誰よりもうれしいんです。

 円城さんの受賞挨拶。

「ただ一つ気になりますのは『前衛(的)』という評価でして、前衛、前で衛(守)ると書きますけれど、何を守っていくのかということが若干、わからない。あと、守っていく場合なのか、という実感もあります。守っているだけでなく攻めなければ、という気もします。ひるがえって私の書いているものがどんなものかと考えますと『ほとんど無害』というのが当たっているのではないかと思っております。これを『多少は有用』とかですね、『割合、有害』と言われるまで持っていくべきかどうか、最近考え始めているんですけれど、こと小説の話ですから、有用性だけを目指してもあまり意味はない。このたびこうして賞をいただきましたが、これによって私が何か賢くなったとか、人徳が増したとかいうことはないわけで、これまで通りにやっていくしかないと思っています」

出典 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/literature/?1329483710

 なるほど、そういう風に「前衛じゃない」と言ってきたか。面白いなあ…そして何より喝采を送りたいのが、受賞挨拶に含まれた

「ほとんど無害」

 という言葉。これって、コメディSFのバイブル、ダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイクガイド」に出てくるセリフなんです。地球の価値を評価したガイドの説明書き。

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫) [文庫] / ダグラス・アダムス (著); 安原 和見...

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫) [文庫] / ダグラス・アダムス (著); 安原 和見 (翻訳); 河出書房新社 (刊)

 いや円城さん分かってるなあ、そして骨の髄までSFファンなんだなあ。もう、一生ついていきます。
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2012年02月11日

SFが読みたい!!2012年版

 今年も発売されました。そうかーこうなったかあ

SFが読みたい! 2012年版 [単行本] / SFマガジン編集部 (編集); 早川書房 (刊)

SFが読みたい! 2012年版 [単行本] / SFマガジン編集部 (編集); 早川書房 (刊)

 何に動揺したって、日本の一位が円城塔「これはペンです」だったということ。

これはペンです [単行本] / 円城 塔 (著); 新潮社 (刊)

これはペンです [単行本] / 円城 塔 (著); 新潮社 (刊)


 いや、好きですよ、円城塔。大半の著作は読んでるし、芥川賞受賞にはそりゃあ喝采したもんです。「道化師の蝶」も発売日に買ってきて読んだし。いやあ面白かったし笑った笑った。こういうのって本当にたまらん魅力ですよ個人的には。

 ただ、ふふふと一人密かに楽しむタイプの作家だとばかり思っていたので本屋に山と積まれてベストセラーにランクインするとさすがにビビる(^^;

 海外の1位はグレッグ・イーガンの「プランク・ダイヴ」。えーこっちはフツーすぎますね。みなさんまだイーガンですか。

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF) [文庫] / グレッグ・イーガン (著); 鷲尾直広 ...

プランク・ダイヴ (ハヤカワ文庫SF) [文庫] / グレッグ・イーガン (著); 鷲尾直広 (イラスト); 山岸 真 (翻訳); 早川書房 (刊)

 とはいえ2位のパオロ・バチガルピ「ねじ巻き少女」とはわずか1点差。少し世代交代も感じますね。バチガルビも読みましたが、個人的にはやや期待外れ。むしろ本日ハヤカワSFシリーズ復活第二弾の短編集「第六ポンプ」の方が好みかな。個人的にはむしろこの人短編向きじゃないかと思う。
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2011年12月12日

日本SF大賞決定

 なんと今年はニコニコ動画で記者会見の模様が中継ですよ。思わず見てしまった。

 

 こういう時はプレミアム会員になっていてよかったと思う。

 受賞は大本命の「華竜の宮」でした。上田早夕里さん、なぜか紫づくめでビビった(笑)

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) [単行本(ソフトカバー)] / 上田 早夕...

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) [単行本(ソフトカバー)] / 上田 早夕里 (著); 山本ゆり繪 (イラスト); 早川書房 (刊)

 今回は本当に激戦だったらしく、まあ蓋を開けてみれば「そうだろうな」だけど、どれがとっても納得といえば納得でしたね。

第32回SF大賞候補作
  ●『ダイナミックフィギュア』  三島浩司(早川書房)
  ●『華竜の宮』         上田早夕里(早川書房)
  ●『希望』            瀬名秀明(早川書房)
  ●『近代日本奇想小説史 明治篇』横田順彌(ピラールプレス)
  ●『魔法少女まどか☆マギカ』   原作:Magica Quartet、
                   脚本:虚淵玄、監督:新房昭之(作品タイトル順)

 「まどか」には何か賞がほしかった気がしないでもないけど…まあそれを言うなら「ダイナミックフィギュア」だって何か賞がほしかった(笑)

 まあ、選考委員の宮部みゆきさんがまどかで「だだ泣きした」というのはギャラリーにも大ウケしてました。流行りそうだな、「だだ泣き」(笑)何にしても記者会見がネットで全世界に公開されるというのはよいことです。来年以降もぜひ。
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2011年11月27日

クローズアップ現代「想像力が未来を拓く 小松左京からのメッセージ」

 今頃になってではありますが、NHK見ました。SFをテレビ報道番組でまるまる取り上げるってあまりないので、非常に貴重。


小松左京---日本・未来・文学、そしてSF (文藝別冊)

小松左京---日本・未来・文学、そしてSF (文藝別冊)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/11/10
  • メディア: ムック





 こうして見返してみると、日本人なら誰でも知っている、という意味で小松左京ってすごい人だったんだなあ。これに匹敵するのは星新一、筒井康隆しかいないけど、御三家の中では飛び抜けて巨匠度が高い。

 SFファンの間で評価の高い「果てしなき流れの果てに」「継ぐのは誰か」ずいぶん後になってから読みましたけど、今読むとかなりジュヴナイル色が強い。でもそれがいいんだろうなあ。SFの若々しかった時代を感じてしまう。

 今回の番組が貴重だったのは、阪神大震災以降、「心が折れてしまった」ことが新作を書けなかった原因だという分析に痛ましさを感じてしまいました。「日本沈没」では、あれほど大局的見地から懸命に働く官僚や政治家や科学者たちを書いていただけに。本物の危機に際しては人間はがんばるはずだという信頼感があったんだろうなあ…むろん番組の中でも言われてましたけど、科学者の「分かることにしか責任が持てない」というのも分かりますけどね。

 長く「書けない晩年」が続いたことは、SF界にとっても大きな不幸。でも、「日本沈没第二部」という形で小松イズムを受け継ぐ集合知が働いたことは評価するべき。そのあたりも番組で触れてほしかったなあ…
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2011年09月03日

きょうからSF大会

 それでは行ってきます。よりにもよって台風来てるんだけど…

http://www.sf50.jp/

 まあなんとかできるんじゃないかと祈りつつ。

 明日の午前11:30〜には、「絶対少年再考」と題して望月智充監督・脚本の伊藤和典さんをお招きしてパネル企画もあります。むかしここで散々「絶対少年」を分析していた人間としては、感慨深い。

 お近くの方はぜひどうぞ。

 それにしてもあんまり天気が荒れないことを祈りつつ…
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2011年05月24日

SF Prologue Wave発進

 世は電子出版の時代。なんだけど。SF界からあえてネットマガジンで勝負をかける動きが出てきました。

http://prologuewave.com/

pw_bn_l2.png

 この十年ほどでSF界にはふたつの新人賞が生まれ、次々と新人SF作家が誕生しました。まさしくSFの春。しかし、悩ましいのは、ほとんどの作家には恒常的な活躍の場が与えられず、お蔵入り原稿を抱える状態になってしまっていること。SF出版が少人数・小出版に委ねられる状況が続いてきたことから生まれたいわば供給過剰状態。ただしSFが売れない、というよりは、送り手が作品をさばききれない状況に問題があるような気がします。ならば、自分たちでなんとかしてしまおう。というわけで、SF作家クラブの公認のもと、初のウェヴマガジンが発信しました。

 まだまだほんの小さいスペースですが、そこに詰められた作品の質の高さは特筆に価します。こんなにもハイクオリティな作品が無料で読めるとは。創刊号では新井素子会長の新作まで。これはお得です。ぜひ読むべし!
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2011年05月03日

本日、SFセミナー参加

 というわけで、とんぼ返りの一泊二日。東京に行ってきます。4日は仕事だから結構シビア。

 http://www.sfseminar.org/

 若島先生のジーン・ウルフ講義とか結構期待ですね。

 というわけで、一日更新を休みますがご容赦を。ではでは行って来ます〜
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2011年02月25日

意外な関係

 今度の劇場版「ドラえもん」のノヴェライズを瀬名秀明が担当!

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団 [単行本] / 瀬名 秀明 (著); 藤子・F・不二雄 (...

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団 [単行本] / 瀬名 秀明 (著); 藤子・F・不二雄 (原著); 小学館 (刊)

 ドラえもん第一世代にして瀬名ファンとしては必読ですね。…それにしてもどういういきさつで書くことになったのか。
posted by てんちょ at 23:59| 大阪 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月11日

TOKON10東京SF大会「宝野アリカon STAGE」

 大変ごぶさたしてます。今週はもうこのうえもなく忙しかったので。本当、気付けばもう水曜か!なんか何日か記憶がスキップしたような気が

 いや、忙しかった原因のひとつはこのSF大会のせいもあるんだけど。まあ、これについては、このブログとあまり関係ないので置いておいて。

 ただ、これについてはやはり簡単にでも触れておかないとね。ここはやはり真下ブログなんだから。

 とにかく初めてアリプロのコンサートというものを見ました。生演奏もなく宝野アリカ嬢がダンサー二人を連れて歌い踊るだけのもので曲もわずかに4曲だけ。とはいえ、なんか感動しましたよ。「コッペリアの羊」がなかったのは残念だけど、オーラスが「未来のイヴ」だったのには感動。そう、「Avenger」のEDです。

 真下作品の中ではかなり埋没感の激しい「Avenger」ですが、こうして聴くとやはり存在感の強烈さはすばらしく、なんか久々にまた見たくなってしまった。あれは本当にSFマインドを感じる作品だったなあ…

 あ、そうそう。宝野嬢が「宇宙をかける少女」について、楽曲提供しておきながら「私にはよくわかりません」とのたまってました(笑)

 あーでも私はすごーく分かりました。第一話で見るの放棄したもんな(^^;
posted by てんちょ at 03:43| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月18日

浅倉久志さん死去

 相変わらず映画作りで忙しい。まあ画はほとんど撮り終えたので、後は編集、というところですが。

 というわけで、更新がとどこおっているわけですが、さすがに浅倉さんが亡くなったということなら哀悼の意は示しておかないと。海外SFファンはみんな足を向けて寝られない。

 本当に何でもゼネラルにこなし、しかも訳者の個性は極めて控えめな方でした。現在は柳下毅一郎氏のように「オレが訳した」という感じの個性を意識的に出す翻訳家が増えてきました。それはそれで面白いしいいんだけど。指標となる無色な翻訳家もやはりほしいですね。

 浅倉久志、以前と以後という分類ができるぐらいに画期的なブランドを築いたと思います。代表作といえばなんだろう。

 新聞だと「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を挙げてたなあ。ディックは間違いなく代表作でした。個人的には「高い城の男」が思い出深い。あれって原著では田上信輔じゃなくてタゴミノブスケなんだと知ったのはずいぶん後の話。


高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

  • 作者: フィリップ K.ディック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1984/07
  • メディア: 文庫




 まあ、そういうところが実に浅倉さんらしい。今なら無理矢理感じを当てはめて多梧巳とかやってしまう翻訳家もいるかもなんでしょうが。

 短編でなら、超マイナーですがパミラ・ゾリーンの「宇宙の熱死」とか青春の思い出ですねー孤独なNW論者の若き日の衝撃。あれがもとで現在の私があるのかもしれない。本当。浅倉さん、おつかれさまでした。

 浅倉久志さん、あなたに神のお恵みを。
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2010年01月05日

「SFマガジン」創刊50周年記念特大号PARTU日本SF篇

 というわけで冬コミの旅のお伴だったこの一冊。前回同様鈍器となりそうな一冊だったわけですが。


S-Fマガジン 2010年 02月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2010年 02月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/12/25
  • メディア: 雑誌




 かなり手こずった1月号からみればあっけないほどあっさりと読了してしまいましたね。冬コミ往復の旅でほぼ読んでしまい、2日の出勤時の往復で残りも読了。こうして思い返してみれば、読解に手間取るような作品はほとんどなく、リーダビリティの高い作品がそろっていたのは本当にありがたかった。まあ、最大の原因は1月号でかなりのページを占めた「地獄の3段組み」がなかったせいもありますが。あれ、なんぼ読んでも終わらないんだ、1ページが(^^;

 全体として振り返ってみますと、やはり巻頭を飾る飛浩隆の新連載は圧倒的。これはこの先かなり楽しめそう。それにしても毎回思うことだけど、妙なビジョンを考えさせたらこの人は天下一品。

 そして読みきり作品はなんと全部で38本も収められているのですが、駄作と言えるものが皆無なのは驚異的。普通は虫が好かないものとかあるものですけどね。既にある海外作品から選りすぐって翻訳するのと違って、ゼロから作家に依頼する日本作家作品の場合、粒をそろえるハードルははるかに高いはず。そういった点では、ここまでクオリティを維持した作家陣の心意気と編集の力量には感服させられます。

 非常に偏差値の高い争いで、どれかお勧めというととても迷うのですが、手の込んだSFミステリを寄せた山田正紀(しかも題材は文楽!)と林譲治、いつもと違ってカルヴィーノ風のマジカル寓話(でもネタは数学)を寄せた小川一水、そしていつも通り明らかにいろいろとおかしい円城塔、といったところでしょうか。

 意外にも一番てこずったのはわれらが瀬名秀明なのですが、この人は平行して書いているノンフィクションも目を通しておかないと完全には理解できないので。ここ一年サボってたからなあ。後で買ってこよ。
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2009年12月09日

SFマガジン創刊50周年記念特大号PART・T海外SF篇

 「SFマガジン」を買い始めたのは確か高1の時だからもう随分になります。いったい何年前なんだって?それは…もにょもにょ(^^;

 「SFマガジン」に限らず文芸誌全般が売れない、といわれるようになって随分たつけど、それでもジャンルを引っ張っていく拠点としての「SFマガジン」の重要性はいまさら私がくだくだ言うまでもない。そんな業界きっての大権威もとうとう創刊50周年。わたし、結構遅くからの読者だと思ってたんだけど、気がつけば「SFマガジン」の歴史の半分近く付き合ってるんだなあ。あ、言っちゃった(^^;

 「SFマガジン」は、何かの記念号となるといつも殺人的なほどの厚さの本を出すのですが、今回はなんと536ページ!定価2500円!もう雑誌の値段じゃないよ(^^;重さもハードカバー並み。人一人ぐらい殺せそう(オイ)


S-Fマガジン 2010年 01月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2010年 01月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/11/25
  • メディア: 雑誌




 通勤途上に読んでたけど、たっぷり十日かかりましたよ(^^;しかも今回で終わりじゃない。次号は「日本作家特集」てことでまた同じくらいの厚さになるんだろうなあ。

 今回はあまりひねらずオールスター作家が競演。テッド・チャンに始まりダン・シモンズで終わるという豪華すぎるほどの布陣。全部で十二名、超人気作家ばかりです。他にもイーガンとかコニー・ウィルスとか。スタージョンとかテリー・ピッスンまで目を配っているのはうれしいですね。

 これだけの作家が並ぶと、たいてい二、三人は意味がよく分からなかったりおそろしく読みづらかったりして「これは勘弁」と思うものですが、今回ばかりはそれはなかった。どれも非常に質が高く、読んでいて引き込まれるものばかり。これは大変なことですよ。アンソロジーとしても第一級てことでしょう。

 どれがベストかと言われると本当に困ってしまうのだけど、やはりテッド・チャンの読みやすいのにすさまじく独創的というのはすごい。イーガンは独創的だけどもっとはるかに分かりにくいですからね。今回の「息吹」も短いけど大変に印象的。あとひとつ、といわれるならば、まったく著名ではないけどパオロ・バチガルピの「第六ポンプ」が忘れがたかった。チャンやイーガンからみればはるかに普通だけど、当たり前のことを当たり前に描くことで衝撃を生み出すというのは実はすごいんじゃないだろうか。細かいシーンまでなぜか忘れられない。

 ところで、今回はかなり絞られて五編しか収録されていなかった「名作再録」。ヴォネガットの「明日も明日もその明日も」がいかにも「らしい」感じで好印象。ウィリアム・ギブスンの「記憶屋ジョニイ」は、初掲載時には「わけがわからなくて」途中で挫折。今回は一応最後まで読み通しましたけど、やっぱりストーリーが頭に入りづらかった。もっと分かりやすく陳腐に感じるようになってるかと思ったんだけど意外。
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2009年10月23日

「洋梨形の男」

 本日は、久々にSFなど。いや、これは本当に面白かった。


洋梨形の男 (奇想コレクション)

洋梨形の男 (奇想コレクション)

  • 作者: ジョージ・R・R・マーティン
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2009/09/15
  • メディア: 単行本




 J・R・R・マーティンて最近のSF読者にしてみれば「氷と炎の歌」の人ということになるんでしょうか。しかしまあ、私の世代にとっては、やはり「サンドキングス」の人、という印象が強い。まあ、表題作からして「フェッセンデンの宇宙」のバリエーションぽいし、かつて一冊だけ出てたこの短編集は、なんだか印象薄い。

 ニューウェーヴ信者の私から見れば、その後の時代に出てきてやたらベタベタと感傷的でSFマニア色の強い短編をいくつも発表していた軟派なLDC一味(笑)の頭領、という感じだったんだけど(^^;

 だから、こんなとんでもない作品を書くようになっていたのには本当に驚いた。今回収録された作品は、SFというよりはホラーという作品がほとんど。こんなにもマーティンがホラーと親和性が高いとはびっくり。もっとなよなよした作品を書く人という印象が強かったのですよ。

 この河出書房新社の「奇想コレクション」シリーズは日本オリジナルということもあってどれも完成度高いんですけど。これはもう、抜群にとんでもないクオリティ。一読して腰が抜けました。なにしろ、駄作が一本もなく、しかもそれぞれが非常に考え抜かれて同じタッチの作品がひとつもない。そして、翻訳作品とは思えないほど、おそろしく読みやすい。もうあっという間に読めます。もちろん翻訳もいいんだろうけど。このひきこまれ感は尋常じゃない。長編じゃなくて短編集なのに、「次はどうなる」と気になって読むのがやめられない。はて、マーティンてこんなに面白い作家だっけ。ちょっとびっくりしました。

 冒頭に置かれた「モンキー療法」「思い出のメロディ」も十分に衝撃的ですけど、続く「子供たちの肖像」「洋梨型の男」「成立しないバリエーション」が本当にとんでもない。別にスプラッタではなく、不条理な超自然の力にじんわりと怖くなる。これはお勧めせざるを得ない。売れるかもなあ。どれも強い印象を残すし、ストーリーを紹介するとネタバレになってしまうのが悩ましいところですが、あえて言うなら「子供たちの肖像」が一番衝撃的かも。とにかくまずは読むべし。まあすぐ読めるはずだから。まずは本屋で冒頭の「モンキー療法」を立ち読みしてみるのも手かもね。
posted by てんちょ at 02:24| 大阪 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月22日

J・G・バラード死去

 いろいろ日程が押してますが(^^;とりあえず本日は急遽この話題。いや、ショックというよりは「来るべきものが来た」という感じですけどね。彼がずいぶん前から癌で入院していたのは知っていたから。ある意味、たった一人でSFの意味を永久に変えてしまった、私にとってのヒーロー。だから死んでしまったのはやはり悔しい。

 私、山本弘氏も好きなので、彼がバラードのことを「面白くないSF」とけちょんけちょんにけなすのを聞いてすごく残念に思いましたよ。なんだかニューウェーヴはハードSFに目の敵にされることが多いようで。たぶん、ハードSFは「われこそがSF」という誇りがあって、SFの定義が変えられたことが面白くないんだろうなあ。私なんかからみるとハードSFこそ何が面白いんだかわからないんだが。

 まあそれはさておき。文庫化された「楽園への疾走」(創元SF文庫)を読み終わった直後に訃報を聞いたので、余計に感慨深い。まあ、最近のバラードはややワンパターンな傾向もあったのですが、今回も結末部はまさしくバラードならではという感じでやっぱりいいなあと感じましたよ。途中のエコロジストやフェミニストに説教たれるくだりは、バラードも年食ったのかなあと感じましたけど。それでもそれで終わらず、非常に有機的でグロテスクなバラードビジョンに着地させるのはやはり侮れない。

 個人的ベストといったら何だろう。やっぱり「クラッシュ」(河出文庫)かな。普通なら「残虐行為展覧会」(工作舎)か「結晶世界」(創元SF文庫)なんだろうけど。みんな言いそうなことを言うのもなんかしゃくなので、そういうことで(^^;いや、実際、歴代ベストSFにはいつも入れてますしね。クローネンバーグの映画版もよかったです。
 ほとんどの作品が翻訳し尽くされているバラードだけど、これを機会に、NWSFで出たきり塩漬けになっている「死亡した宇宙飛行士」が復活したらいいなあ、なんて思ってます。あ、ほとんど唯一の未訳である「近未来の神話」もね。
posted by てんちょ at 13:49| 大阪 ☁| Comment(5) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月21日

「モーフィ時計の午前零時」

 ひさびさに国書刊行会の小説など。国書には、どっちかというと、「未来の文学」と「スタニスワフ・レムコレクション」の方を早くなんとかしてほしいんですが(^^;

 ときどきこういう予告外の本がポンと出てくるから困ったもんだ(笑)まあ、それはそれでありがたいのですけどね。質の良さは保障されてますから。

midnight.jpg

 というわけで今回は若島正先生の編纂によるチェス小説アンソロジー。そんなものが日本で売れるのか?と心配になりますが、チェスのルールを知っているだけ、という程度の私でもこのラインナップを見れば買わずばなるまい、です(^^;

http://webshop.ncm.jp/cgi-bin/kokusho/shop.cgi?button=detail&page=978-4-336-05097-7

 なにしろ、フリッツ・ライバーの表題作をはじめ、フレデリック・ブラウン、ロジャー・ゼラズニイ、ジーン・ウルフと無体なほどの豪華さ。その他にも、ジャック・リッチー、ヘンリイ・スレッサー、ウディ・アレンとすごい面々が続々登場し、そのどれもが会心の面白さなんで参ってしまいます。

 チェス好きでなくても、SFファン・海外ミステリファンは手にとらないわけにはいきますまい。末尾の普通小説2本はイマイチなんですが、まあそこは目をつぶって。SF・ミステリ系作品はどれもすごく質が高い。ふつうのアンソロジーとしても超高レベルです。

 驚かされるのは、チェスのルールがうろおぼえでも非常に楽しく読めるということ。チェスの棋譜をチマチマと詳細に描写しても物語のスピードを阻害するだけのことで、実は雰囲気だけをごく大づかみにザクッと描写するのが正解ってことですね。ボードゲーム小説を模索中のポールさんにはぜひ参考にしていただきたいです。ウディ・アレンのヘボ棋士対決ものなんかはそのまま使えそう。

 ベストを選べといわれると困るのですが、読み味の違うところでヘンリイ・スレッサー、ジーン・ウルフ、ウディ・アレンを挙げておきますかね。チェスなんか興味ないよ、というあなたもぜひともめくっていただきたいです。アレンの小説は誰が読んでも面白いんじゃないかな。マニアックな良質のコント、という意味ではポールさんといい勝負かも。
posted by てんちょ at 03:41| 大阪 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月23日

「宇宙飛行士ピルクス物語」

 長らく入手困難だったスタニスワフ・レムの連作短編集がハヤカワ文庫として復刊されましたので、手にとってみました。いや、実はハードカバー版も持っているんですけどね。あまりの分厚さに恐れをなしてずっと積ん読だったのですよ。最初の「テスト」をパラパラめくって、なんかレムにしてはあまりにストレートな冒険SFっぽい展開に困惑したってこともあるのですが。

 ただ、今回大野典宏氏の手で訳文の修正が施され、技術用語が明晰に訳し分けられることによってまさしく目からウロコな事態に。ハードカバー版を持っている人も今回の文庫版は必携でしょう。

 なるほど、大野氏が指摘しておられるとおり、これってレムの「技術大全」系の路線につながる作品だったんですねーレム流のモビルスーツが活躍する後の「大失敗」(国書刊行会)を彷彿とさせるところもあったりして。こうなるとますます未訳の大著「技術大全」が読んでみたくなるんですが…さぞ読みにくいんだろうなあ、やっぱ(^^;

 戦後隆盛を極めた日本SFの大半は科学技術の成果のみを示すものが大半でした。それは、より科学技術に忠実とイバっていたハードSF陣営でも同じこと。

 これに対してこの作品でレムが採った道というのは、要するに技術によって導き出される新しい発想法や思索を物語の主題に据えること。身近な例で言えば、パソコンの出現によって、文字をディスクに保存したりデータを処理したりする能力が上がりましたーオンラインで情報もやりとりできますーとまあそこで止まっているのが従来のSF(^^;いかに思索が低いレベルでとどまっているか、パソコンがなかった時代と今を比較して検証して見れば分かるでしょう。そういう回想をめぐらすのは、今となっては30代後半以上の人でなくてはシンドいかもしれませんが(笑)

 ではレムはどうなのかというと、パソコン誕生によって出現したプログラマーと呼ばれる人たちの発想法を描き出そうとする。プログラムとかバグ取りとかいう概念は、パソコンが登場するまではまったくなかった思考なわけですからね。

 これをまだ実現していない実用ロケット航行やサイバネティックの理論で運用し、新しい物語をつむぎ出していこうとする。これをパソコンもアシモもなかった1971年に書き上げてしまったレムがいかに驚異的であったかは、読んでいただければ即座に理解できるでしょう。当時に深見弾氏が手がけた訳文の技術用語がややぼやけていたというのも致し方ない部分がありまして、大野氏の指摘通り、今読んでこそレムのすごさが理解できる作品といえましょう。

 とはいえ、上下巻の分厚い大著。決して読みやすいものではありませんが、取り組む歯ごたえ、知的な楽しみは存分に保障します。もうこれで、翻訳された長編のうち未読なのは「泰平ヨンの未来学会議」のみになりました。「金星応答なし」も積ん読だけど、あれはレムが恥じている作品だしねえ…未訳作品のなかであと読むべきは、最後から2番目の「地球の平和」だけかな。これもいずれ訳されるのでしょうが、楽しみ。たぶん、すごいハードなんでしょうけどね(^^;
posted by てんちょ at 12:53| 大阪 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月12日

M・ジョン・ハリスン「ライト」

 久々にSFの話など。すっかり海外SFファンの拠点となった国書刊行会の新刊は英SF界の重鎮、M・ジョン・ハリスンの近著。ハリイ・ハリスンと間違う人も多いでしょうが、無関係な別人。というか、作風は正反対ですね。過去に紹介されたのは「パステル都市」(サンリオSF文庫)一冊きりなので、日本ではほとんど知られていないという方が正しいのかな。「パステル都市」は買ったまま積ん読になってましたけど、読んでみようかな。遠未来ファンタジーで「まんまナウシカ」というのがネットでの評判のようですね。

 んで、今回の新作。編集者の人のコメントでは「ライトな作品」だということだったんですけど、いや結構歯ごたえありました。非常に濃密な文体で、なかなか一回では理解できない。しばしば前に戻って読み返さないといけないので、時間かかったなあ。これだけ苦労したのはスタニスワフ・レムの「大失敗」以来か。

 ストーリーは1999年の量子コンピュータ研究者の話と、その四百年後の宇宙船になった少女の探索、そして同じ時代のドロップアウトした宇宙飛行士の男のサイバーパンクっぽい逃避行。直接関係のない3つの話が平行して進んでいき、最後にひとつにまとまるわけだけど…ネットで既に書いている人の多くが言っているとおり「こういうまとまり方をするとは」本当に予想外。

 しかし、非常にささいなところに伏線がちりばめてあるので、かなり注意深く読んでいかないと、最後の結末はあまりぴんとこないかも。私も読み終えたあとだいぶんと戻って読み返しました。あーそういうことか。

 てなわけで、後は「新しい太陽のウールス」が控えてるんだけど、疲れ果てたんで、もうちょい軽い本でリハビリしてからチャレンジしよっと。
posted by てんちょ at 13:54| 大阪 ☀| Comment(7) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月29日

第47回日本SF大会「DAICON7」

 やあ、みなさんおひさしぶりです。いろいろ更新したいことはあるんですが、いろいろと後まわしになってしまいました。とりあえず、まずはこのあたりからご紹介。

 もう5日も前になってしまったのですが、15年ぶりの地元開催ってことで、SFファン歴○○年にして初めて、SF大会に参加して行ってきました。それにしても、一元さんに厳しい大会ですなーコミケの原型となったイベントらしいんだけど。「本登録」とか「仮登録」とか言ってもぜんぜんわからないよ。ようするに何かしら企画が見たいと思ったら料金が必要なわけ。しかも1プロいくらとかじゃなくて、一括価格なんといちまんさんぜんえん!!高っ!!!高い、高すぎるよいくら高名なSF作家が大挙して参加してるからって。

 んで、散々会場前で悩んだ挙句、思い切って払いました。まあ、この先SF大会に参加するなんてことはめったにないでしょうし。

 参加した分科会はわずかに3つ。割高ですねーまあそれでも、ここでしか見られないものだし、まあいいかな。中でも、たぶんこれは伝説になるであろうというプログラムひとつを本日はご紹介。

 「完全なる真空−幻のコンベンション・ベトコン思い出話」

 アジア初のワールドコンとして昨年横浜で開催された「NIPPON2007」。しかしそれは間違いだったのです。ベトナム戦争真っ最中の1968年、ベトナムで従軍慰安を目的に開催されていた「ベトコン1968」という催しがあったことが発覚。なにわ物理学者の菊池誠氏とハードな老作家堀晃氏が、参加した当時の思い出を語ります。

 何しろ超豪華なコンベンションで、ティプトリーもレムもディックもハインラインも参加していたという豪華さ。しかも会場の片隅では、アポロの月着陸の偽装セット撮影が行われていた…?衝撃の事実が証拠写真とともに次々と明らかになっていきます。

 何しろ歴史上からは「なかった」ことにされているコンベンションですから参加者は一様に口が重く、どこか口調もぎこちない。最初は菊池氏と堀氏だけだったのですが、ただのんびりと見物に来ただけのはずの北野勇作、田中啓文、田中哲也の各氏も実はひそかに参加していたことが暴露され、壇上に上がることを余儀なくされます。会の進展と共に壇上の発表者はどんどん増えていき、みんな次はオレかと青ざめ、逃げ出すこともできないありさま。

 北野氏いわく「この企画きっついでー」ということなのですが、否定は許されません。「あなたは間違いなく参加していた」と証言されたら、覚悟を決めて証言するしかない。「そのときオレ5歳やがな!」と訴えていた北野氏ですが、そんな言い訳は許されません。親にくっついて何かよく分からずあちこちつまみ食いしてまわっていたことが判明。レセプションでは蛇踊りなんかがあったそうです。苦しいですよ、北野先生(^^;一方、田中哲也氏は北野氏と同じ年であったはずですが、見た目が35歳に見えることが買われ、アポロの月面着陸のエキストラとして雇われ、吉本経由でベトナム入り。特撮チームは東京から円谷英二が呼ばれたそうですが、月面着陸も、背景にエキストラがいないとリアルに見えないと、本物志向の演出だったそうです。ただ、カメラにVサインをしてしまったため、公開映像からははずされたそうです。ただ、日本各地での放映バージョンには違いがあり、北九州で放映されたものには、田中先生のVサインが残っているんだとか。

 いやあ深いですねえ。歴史の闇に埋もれていたコンベンションにこんな知られざる事実があったとは。

 企画が進むにつれて、関西お笑いSF作家の巨匠と呼ばれる三人組も顔は青さを通り越して白くなりはじめ、ようやく90分の予定が終了する頃には「やっと終わったー」とみんなぐったりとした表情で机に倒れこむ有様。いやはや大変にハードな企画でありました。みんなお疲れ様。隠された真実を語るのは神経をすり減らせるんですね(笑)
posted by てんちょ at 02:05| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする