2008年04月11日

「蒸気駆動の少年」

 ちょっと端境期なので、久々にSFなど書いてみます。ちょっと前に読み終わってはいたのですが、いつとりあげようかなーと思っているうちにズルズルとここまで来てしまった(^^;

 とにかくジョン・スラデックは理屈ぬきに好きで好きでしょうがないSF作家。アメリカ出身だけどイギリスに長く住んでいたということもあってか、どこかしらイギリスSFっぽいへそまがりっぷりが感じられていい。ダジャレ、言葉遊び、暗号、ロジックなどなど、日本語にしてもしょうがない作品を大量に書いた人でもあるので、ほとんど今まで紹介されなかったのも仕方ないといえば仕方ないのだけど。なんかよほど波長に合うのか雑誌とかアンソロジーとかに掲載されるたんびに探し出して読んでました。

 もちろん幻のサンリオ文庫版「スラデック言語遊戯短編集」いまや絶版の「遊星からの昆虫群X」(ハヤカワ文庫SF)も持ってます。そしてミステリファンの評価高い「黒い冷気」(ハヤカワSFシリーズ)「見えないグリーン」(ハヤカワ文庫ミステリ)も。残るは「黒いアリス」だけなんだけど、これがとんだ稀購本らしい。

 どうも世間の大半の人はスラデックを読んでも「?」と首をひねるだけで投げ出してしまうらしい。ひとつには今まで翻訳がいまひとつだったということはあります。柳下毅一郎先生の登場で、その問題もほとんど解決されたようなもの。国書刊行会が未来の文学第V期で、とうとう「ミューラー・フォッカー効果」を出すらしい。今から楽しみでしょうがない。

 まあ、原書をめくってみたら(熟読したとは言わない・笑)納得したんだけど、確かにスラデックの文章は実にそっけないのです。だから逆に日本人が読んでも実はストレスなく読めるんだけど、そこに言葉遊びが込められていたとしても気が付かない(−−;

 というわけで今回450ページにも及ぶ史上最厚のスラデックアンソロジー、夢じゃないかと涙しながら、1作1作いとおしむようにチマチマと読ませていただきました。なるほど翻訳はすばらしい。スラデックのそっけない文体まで見事に日本語になっとる(笑)

 スラデックはキャラクターというものを書きません。書けない、というよりは、そんなものに興味がないんでしょう。それよりかは奇妙な論理をひねり出す方に情熱を注ぐタイプ。だから、本格ミステリというのは、スラデックにぴったりなジャンルだったのかもしれない。たしかに「見えないグリーン」はたまげたもんなあ。他の作品は非常に違和感に満ちた空気が流れているのだけど、ミステリだけは、あっけないほどにまともかつ普通。「見えざる手によって」は、なかなか楽しいユーモアミステリで、ポールさんあたりが書きそう。

 とはいえやはりスラデックのSFのヘンさ加減は捨て難い。ベストは「不在の友に」かな。まあ、読んでみればいかにもお前がすきそうな話だ、と言われそうですけどね(^^;

 強烈さという点では「血とショウガパン」も。まさかの童話パロディスプラッタホラー。スラデックって、何をやらせても器用に仕上げるけど、何をやってもやりすぎる人だったんですね(笑)血が苦手なポールさんは読まないほうが吉。

 それにしても密かな個人ベストである「不安検出書(B式)」が本書にうっかりとしかも大トリで収録されたのはめでたい。読むため、ではない究極のメタフィクション。何をどうやってもスラデックの術中にはまる仕掛けがおそろしい。未読の方はぜひチャレンジされたし。野口幸夫氏も、こういう作品なら、ヘンな訳文にならないんだな(^^;
posted by てんちょ at 13:29| 大阪 ????| Comment(5) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月14日

未来の文学第V期

 以前このブログでも紹介した国書刊行会垂涎のSF叢書企画「未来の文学」シリーズがついに第V期突入を決定しました。早川のSF年間総括ムックシリーズ「SFが読みたい!」にて、2007年の各社新刊告知の中で、国書の担当者が「第3期あります」と触れていたわけですが。




 内容が判明するのはまだまだ先なんだろうなあ。なんせまだ第U期も3冊残っていることだし。と思っていたんですが。ちなみに順調に行けば、今月中にベスターの「ゴーレム100乗」が登場するはず。

 しかし、なんとなんと、昨年11月の京都SFフェスティバルで既にラインナップが発表されていたそうです。本日、なんとなくネットを探っていたら飛び出して驚いた。

http://ore.to/~str/diary/2006/11/post_33.html

こちらなどからの情報。
一応、ここでも書かせてもらうと…

<未来の文学>第III期
 ジーン・ウルフ『ジーン・ウルフの暦』
 R・A・ラファティ『第四の館』
 ジャック・ヴァンス『奇跡なすものたち』
 ジョン・クロウリー『古代の遺跡』
 ジョン・スラデック『ミュラーフォッカー効果』
 サミュエル・R・ディレイニー『ドリフトグラス
 <未来の文学>アンソロジー
  伊藤典夫編『ヒトラーが描いた薔薇』
  若島正編『内容未定』

 すごい!私のヒイキ作家ばかりじゃないですか。ディレイニーを除いて(笑)ラファティの「第四の館」やジョン・スラデックの「ミューラーフォッカー効果」なんて、(いつかどこかで訳されないだろうか)と夢見ていたものばかり。

 確かに、かつてサンリオSF文庫にて2作とも告知されていたのは確かですが。どー考えたって、出るわけないだろうと。特にスラデックは。しかも当時の翻訳予定者はあの超翻訳家・野口幸夫!それはどう考えても上がってくる原稿は日本語じゃないぞという感じでしたよ。いま訳されるのなら安心。柳下毅一郎先生でしょうから。それにしても、あの「英語圏の筒井康隆(ちょっと違う)」の最大悪ノリ大作をどう日本語にするか。楽しみです。
posted by てんちょ at 02:33| 愛知 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月02日

「大失敗−フィアスコ」




 アニメ感想の割合がすっかり増えてしまったので、なんかSF小説を紹介するのもひさびさですが。なんたってポーランドの知の巨星・レム最後の長編小説とあれば、取り上げないわけにもいきません。レムの作品は、日本語に翻訳されているものはほぼ入手済み(数少ない例外が「泰平ヨンの未来学会議」)で、分厚い「宇宙飛行士ピルクス」著者が嫌悪しているという「金星応答なし」をのぞいてほぼ全点目を通しているのですが。この国書刊行会の「レムコレクション」シリーズは本当にとんでもなくすごい。最初に翻訳された「ソラリス」なんて、われわれに馴染み深い早川文庫版とはぜんぜん違う内容に驚愕したものでした。異質な文明に対する考察をとことん突き詰めてソラリス学という架空の学問をゼロから立ち上げてしまうわけですから。そりゃ、タルコフスキーの映画に怒るかも。でも、それは映画になんないでしょう。やっぱ。

 確かにレムは孤高の人で、SFのある存在意義を究極まで突き詰めてしまった。まあレムはとことん理系の人だったから、NWSFの意義はあまり理解できなかったようですが。NWSFは理系でも文系でもなく、いわば芸術系SF。それが理解できなかったんだろうな。文学にも素養は深かったレムですが、文学に関しては結構古典主義で、そのお堅い古典主義と理系的素養がミックスされるとき、SFのある究極の姿が示される。

 そんなレムの本当に久々の長編翻訳新刊、しかも長編小説としては最後のものになってしまった作品とあっては、とりあげないわけにはいかない。「虚数」とか「完全な真空」とか最近の翻訳は中短編ばかりでしたからね。ひょっとして「泰平ヨンの現場検証」以来?あれも妙な作品でしたが。

 しかしそれにしても読みにくいことと言ったら!通勤途上に読んでいたのですが、300ページほどの本書を読破するのにほぼ2週間かかってしまいましたよ。今月の「SFマガジン」の書評では訳文の問題点を指摘していましたが、それはどうだろうか。ポーランド語を読めない私に言う資格もないかもしれませんが、原文からしてこういう感じなんだと思いますよ。

 とにかく一挙手一投足に緻密な技術論的考察がはさみこまれていくし、しかもそれは周知の知識などではなく、現実の科学を土台にレムが作り上げた推定の「未来科学技術」に基づいているのですから。まだ見ぬレムの科学論文集「技術大全」ってこんな感じなのかな、と考えつつ読んでおりました。

 実際のところ、今回は新たに付け加えられた要素はほとんどない。レムをよく知る読者ならば、

 「異星に出かけていってファーストコンタクトを果たすけれど、それは人間に理解できるものではなく、大失敗を引き起こす」

 という内容が容易に想像がつくでしょう。それは、そのまんま、この小説の内容。むしろ、今回はレムがあちこちで部分的に試みてきたことを統合したときに何が起きるか、を探ったものだといえます。そういう意味では、「究極のレム」なわけで。レムとしては、「もうこれ以上何かを書く意味がない」と思ってしまったのも無理はないかもしれない。

 何にしても、人間の理性的な考察の積み重ねが大失敗を引き起こしてしまうという、レム特有のペシミズムは本当に重い。そこがまた、レムの魅力であるわけですが。

(この先は、ささやかなネタバレがありますんでご注意。)

というわけで折っておきますね。続きを読む
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2006年01月18日

「刺青殺人事件(新装版)」「僧正の積み木唄」

 年末・年始と本は結構読みました。まあ、いつも読んでるっていえばそうですが(笑)
 語るべきアニメが増えてきて週2回に減ってしまった自由枠を何で埋めようかはいつも頭をひねるところなのですが、本日は、そんな中から2冊をご紹介。

 「刺青殺人事件」(光文社文庫)は、当ブログの常連・ポール・ブリッツさんを含め根強いファンの多い、日本ミステリ史上に輝く傑作ですが、実は今までちゃんと読んだことがありませんでした。割とあっさり絶版になっちゃってたということもありまして。古典本格と社会派の狭間にあって、高木彬光は一番ワリを食った人かもしれません。
 今回、実にお得な新装版が刊行されたのを機会に読んでみました。途中までは「ふーん、ふんふん」と生意気に鼻を鳴らしつつ「これはハズしたかな」と思いながら読んでいたのですが、ラストシーンに至って驚愕。やられました。何というかこれは、推理小説を読みなれている人ほど引っかかるかもしれない。
 「首なし死体」ではなく「胴なし死体」という奇想天外なアイデアは認めるものの、それで「刺青殺人事件」なんだったらミステリファンは「あ、オチ読めた」と思うでしょう、普通。それもあって私も今まで読まなかったんですが、それが実は壮大な引っ掛け。まあ、そう言ってもネタバレにはなりませんから、一度読んでみてください。とにかく読みやすさは折り紙つき。あっという間に読めますから。新装版は、高木氏自身のエッセイメイキング、短編「闇に開く窓」まで収録した超お得版です。
 ただ、個人的には、探偵役があまりに完璧なのはちょっとつまらないかも。やはり個人的な好みとしては、金田一耕助の魅力的なキャラクターとオドロオドロしい幻想怪奇的な演出の横溝の方が惹かれるかなあ。

 というわけで、SF作家山田正紀が手がけた異色の金田一耕助もの「僧正の積み木唄」(文春文庫)。話の出来・不出来以前に、ファンにとってはたまらない展開です。アメリカ放浪時代の耕助が、第二の僧正殺人事件に巻き込まれるという異色の構成。「僧正殺人事件」のファイロ・ヴァンスが道化と化してしまい敗北、実は推理が間違っていたかもしれない可能性が指摘されるという大胆な幕開けです。「僧正」も高校時代に楽しんで読んだ者としては、本筋そのものよりも「推理ミス説」の方がより衝撃的でした。たしかにこの仮説、筋は通っているのですよ。で、実は「僧正」はまんまと逃げおおせていて、ヴァンスの後を引き継いだ金田一耕助と対決するという展開。ドキドキします。「ミステリ・オペラ」の壮大さに比べると若干スケールの面でもの足りないでもないのですが、まあそれはないものねだりというもの。耕助のキャラは完全に立っていて、横溝ファンとしては合格点あげていいと思います。とにかく読んでいる間このうえもなく楽しかった。また本家の横溝が読みたくなりました。
posted by てんちょ at 23:52| 大阪 ????| Comment(2) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月05日

R・A・ラファティ「宇宙舟歌」

 というわけで国書刊行会栄光のSF叢書「未来の文学」第T期最終配本「宇宙舟歌」を読了。もっと手強いかと思いきや、けっこうスイスイ読めて拍子抜けでした。「トマス・モアの大冒険」や「悪魔は死んだ」のような、もっとわけのわからない話かと思いきや、物語構造は非常にかっちりとしていて、読んでいて迷子になることはありません。ラファティの特徴の一面を指している「ホラ吹きおじさん」らしさがとてもよく出た一冊といえそうです。むしろ短編のテイストに近く、誰にでもお勧めできそう。とても愉快で能天気でバイオレント(^^;「カードキャプターさくら」の山崎君が好きな方なら、ぜひ読んでいただきたい(何だそのたとえは)。

 ストーリーは「SF版オデュッセイア物語」というべき内容。銀河大戦を戦った宇宙船乗りたちがさまざまな奇妙な惑星で寄り道を重ね騒動を引き起こしながら、故郷・地球を目指します。巻末の解説で訳者の柳下毅一郎先生も指摘しておられる通り、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」よりはよっぽど原典のテイストに近い。外枠は割と忠実に原本のエビソードを踏襲しながらも、実際の内容としてはいかにもラファティ的なホラ話の乱れ打ちとなっているのがうれしいところ。

 「SFは2種類に分類できる。R・A・ラファティとそれ以外だ」(大森望)

 と、評される人だけあって、黒くてシュールな笑いは誠に独特。まずは読んでみられたし。

 しかしそれにしても気になるのは、ラファティの初期長編のうち、英米圏では最も評価されている「第四の館」だけが未訳で残ってしまったこと。柳下先生、何とかしてください。
posted by てんちょ at 16:45| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月28日

「未来の文学」第U期

 本日より増築。「SF・小説」「真下耕一」「アート」の3ジャンルを増設しました。

 というわけで、胸張って(何がだ)SFもやっていきます。よろしく。
折よく本日、国書刊行会栄光のSF叢書「未来の文学」第T期最終巻「宇宙舟歌」が刊行されましたので、さっそく購入してきました。

http://www.kokusho.co.jp/news/index.html

 もちろんまだ読んでません。しかし著者はあのR・A・ラファティです。面白くないはずがございません。というか、私にとってだけ面白くないはずがない、のかもしれんけど(^^;
「どろぼう熊の惑星」やら「つぎの岩に続く」(ともにハヤカワ文庫SF)で知られる短編の名手・ラファティですが、実は短編よりもさらに奇っ怪で妙ちくりんな長編もたくさん書いてます。あまりにも妙なために英語圏でもほとんど売れずじまいだったそうですが(笑)

 しかし私は「悪魔は死んだ」(故サンリオSF文庫)を海外歴代SFベストに必ず入れてしまうほどのラファティ長編好き。冒頭をパラパラめくっただけでも、アル中のシュールレアリストのようなラファティ節が次々と繰り出されてわくわく。読んだらまた報告しますゆえ。

 それよりも本日のニュースは「未来の文学」第U期のラインナップ。国書のHPでも紹介されてますが、わかりやすいのでこちらをご覧あれ。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%A4%CD%E8%A4%CE%CA%B8%B3%D8

 断片的には紹介されてましたが、やはり噂通り「ダールグレン」が登場。日本語にしたらいったい何ページになるのやら。大久保さんがんばって(^^;
 「魔術師」(ハヤカワ文庫FT)大ヒットで映画化までされるというクリストファー・プリーストは何と「限りなき夏」が参戦。サンリオ廃刊で塩づけになっていた企画ですね。表題作は大森望氏が京大在学中に訳したものだとか。どうせなら河本三郎氏の翻訳が完了している「暮れゆく島へのフーガ」が読みたかった。これは第V期に期待かな。後は同じく翻訳完了しているらしいキース・ロバーツ「白亜の巨人」とか。個人的にはブライアン・オールディス「ヘリコニア三部作」をぜひとも!原書持ってるけど、あんなの読めないよ(^^;
 もちろんジーン・ウルフの「デス博士の島その他の物語」は今回も稼ぎ頭になるのかな。2冊のアンソロジーは結構大穴かも。なんせスラデックの中編「マスタースンと社員たち」が入っている。これはたぶん、サンリオSF文庫「新しいSF」に収録されてた「使徒たちー経営の冒険」のことではないかな。野口幸夫氏の訳文はまったく意味不明だったので、新訳がどうなるか期待したいですね。
posted by てんちょ at 17:37| 大阪 ????| Comment(1) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月26日

グレッグ・イーガン「ディアスポラ」

 おそらくは今年いちばんの話題作となるであろう現代SFの極北。ようやく読了しました。
 いや、読了したと言えるのかな。一応最後までは行ったんだけど、途中よく分からない所の山山山(^^;いろいろ他の方のブログも読んでみたんですが、みんな感想はそう変わらない。私もそんなに他の人と違う面白いことは言えそうもないですね。

 そりゃ、一応サイトで量子論のコラム書いてますけど、これは数式最小限の文系人ならではの思弁を込めたものですから。最先端の数学と宇宙論・量子論は本当に面白い。でもあまりに常識離れしててイメージが難しいのも確か。面白いけど難しいのも間違いない。プロの科学者が書いたハードSFは、文章がヘタだ、とよく言われますけど、問題はむしろそこじゃない。「これ以上書くと科学的でなくなる」と考えるんでしょうか、かなり低いレベルで思弁をストップさせてしまう。そこが不満なんです。スティーブン・バクスターとか、グレゴリー・ベンフォードとか。

 その点、イーガンはほとんどギャグのレベルまで徹底して思弁を推し進めてしまう。どうせ科学で小説を書くならここまで行かないと。毎回物語の情景をイメージするのは大変困難ですが(^^;特に今回はほとんどの人類が形を捨て、ネット上の情報と化した遠未来。こんなん、どーやってキャラクターの姿思い浮かべたらいいんだ(笑)まあそのあたりは棚上げにして読みすすめることができるのが、SFファンの強みではあるんですが。冒頭、無から電脳生命体としての人間が生まれでるシーンの描写は、「攻殻機動隊」のOPを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。

 むしろ厄介なのはその後で、人類のスケールはミクロの領域になっているのに、活動範囲はすさまじくマクロの領域に拡散していきます。異星の生命を求めて宇宙の彼方に散らばっていき、さらには宇宙に穴を開けて別次元へと…その課程がひとつひとつ途方もない科学理論によって説明されてしまう。
 ああ、図解がほしい!と思いながら読んでいたんですが、みんな考えることは同じようですね。こういうサイトがありました。
http://d.hatena.ne.jp/ita/00010205

 なるほどなるほど。
 いや、さすがにイーガンでなきゃここまではできないよな。素粒子が点ではなくひもだったら、というのが超ひも理論なのですが、ひもじゃなくて次元に開いた穴だと考えてみる。これは実際にある説で、そう考えるとかなり計算が楽になるんだそうです。その穴をワームホールとしてワープに使えないか…と、そうか、そういう話だったのか。かなり思考の助けになります。これから読まれる方はぜひ参考にしてください。もっとも、それでもまだまだわかんないところだらけなんですけどね。

 本当は理解するためには二度読まなければならないとかで。
 …いや、そりゃ確かに私も「MADLAX」を理解するためには二度見なければいけないとは言うておりますが(^^;、
こ、これをもう一回読むんですか?うーん、考えさせてください…
posted by てんちょ at 21:13| 大阪 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月15日

アムニジアスコープ

 よく考えたら、小説本を取り上げるのも、これまた久々ですね。スティーヴ・エリクソンという人は、アメリカの作家なのですが、アメリカよりも日本で人気があるという変わった人。ほとんどの作品が訳出されていて、どれも入手可能。これもまた、海外文学紹介ではひとつのブランドを築き上げてしまった柴田元幸氏の眼力のたまものでしょうか。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087734323/qid=1126792834/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/249-7011488-7556314

 SF・幻想文学系を中心に根強いファンがいて、私も日本初紹介作「黒い時計の旅」(白水社Uブックス)以来の大ファン。この人は、なにやら妙なビジョンを描かせると超一流で、「ヒトラーとアメリカが延々現在まで戦争している世界とドイツが負けた世界が混じり合ってしまっている」(黒い時計の旅)「水没していくパリで幻の無声映画を探し求める」(さまよう日々)「アメリカがアメリカ1とアメリカ2に分裂している世界」(ルビコンビーチ)と途方もなくスケールがでかい。
 それでいて、小市民的インテリの喜劇的苦悩が必ず対比して描かれ、そのコントラストが絶妙の効果をもたらしている。

 で、今回は地震で壊滅したロスが舞台で、それなのに作者の自画像とおぼしきマイナー作家が、次々とまきおこる不条理な展開に翻弄される何とも奇妙でブラックなおかしみに満ちた私小説的世界。何なんだかまったく(^^;しかしポルノ映画撮影会で自分が脱いで女優のセリフを即興で吹き替えるハメになり、なぜか映画は傑作に仕上がってしまうなど本当におかしい。

 「黒い時計の旅」の細かい断章をちりばめた構成など、真下タッチだし、真下がアニメ化してもいけるんじゃないでしょうか。うーん、何だか急に見たくなってきた。
posted by てんちょ at 23:56| 大阪 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月11日

グレッグ・イーガン「ひとりっ子」

 本日は、久々に量子論ネタを。そう、イーガンです。オーストラリアの独立単一最強SF作家、というか、他のSF作家ってほとんど知られてません(笑)。その他のSF作家も、そ
れはそれでおもしろいんだけど、それはまた別の話。

 早川の「SFマガジン」の今月号巻頭に載ってます。なんせちんまい字で3段組みびっしり原稿用紙にして170枚ぶんの大作中編で、文庫本にしてもそれなりの厚さになるであろうという代物。まあ、例によってムツカシイんで、読まれる方は気合入れてどうぞ。

 私もだいぶんと量子論については勉強したつもりですが、イーガンは破天荒なアイデアを遠慮なく繰り出す人なので、ついていくのは大変。本当、どうやって情報入れてるんでしょうね。サイエンスとかネーチャーをガシガシ読んでるんでしょうか。それにしてもなあ。

 イーガンは実に量子論にとことんこだわる作家で、今回は多世界解釈が基本になってます。「宇宙消失」の時は、コペンハーゲン解釈がベースになってましたけど。実は今回は、いったんペンローズの量子脳理論を否定した上で、ペンローズの考え方とは逆に、AI上に、平行世界を生み出さない単一の人工知能を作り出し、義体を遠隔操作させる、ということを試みます。そして主人公の科学者は、そのAIを自分たち夫婦の子供として育てようとする、という話…たぶん(^^;。

 私も何度かあちこち読み返して、おぼろげな全体像をつかんだ、という感じです。まあそれにしても変なことを考えるもんだなぁ〜とあきれましたけど。読んでみて、「読み方が違うぞ」と思った方は、ぜひご連絡を。他の方のご意見うかがいたいもんです。
posted by てんちょ at 23:27| 大阪 ??| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月31日

ベストSF2004投稿

 以前ここで書いた森下一仁先生のHPへのベストSF投稿を本日行いました。ちょっと独特で、持ち点5点を任意の作品に割り振る仕組み。特にお気に入りの1作に5点全部張ってもいいし、5冊に1点ずつ割り振ってもいい。
で、結果はというと…
「MADLAX」(3点)
「エンベディング」イアン・ワトソン(1点)
アジアの岸辺」トマス・M・ディッシュ(1点)
となりました。後半の2本は、国書刊行会から刊行されたSFシリーズです。

ただし、このWeb投票、本当は活字本オンリーのものなので、いくら映像作品に投稿しても無効となります。確信犯だからいいんですけどね。…うーん、でもさびしい(^^;
posted by てんちょ at 23:58| 大阪 ????| Comment(2) | TrackBack(0) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月19日

ベストSF2004

 行きつけにしているSF作家森下一仁先生のHPで行われている2004年度ベストSF投票がそろそろ大詰め。いいかげん、何か決めなくては。
 昨年は不作だったわけではなくて、すごい豊作。国書刊行会は、出版社そのものをベストに推したいぐらいがんばってくれました。特に「未来の文学」シリーズはすばらしい。トマス・ディッシュの「アジアの岸辺」はよく売れているようですね。アイロニカルなトーンがなかなか良いので、ぜひ本屋でめくってみてください。
 まあ、個人的な感情から言うと、昨年のSFベストワンは、文句なく「マドラックス」なんですけど、森下先生とこは本しか受け付けてくんないからなあ(--;
posted by てんちょ at 23:59| 大阪 ????| Comment(2) | TrackBack(1) | SF・小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする