社長、ありがとうございました。久々に完璧なラストだったと思います。もう、ひたすら溜息。ここまで文句のつけようのないラストは、本当に「MADLAX」以来じゃないか。どうしようか迷ってましたけど、よし、DVD全巻揃えるか(^^;
最後の最後のシーンについては賛否両論あるかもしれませんが。いや、それほどとっぴではないですよね。結局あのラストしかありえないわけだから。だからこそ第3部にはずっと出てこなかったマグワイアが最後の最後でワンシーンだけ出てくるのでしょう。そういう意味ではきちんと伏線張られている。個人的にはデニス・ホッパーの「イージーライダー」思い出してしまったかな。むろん映画屋である社長が意識していないわけがない。それにしても、「NOIR」も「Phantom」も最後を飾るのが「あいまいな銃弾」だというのが面白い。「NOIR」をリメイクすることについてかなり意識的だった証拠かもしれませんね。まあ、もちろん原作どおりではあるのでしょうけど(^^;
まずは開巻いきなり派手な銃撃戦で、サイスのケレン味たっぷりな芝居を見ていると、ついついフライデーを思い出してしまいます。今回は特に顔の片側だけ覆う仮面を着けてますから余計にそう思うわけですが。まあ、真下も「フライデーの役どころ」という意識はしていたというサインなんでしょう。だからこそ江原正士は外してきたんだろうけど…いやむしろだからこそあえて江原さんを当てた演出が見たかった(^^;
まあ、そもそも両手を広げて「待ちかねたぞ」という感じの大芝居なサイスに十字架のような影が差し、その十字架の影の交点にエレンが立つというのは、実に真下らしい演出。このあたり、サイスはアルテナの影を感じる部分もあり、本当、「NOIR」の最終話についてはいろいろと不本意なところがあったということなのだろうなあ。
あ、そういや「NOIR」も後半の暗殺部隊は仮面かぶってましたね。いかにも「らしい」ケレン味、真下と波長が合うべくしてあった作品というべきでしょう。本当、そういう意味では傑作になるほかなかった作品。まあ、普通はそういう作品はえてしてコケるものですが。われわれ信者だけでなく誰もが楽しめる作品に仕上げてきたのはさすが。「ツバサ・クロニクル」なんて信者にしか楽しめなかったもんな(^^;
それにしても、サイスが面白いのは、わざわざ照明機器を自分で設営して、芝居らしさを強調してみせるところ。このへん、真下はフライデー同様、サイスに演出家としての自分自身を重ねている節もあります。
ところで今回のキーワードは「不意打ち」。最初から最後まで「不意打ち」で銃弾が飛んできます。確かに暗殺者同士の争いだから、物量のドンパチではなく、最後は必ず頭脳をこらした「不意打ち」による一撃で決着がつく。そのあたりのこだわりが実にうれしかった。もはや誰も思い出したくないらしいOVA版は、リメイク版「ジャッカル」さながらに物量戦のマヌケなドンパチでカタをつけていたそうで。確かにそれでは暗殺者とはいえんわな。まあ見てないのでなんともいえませんが。今回のものより優れている可能性はほとんどないと言っていいでしょう。
特にこの最終回、マシンガン、短銃、ナイフ、最後は素手と自在に切り替えながら常に意表を突く形で玲二とエレンの戦闘を細かく切り替えながら並行的に見せていく繊細な演出は期待たがわぬ真下節が炸裂です。本当、この作品をずっと追いかけてきてよかったよ。何よりもすごいのは、原作でこのシーンがどうなっているのかまったく想像もつかないこと。おそらく原作に忠実なんでしょうが…それだけ活字を映像に移し替えていく手際が巧みで、脚本が綿密に練り上げられているということ。原作の長い長いしゃべくりをそのまま機械的に取り込んで朗読劇と化してしまっている「化物語」とはそこが違う。
そして、最後の最後に我々が目にするのは突き抜けるような青空。まあ、最後の最後に空虚なほどの青空、もしくは海が登場するのはヌーヴェルバーク以降の青春映画の鉄則ですが。特にこの作品の場合はきわめて重要な意味がある。なるほど、この作品はまさしくこの場所で終わるべくして終わるのだと。真下監督、本当にありがとうございました。この作品を見ることができてよかった。真下信者でよかった。そう思わしめる作品て早々はないですよね。
次回作は「無限の住人」の第二部かな?休みなく作品を量産することに決めた新房氏と違って必ず1−2クール休みを置く社長ですから、再登場はお正月か来春あたりかな。楽しみにしてます。次の次あたりはまた北山さんとタッグを組んでオリジナル作品を。まあリクエストなどしなくてもそのつもりでしょうけど。ひとまず、今回もおつかれさまでした!冬コミは力入れてやんなきゃ(^−^;
2009年09月26日
2009年09月19日
Phantom第25話「決着」
万感。いや、ここまで盛り上げてくれるとは思いませんでしたよ。さすがの真下節が満載で、信者にとってはこれほど熱狂できる展開はない。流れるように鮮やかな戦闘シーンと情感たっぷりのシーン、緩急を使い分けた巧みな編集は見事のひとこと。「MADLAX」は別格としても、ここまで盛り上がったクライマックスは久しくなかったなあ。
まさしく「NOIR」の見事な雪辱戦となっていると思います。エレンの人間離れした銃さばき、死者と語り合うキャル、圧倒的な存在感を見せた美緒の母、埋めようのない距離を感じさせる美緒と玲二の電話を通しての会話。古風な「待つ女」を感じさせないのが真下の技量でしょう。
携帯電話を使っての「…行ってきます」という台詞、凡庸な演出家がやっても痛くなるだけでしょうけど、さすが御大とうならさせる絶妙なハードボイルドぶり。うんうん、こうでなくちゃ。この後、エレンとの聖堂でのやり取りもまた、実にハードボイルド。三角関係の末路としてではなく、自分の「因果」として背負うことを決意する意味を込めて自分がキャルを撃つと宣言する玲二。このずっしりとした言葉の重さもまた真下ならではの演出です。途中に何度かインサートされるブランコの映像が実に効果的。二人にとってはこれが、見果てぬ平穏の象徴だったのですね。
そして、たっぷりと尺を取って表現される玲二とキャルの対決。こういうドロドロした結果の対決は、痛い痴話ゲンカか醜悪なドツキ合いに堕しがちなのですが、巧妙な編集による大胆なカットバックで、たった一発の銃弾に収束させる力技の演出にはいつもながら感服します。そして、そのつかのまの一瞬、見えた「二人が離ればなれにならなかった可能性」。そのはかなさが切ないからこそ、キャルが「自分だけが愛されている」という満足感とともに死んでいけたということでしょうか。
そして今までなかなかしっくりこなかった七瀬光の音楽ですが、今回は最高にすばらしい。久々に前面に出て真下演出と阿吽の呼吸で見事に連動しています。これらの名シーンを見事に彩っていると言っていいでしょう。強烈な梶浦サウンドと違って、効果音の間に溶け込むようにしてじわじわと情感を高めていくのが七瀬サウンド。「絶対少年」の時は割と梶浦サウンドに近い強烈なミニマルさがあったんだけど、今回はそうではない。たぶんこれは真下の演出方針で、それに合わせることのできる人なんでしょうね。
エレンの戦闘シーンからサイス登場で微妙に切り替わるサウンドの巧妙さ。小節単位でサウンドを切り刻む真下演出ならではです。いやが上にも高まる「最後の闘い」への期待。次回、最終回!惜しいけど待ちきれない。
まさしく「NOIR」の見事な雪辱戦となっていると思います。エレンの人間離れした銃さばき、死者と語り合うキャル、圧倒的な存在感を見せた美緒の母、埋めようのない距離を感じさせる美緒と玲二の電話を通しての会話。古風な「待つ女」を感じさせないのが真下の技量でしょう。
携帯電話を使っての「…行ってきます」という台詞、凡庸な演出家がやっても痛くなるだけでしょうけど、さすが御大とうならさせる絶妙なハードボイルドぶり。うんうん、こうでなくちゃ。この後、エレンとの聖堂でのやり取りもまた、実にハードボイルド。三角関係の末路としてではなく、自分の「因果」として背負うことを決意する意味を込めて自分がキャルを撃つと宣言する玲二。このずっしりとした言葉の重さもまた真下ならではの演出です。途中に何度かインサートされるブランコの映像が実に効果的。二人にとってはこれが、見果てぬ平穏の象徴だったのですね。
そして、たっぷりと尺を取って表現される玲二とキャルの対決。こういうドロドロした結果の対決は、痛い痴話ゲンカか醜悪なドツキ合いに堕しがちなのですが、巧妙な編集による大胆なカットバックで、たった一発の銃弾に収束させる力技の演出にはいつもながら感服します。そして、そのつかのまの一瞬、見えた「二人が離ればなれにならなかった可能性」。そのはかなさが切ないからこそ、キャルが「自分だけが愛されている」という満足感とともに死んでいけたということでしょうか。
そして今までなかなかしっくりこなかった七瀬光の音楽ですが、今回は最高にすばらしい。久々に前面に出て真下演出と阿吽の呼吸で見事に連動しています。これらの名シーンを見事に彩っていると言っていいでしょう。強烈な梶浦サウンドと違って、効果音の間に溶け込むようにしてじわじわと情感を高めていくのが七瀬サウンド。「絶対少年」の時は割と梶浦サウンドに近い強烈なミニマルさがあったんだけど、今回はそうではない。たぶんこれは真下の演出方針で、それに合わせることのできる人なんでしょうね。
エレンの戦闘シーンからサイス登場で微妙に切り替わるサウンドの巧妙さ。小節単位でサウンドを切り刻む真下演出ならではです。いやが上にも高まる「最後の闘い」への期待。次回、最終回!惜しいけど待ちきれない。
2009年09月13日
Phantom第24話「対峙」
なんだか意味深なエロシーンがあったりする第24話(^^;
まあ、ゲーム版ではもっとねっちりいろいろと語られていたのでしょうけど。何があったか適度に伏せられていると、いろいろと想像力が刺激されていい感じです。何もかもすべて描くのが粋というわけではないのは世の常でして。いままで結構いい感じで来ていた「うみねこの鳴く頃に」が、非常に露骨な食人描写をやってカチンと来たので、余計にそう思うのかもしれませんが。ああいうのって「表現の限界に挑んでる俺たちってイケてる」という感じが鼻について余計かっこ悪いですね。タブーに挑むならそれなりに工夫した表現をしてナンボだと思う。タブーに挑むこと自体はいまどき偉くもなんともないよ。その点、社長はコードに一切ひっかからずに極限の表現を華麗につむぎだすことに成功している。さすがこれはすごい。
キャルが「忘れちまいな」というほどに、何をしたのかはいろいろと考えてしまう。まさか服をひっちゃぶいただけじゃああるまい。こういうのは、描かず暗示するからこそいいんですよね。
おそらくは、キャルと玲二の対決を結末部に持ってくることを想定して、グイグイとテンションを盛り上げていく第24話。それぞれのキャラクターがバラバラに動きつつも、物語が一点に向けて収束されていくのがずっしりと分かる印象。いいです。いやこれはなかなか重みのあるハードボイルドな結末が楽しめそうだ。
一時期まで、真下作品にハードボイルドは代名詞だったのですが、いつから消えてしまったんだろう。やっぱ、第一次真下祭あたりからかなあ。「ツバサ・クロニクル」の第一シーズンまでは確かにあったんだけど。
今回は結末に向けて、久々にハードボイルド色が濃厚に出てきたのが実にうれしい。まあ、そこに任侠色が混じっているのが新しいといえば新しいのですが。今回の梧桐組長の演説なんて任侠の美学っぽくみせて実はハードボイルドなやせ我慢の美学というのが実に真下らしいなあ。「ハジキは人殺しの役にしか立たない」とか。
玲二とアインの、どちらがキャルを殺すかについての感情を殺したやり取りとかそうですよね。「…あなたにキャルが殺せるの?」とか感情を押し殺したつぶやきだからこそ、すばらしい余韻が感じられて本当にゾクゾクする。
しかもその一方で、キャルをはさんで玲二とアインの感情のさや当てが実に繊細でいい。非常に感情の抑制された三角関係の構図というところでしょうか。
確かにキャルと玲二は肉体関係があった。では玲二とアインは?まあ普通に考えればあって当然だし、ゲーム版では当然あったんでしょう。ところがこのアニメ版ではキャルと玲二のように明確にそれをほのめかすシーンがない。これはどういうことなのか?結構悩むところですね。
玲二がキャルを引きずったまま逃げてしまったので、アインと縒りをうまく戻すことができずにいる、という状況だとしても驚くことではない。まあ、ここまでの演出から見てもそれは十分考えられるわけで。
どうでもいいように感じるかもしれませんが、これは結構結末に響いてくる話ではないかと思うわけで。そのあたりもふくめて後二回、注目です。はぁーだんだんさみしくなってきたなー
まあ、ゲーム版ではもっとねっちりいろいろと語られていたのでしょうけど。何があったか適度に伏せられていると、いろいろと想像力が刺激されていい感じです。何もかもすべて描くのが粋というわけではないのは世の常でして。いままで結構いい感じで来ていた「うみねこの鳴く頃に」が、非常に露骨な食人描写をやってカチンと来たので、余計にそう思うのかもしれませんが。ああいうのって「表現の限界に挑んでる俺たちってイケてる」という感じが鼻について余計かっこ悪いですね。タブーに挑むならそれなりに工夫した表現をしてナンボだと思う。タブーに挑むこと自体はいまどき偉くもなんともないよ。その点、社長はコードに一切ひっかからずに極限の表現を華麗につむぎだすことに成功している。さすがこれはすごい。
キャルが「忘れちまいな」というほどに、何をしたのかはいろいろと考えてしまう。まさか服をひっちゃぶいただけじゃああるまい。こういうのは、描かず暗示するからこそいいんですよね。
おそらくは、キャルと玲二の対決を結末部に持ってくることを想定して、グイグイとテンションを盛り上げていく第24話。それぞれのキャラクターがバラバラに動きつつも、物語が一点に向けて収束されていくのがずっしりと分かる印象。いいです。いやこれはなかなか重みのあるハードボイルドな結末が楽しめそうだ。
一時期まで、真下作品にハードボイルドは代名詞だったのですが、いつから消えてしまったんだろう。やっぱ、第一次真下祭あたりからかなあ。「ツバサ・クロニクル」の第一シーズンまでは確かにあったんだけど。
今回は結末に向けて、久々にハードボイルド色が濃厚に出てきたのが実にうれしい。まあ、そこに任侠色が混じっているのが新しいといえば新しいのですが。今回の梧桐組長の演説なんて任侠の美学っぽくみせて実はハードボイルドなやせ我慢の美学というのが実に真下らしいなあ。「ハジキは人殺しの役にしか立たない」とか。
玲二とアインの、どちらがキャルを殺すかについての感情を殺したやり取りとかそうですよね。「…あなたにキャルが殺せるの?」とか感情を押し殺したつぶやきだからこそ、すばらしい余韻が感じられて本当にゾクゾクする。
しかもその一方で、キャルをはさんで玲二とアインの感情のさや当てが実に繊細でいい。非常に感情の抑制された三角関係の構図というところでしょうか。
確かにキャルと玲二は肉体関係があった。では玲二とアインは?まあ普通に考えればあって当然だし、ゲーム版では当然あったんでしょう。ところがこのアニメ版ではキャルと玲二のように明確にそれをほのめかすシーンがない。これはどういうことなのか?結構悩むところですね。
玲二がキャルを引きずったまま逃げてしまったので、アインと縒りをうまく戻すことができずにいる、という状況だとしても驚くことではない。まあ、ここまでの演出から見てもそれは十分考えられるわけで。
どうでもいいように感じるかもしれませんが、これは結構結末に響いてくる話ではないかと思うわけで。そのあたりもふくめて後二回、注目です。はぁーだんだんさみしくなってきたなー
2009年09月06日
Phantom第23話「決断」
ああ、もうあと3話なのか。なんだかさびしい。結構ずっしりとした結末が期待できそうで、その点では何も心配してないのですが。
いろいろと登場人物たちについて考えてしまった第23話。リズィ退場の会となったという点でもいろいろと感慨深い。今までの真下ワールドにはあまり登場しそうもないタイプのキャラだった、という点でも特異な一点を築くこととなったキャラだと思います。ゲーム版では、普通の髪の長い女らしいキャラだったんですよね、確か。私も設定を見ただけなので何も言えませんが。これをベリイショートのリアルレズっぽいキャラに仕立てたのはアニメ版の大胆な改変だったわけですが。おかげですごくエッジの立ったいいキャラになったと思います。
キャラが皆記号化せず、一人ひとり血肉を持った存在になるのが、真下演出のいいところ。リズィもまたそうでした。基本的には脇キャラなんですけどね。サイスのように主人公の前に立つ悪役キャラではなく、マグワイアのようにイケメンのカリスマでもない。クロウのように策士として物語を動かしていく器でもない。リズィメインの回というのは一回もなかった。それでも、常に存在感を示し続けていたのはすごい。
とにかく寡黙で職人気質で、決して天才ではないけど、自らの力量をわきまえてベストの結果を出そうとする常識人。
そんな感じかな。エキセントリックなキャラが多いだけに、常識人たるリズィが光るという感じもありました。まあ、それだけに。「甘ちゃん」だからではなく、あまりにも確固たる常識人だったがために、キャルを殺せなかったリズィの気持ちはすごくよく分かる。あまりにも周囲が見えすぎるがゆえの悲劇というか。
最後の最後でリズィの銃に関する短いエピソードが示されて
「…重過ぎるんだよ」
というリズィの言葉がずっしりとこたえる。任侠映画ですなあ。それも、日本のヤクザ映画ではなくて、フレンチノワールの美学。アラン・ドロンの「サムライ」とか思い出した。
しかし、となると、こんなリズィにクロウは撃てたのか。これはなんとも言えないですね。あくまで常識人として、冷静な判断からクロウを処分したかもしれないし、長すぎる腐れ縁的盟友を殺すにはしのびなかったかもしれない。
どうやらこのへんはあいまいに終わりそうですが。それはそれで残念だけど。まあ、何度か繰り返してみながら考え込むことになりそう。
いろいろと登場人物たちについて考えてしまった第23話。リズィ退場の会となったという点でもいろいろと感慨深い。今までの真下ワールドにはあまり登場しそうもないタイプのキャラだった、という点でも特異な一点を築くこととなったキャラだと思います。ゲーム版では、普通の髪の長い女らしいキャラだったんですよね、確か。私も設定を見ただけなので何も言えませんが。これをベリイショートのリアルレズっぽいキャラに仕立てたのはアニメ版の大胆な改変だったわけですが。おかげですごくエッジの立ったいいキャラになったと思います。
キャラが皆記号化せず、一人ひとり血肉を持った存在になるのが、真下演出のいいところ。リズィもまたそうでした。基本的には脇キャラなんですけどね。サイスのように主人公の前に立つ悪役キャラではなく、マグワイアのようにイケメンのカリスマでもない。クロウのように策士として物語を動かしていく器でもない。リズィメインの回というのは一回もなかった。それでも、常に存在感を示し続けていたのはすごい。
とにかく寡黙で職人気質で、決して天才ではないけど、自らの力量をわきまえてベストの結果を出そうとする常識人。
そんな感じかな。エキセントリックなキャラが多いだけに、常識人たるリズィが光るという感じもありました。まあ、それだけに。「甘ちゃん」だからではなく、あまりにも確固たる常識人だったがために、キャルを殺せなかったリズィの気持ちはすごくよく分かる。あまりにも周囲が見えすぎるがゆえの悲劇というか。
最後の最後でリズィの銃に関する短いエピソードが示されて
「…重過ぎるんだよ」
というリズィの言葉がずっしりとこたえる。任侠映画ですなあ。それも、日本のヤクザ映画ではなくて、フレンチノワールの美学。アラン・ドロンの「サムライ」とか思い出した。
しかし、となると、こんなリズィにクロウは撃てたのか。これはなんとも言えないですね。あくまで常識人として、冷静な判断からクロウを処分したかもしれないし、長すぎる腐れ縁的盟友を殺すにはしのびなかったかもしれない。
どうやらこのへんはあいまいに終わりそうですが。それはそれで残念だけど。まあ、何度か繰り返してみながら考え込むことになりそう。
2009年09月01日
Phantom第22話「激昂」
ちょっと仕事が激務で更新が押してます。遅れたうえに少し短くなりますがご容赦を。
まあ、でも作品の方は相変わらず面白く、楽しんでみてます。OPの意味はちょっとずつわかってきた感じでしょうか。なんか少しずつ仮面暗殺者のシーンが長くなってる気がするんだけど、うーん気のせいかなあ。少なくとも能天気なラブコメ日常を破壊する形で侵入してくる殺伐たる世界のイメージですねあれは。確かにアリプロにしてみれば「私らの歌、何?」という感じで、社長じゃなくても「ごめん」と謝るほかないんでしょうけど。
教会の中で銃を突き付けあうアインとキャルのシーンは、結構月並みなんだけど、こういうところでビシッと決めてくるのはさすが真下だなあという感じ。タメ息出た。結構ほれぼれします。
玲二とアインにとっては、仮の世界である能天気ラブコメ学園ものと、任侠的殺戮世界は表裏一体であり、どちらかが偽りとかいうわけではなく、その瞬間その瞬間は真剣にその世界と向き合っているのだろうけど、それはふとしたことですぐに切り替わるものであって。
ラブコメ学園世界にありながら、そのままそこに任侠世界が流れ込んできて、ラブコメしながら命のやり取りをしなければならないという、ある意味喜劇、ある意味不条理な状況が生まれるのは結構興味深い。
おそらくキャルが怒ってるのはそこなんですよね。キャルにとっては、自分の立つべき確固たる現実はひとつのはずなのに、玲二はそれも殺し屋が逃走時に服を捨てるかのようにポイと放ってしまったわけだから。
そういうところがじわじわと見えてくるあたりが見所。クライマックスに向けて重厚さが増しているのは実に期待大。「NOIR」や「エル・カザド」は結末部で大失敗だったからなあ。途中は面白かったのに。今回はうなってしまうような結末、期待してます。まあ、黒田さんだから大丈夫かな。
真下作品で結末がいいのは「MADLAX」「スパイダーライダーズ」とどちらも黒田作品。あ、「砂漠の海賊!キャプテンクッパ」もいいけどね。
まあ、でも作品の方は相変わらず面白く、楽しんでみてます。OPの意味はちょっとずつわかってきた感じでしょうか。なんか少しずつ仮面暗殺者のシーンが長くなってる気がするんだけど、うーん気のせいかなあ。少なくとも能天気なラブコメ日常を破壊する形で侵入してくる殺伐たる世界のイメージですねあれは。確かにアリプロにしてみれば「私らの歌、何?」という感じで、社長じゃなくても「ごめん」と謝るほかないんでしょうけど。
教会の中で銃を突き付けあうアインとキャルのシーンは、結構月並みなんだけど、こういうところでビシッと決めてくるのはさすが真下だなあという感じ。タメ息出た。結構ほれぼれします。
玲二とアインにとっては、仮の世界である能天気ラブコメ学園ものと、任侠的殺戮世界は表裏一体であり、どちらかが偽りとかいうわけではなく、その瞬間その瞬間は真剣にその世界と向き合っているのだろうけど、それはふとしたことですぐに切り替わるものであって。
ラブコメ学園世界にありながら、そのままそこに任侠世界が流れ込んできて、ラブコメしながら命のやり取りをしなければならないという、ある意味喜劇、ある意味不条理な状況が生まれるのは結構興味深い。
おそらくキャルが怒ってるのはそこなんですよね。キャルにとっては、自分の立つべき確固たる現実はひとつのはずなのに、玲二はそれも殺し屋が逃走時に服を捨てるかのようにポイと放ってしまったわけだから。
そういうところがじわじわと見えてくるあたりが見所。クライマックスに向けて重厚さが増しているのは実に期待大。「NOIR」や「エル・カザド」は結末部で大失敗だったからなあ。途中は面白かったのに。今回はうなってしまうような結末、期待してます。まあ、黒田さんだから大丈夫かな。
真下作品で結末がいいのは「MADLAX」「スパイダーライダーズ」とどちらも黒田作品。あ、「砂漠の海賊!キャプテンクッパ」もいいけどね。
2009年08月23日
Phantom第21話「憤怒」
まったくの印象です。確認したわけではないですが…
あれ、OP前回と少し変わってないか?ちょっとずつ不穏な印象が増してるような気がするんですけど、気のせいだろうか。後でもう一回じっくり比較してみないと。
それにしても、空疎なラブコメと陰惨な任侠世界をまったく乖離させずに強引に結び付けて語っていくスタイルには呆然。これが空中分解せずにうまくいっているということに驚くし、なによりもどちらにも寄り添わずに二極が二極として描き分けられているということにも驚く。
普通はガンアクションに寄りすぎるか学園ラブコメに寄り過ぎるかして誰にも楽しめない失敗作となるのがオチなのですが。この作品が破綻しないままここにあるということは原作がまず成功しているということであり、しかもそれを映像に置き換えることに成功しているということでもある。これは本当に驚かされる。
真下の演出力はまあ、言うまでもないのですが、これは相当に声優さんのスキルも要求される。それにしてもいまさらこういうことを言うのは失礼ではありますが、みゆきち嬢のスキルって本当にすげえですな。
個人的には、サイスと玲二の学校の中庭での対決シーンが素晴らしかった。本当に二人とも何をするわけでもなくてしゃべっているだけ、というか玲二はほとんど何もしゃべらずサイスがしゃべっているだけなんだけど、すさまじい緊張感がビシビシと伝わってくる。
しかもバックを黒色とか赤色とかにして心理描写っぽく処理するわけではなく、周囲の光景はあくまでのどかな学校の昼下がりのまま。それでいて「ここでサイスを殺すことはできない」という玲二の憎悪と自制の葛藤は痛いほど伝わってくる。
むろん、サイスはそのあたりをご丁寧に説明してくれるわけだけど、並の演出家がこのシーンをやっても空々しく感じるだけでしょうね。サイスの台詞が状況説明っぽくならず玲二への見事な挑発として緊張感を持った空間を作り出すことに成功している。これは本当に驚き。まさしく真下演出のマジックで、地道なカット割と編集のスキルの積み重ねによって成し遂げられていることは特筆しておいていいでしょう。
それにしても第三部に入ってかなり大胆なサウンドが増えてきました。今までとはかなり雰囲気が違います。「はぁん」なんてあえぎ声が音楽に乗せられたサウンドなんてちょっと聞いたことないぞ。しかもべつにエロいシーンでもないのに(^^;
なんか今回は真下も相当にエロスに対してこだわりがあるようで、DVDためしに第1巻買ってみたらわざわざエロいシーンが描き足してあるわ、ジャケットでは服を着てるアインがインナージャケットでは脱いでるわと一体何事なんでしょうか。でもこれじゃとりあえず買ってみないわけにいかないじゃないか!とりあえず(^^;
あれ、OP前回と少し変わってないか?ちょっとずつ不穏な印象が増してるような気がするんですけど、気のせいだろうか。後でもう一回じっくり比較してみないと。
それにしても、空疎なラブコメと陰惨な任侠世界をまったく乖離させずに強引に結び付けて語っていくスタイルには呆然。これが空中分解せずにうまくいっているということに驚くし、なによりもどちらにも寄り添わずに二極が二極として描き分けられているということにも驚く。
普通はガンアクションに寄りすぎるか学園ラブコメに寄り過ぎるかして誰にも楽しめない失敗作となるのがオチなのですが。この作品が破綻しないままここにあるということは原作がまず成功しているということであり、しかもそれを映像に置き換えることに成功しているということでもある。これは本当に驚かされる。
真下の演出力はまあ、言うまでもないのですが、これは相当に声優さんのスキルも要求される。それにしてもいまさらこういうことを言うのは失礼ではありますが、みゆきち嬢のスキルって本当にすげえですな。
個人的には、サイスと玲二の学校の中庭での対決シーンが素晴らしかった。本当に二人とも何をするわけでもなくてしゃべっているだけ、というか玲二はほとんど何もしゃべらずサイスがしゃべっているだけなんだけど、すさまじい緊張感がビシビシと伝わってくる。
しかもバックを黒色とか赤色とかにして心理描写っぽく処理するわけではなく、周囲の光景はあくまでのどかな学校の昼下がりのまま。それでいて「ここでサイスを殺すことはできない」という玲二の憎悪と自制の葛藤は痛いほど伝わってくる。
むろん、サイスはそのあたりをご丁寧に説明してくれるわけだけど、並の演出家がこのシーンをやっても空々しく感じるだけでしょうね。サイスの台詞が状況説明っぽくならず玲二への見事な挑発として緊張感を持った空間を作り出すことに成功している。これは本当に驚き。まさしく真下演出のマジックで、地道なカット割と編集のスキルの積み重ねによって成し遂げられていることは特筆しておいていいでしょう。
それにしても第三部に入ってかなり大胆なサウンドが増えてきました。今までとはかなり雰囲気が違います。「はぁん」なんてあえぎ声が音楽に乗せられたサウンドなんてちょっと聞いたことないぞ。しかもべつにエロいシーンでもないのに(^^;
なんか今回は真下も相当にエロスに対してこだわりがあるようで、DVDためしに第1巻買ってみたらわざわざエロいシーンが描き足してあるわ、ジャケットでは服を着てるアインがインナージャケットでは脱いでるわと一体何事なんでしょうか。でもこれじゃとりあえず買ってみないわけにいかないじゃないか!とりあえず(^^;
2009年08月16日
Phantom第20話「故郷」
というわけで帰ってきました。今日も行きたかったなあ。
まあそれはさておき。商業ブースで見てきました。新しいOP。帰ってきてから本編見てるんでほとんど意味ないんですが(^^;ああ、なるほど今回からだったのね。OP変更。なんてスピーディな。
なんというかまあ、みなさんもそう思ったと思うんですけど、アリプロの音楽があまりにも映像と合ってないので困惑したというかなんというか。ここまで見事に合っていないというのは社長のアニメを長く見ている一信者としては初めての経験です。
「社長、これは新しい前衛表現かなんかですか?」
と真顔で質問したくなってしまう。もうここまで行くとOPがOPとして機能してないですよね。まったく音と映像が別モノとして別々に流れている。普通なら「この素人め」で済む話ですけど、音声演出に全神経を傾けてきたわれらが社長ですから。何か仕掛けがあるんじゃないかと疑ってしまう。
たとえば途中にはさまっている「いかにもアリプロ」なゴシック映像が今後徐々に増えていって、恋愛ゲー的映像が駆逐されていき、最後にはきちんとしたミュージックビデオとして完成するとか。
もしそうだったらすごい「らしく」て面白いんだけどな。
まあ、実際そんな予感を随所に見せた第三部の幕開け。冒頭から「あれ、チャンネル間違えたか」と思わせるほどコテコテな学園恋愛ゲーめいた展開にしばし呆然となりました。「クラナド」じゃないんだから。ただまあ、こういうタイプの演出は社長は時々やりますよ。自分がカケラも信じてない世界を100%の悪意を込めて演出するというのは。「ツバサ・クロニクル」とか。
今回はらぶらぶ兄妹を演じる玲二とアインが「ただ演じているだけ」というのは視聴者には最初から分かっているわけで、いわば「信頼できない語り手」によって案内される学園ラブコメの世界、ということになれば、熱心にそれらしく世界観をコピーするほどにその「ウソくささ」が浮かび上がってくるという仕掛け。何か懐かしい社長を見ましたよ。さすがにこれは滅多にやらないんだけど。
ただ、今回は原作者が被害者ではなくて共犯者というところがミソ。つまり原作者たちも恋愛ゲーのウソ臭さを理解していたからこういう展開をしたわけで。それを映像としてより鮮明に見せたのが社長の手わざ。相変わらずソツがない。本当、今回も「原作に忠実」なのですね。
ところで…あれがキャル?二年で?いくらなんでも無理があるんでないかい。それを一発で見抜いた玲二は何者なんだ(^^;
ここまで来ると私もボツボツ「ははあ、これはそのままの現実ではないな」とわかってくる。じゃあ、これはいったい何なのか。原作見てないのでそれは分からないけど(^^;結構社長らしい展開がこの先に待っていることになりそうで。楽しみになってきた。
まあそれはさておき。商業ブースで見てきました。新しいOP。帰ってきてから本編見てるんでほとんど意味ないんですが(^^;ああ、なるほど今回からだったのね。OP変更。なんてスピーディな。
なんというかまあ、みなさんもそう思ったと思うんですけど、アリプロの音楽があまりにも映像と合ってないので困惑したというかなんというか。ここまで見事に合っていないというのは社長のアニメを長く見ている一信者としては初めての経験です。
「社長、これは新しい前衛表現かなんかですか?」
と真顔で質問したくなってしまう。もうここまで行くとOPがOPとして機能してないですよね。まったく音と映像が別モノとして別々に流れている。普通なら「この素人め」で済む話ですけど、音声演出に全神経を傾けてきたわれらが社長ですから。何か仕掛けがあるんじゃないかと疑ってしまう。
たとえば途中にはさまっている「いかにもアリプロ」なゴシック映像が今後徐々に増えていって、恋愛ゲー的映像が駆逐されていき、最後にはきちんとしたミュージックビデオとして完成するとか。
もしそうだったらすごい「らしく」て面白いんだけどな。
まあ、実際そんな予感を随所に見せた第三部の幕開け。冒頭から「あれ、チャンネル間違えたか」と思わせるほどコテコテな学園恋愛ゲーめいた展開にしばし呆然となりました。「クラナド」じゃないんだから。ただまあ、こういうタイプの演出は社長は時々やりますよ。自分がカケラも信じてない世界を100%の悪意を込めて演出するというのは。「ツバサ・クロニクル」とか。
今回はらぶらぶ兄妹を演じる玲二とアインが「ただ演じているだけ」というのは視聴者には最初から分かっているわけで、いわば「信頼できない語り手」によって案内される学園ラブコメの世界、ということになれば、熱心にそれらしく世界観をコピーするほどにその「ウソくささ」が浮かび上がってくるという仕掛け。何か懐かしい社長を見ましたよ。さすがにこれは滅多にやらないんだけど。
ただ、今回は原作者が被害者ではなくて共犯者というところがミソ。つまり原作者たちも恋愛ゲーのウソ臭さを理解していたからこういう展開をしたわけで。それを映像としてより鮮明に見せたのが社長の手わざ。相変わらずソツがない。本当、今回も「原作に忠実」なのですね。
ところで…あれがキャル?二年で?いくらなんでも無理があるんでないかい。それを一発で見抜いた玲二は何者なんだ(^^;
ここまで来ると私もボツボツ「ははあ、これはそのままの現実ではないな」とわかってくる。じゃあ、これはいったい何なのか。原作見てないのでそれは分からないけど(^^;結構社長らしい展開がこの先に待っていることになりそうで。楽しみになってきた。
2009年08月09日
Phantom第19話「約束」
また1エピソード終了、ということで総集編…と思いきや、新作画もかなり多いほとんど別ストーリーとなっています。今回はキャル視点で第二エピソードを語り直したもので、もちろん本編と同じカットも多いのですが、微妙に視点が変化しているカットもずいぶんある。きちんとチェックしてみないとわからないのですが、半分強ぐらいは新作カット、という印象でした。
象徴的なのは、今回もっとも重要なエピソードであるシャワーカーテンのシーンで、カメラ配置が真逆になっていること。画面に現れるのは玲二ではなくキャルとなります。このあたり、このエピソードがキャル視点であることを強調したものと言えるでしょう。キャル視点とするためには画面の中にキャルをたくさん出さなければならない。というわけで、多くの画面が描き直されています。
一見当たり前に見えますが、キャル視点になるのですから、先述のシーンではキャルの側から見て玲二が画面に出てくると思いがち。しかしキャルの視界と重ね合わせるようにカメラを配置してもキャルの主観から描いた物語にはなってくれない。これが映画という表現の不思議さです。
これは、私たちが「疑似主観」というべきものを持っていて、外部からカメラアイ的に取り込んだ映像をそのまま利用しているわけではないからかもしれません。つまりバーチャル的にどこか外側から自分自身を見ているような形で情報を処理し、身体感覚を得ているのだそうです。これが、よく言われる「幽体離脱」の正体なのかもしれませんね。
ちょっと話がずれました(^^;
まあともかくも前回も今回もただの話数かせぎ・作画休養用の「総集編」とならず、エピソードを補強し膨らませるものとなっているのがおもしろい。おそらくゲーム版にもあるものなのでしょうが、これって、どういう風になっているんでしょうね。ゲームは基本的に主観視点のものなので、確かに脱落する情報は多い。以前ブレイした「カルタグラ」などは、ある局面で唐突に犯人視点になり、主人公が画面に出てきてしゃべりだすので大変驚いた記憶がありました。おそらくこれもそういう仕掛けがあるんでしょうけど。
なんか予想以上に原作に忠実ってことですね。社長の演出なのにひどく意外なことです。それでいて「NOIR」のリメイクになっていて、真下テイスト満載とはなんという離れ業。最終的にどういう地点に着地することになるか、注目したいところです。もう、残りは4分の1あまりとなっているのですから。
まさかキャルが生きていて、サイスに拾われることになろうとは。サイスなかなかしぶといなーこうなると、やっぱり江原ボイスで聞きたかったという思いがあきらめきれず湧いてきてしまう(^−^;
象徴的なのは、今回もっとも重要なエピソードであるシャワーカーテンのシーンで、カメラ配置が真逆になっていること。画面に現れるのは玲二ではなくキャルとなります。このあたり、このエピソードがキャル視点であることを強調したものと言えるでしょう。キャル視点とするためには画面の中にキャルをたくさん出さなければならない。というわけで、多くの画面が描き直されています。
一見当たり前に見えますが、キャル視点になるのですから、先述のシーンではキャルの側から見て玲二が画面に出てくると思いがち。しかしキャルの視界と重ね合わせるようにカメラを配置してもキャルの主観から描いた物語にはなってくれない。これが映画という表現の不思議さです。
これは、私たちが「疑似主観」というべきものを持っていて、外部からカメラアイ的に取り込んだ映像をそのまま利用しているわけではないからかもしれません。つまりバーチャル的にどこか外側から自分自身を見ているような形で情報を処理し、身体感覚を得ているのだそうです。これが、よく言われる「幽体離脱」の正体なのかもしれませんね。
ちょっと話がずれました(^^;
まあともかくも前回も今回もただの話数かせぎ・作画休養用の「総集編」とならず、エピソードを補強し膨らませるものとなっているのがおもしろい。おそらくゲーム版にもあるものなのでしょうが、これって、どういう風になっているんでしょうね。ゲームは基本的に主観視点のものなので、確かに脱落する情報は多い。以前ブレイした「カルタグラ」などは、ある局面で唐突に犯人視点になり、主人公が画面に出てきてしゃべりだすので大変驚いた記憶がありました。おそらくこれもそういう仕掛けがあるんでしょうけど。
なんか予想以上に原作に忠実ってことですね。社長の演出なのにひどく意外なことです。それでいて「NOIR」のリメイクになっていて、真下テイスト満載とはなんという離れ業。最終的にどういう地点に着地することになるか、注目したいところです。もう、残りは4分の1あまりとなっているのですから。
まさかキャルが生きていて、サイスに拾われることになろうとは。サイスなかなかしぶといなーこうなると、やっぱり江原ボイスで聞きたかったという思いがあきらめきれず湧いてきてしまう(^−^;
2009年08月02日
Phantom第18話「対決」
今回はすばらしく台詞が美しかったです。
…ということは、原作にかなり忠実なんでしょうなあ。「生きる意味」について哲学的な対話を交わすアインと玲二。なんともひとつひとつの言葉が美しく印象的。
美しく詩的な台詞回しなんて真下的じゃございません(^^;
まあ、それでいて真下テイストは全然放棄せず、自分の色もくっきり出しつつも原作にぴったりと寄り添って忠実であり続けるとは、われらが社長もずいぶんと器用になったものです。だってこの作品、原作ファンの評価がすこぶる高いようですからねえ。
しかも18禁ゲームの艶をコードを守りつつ再現してみせるとは、本当にどこまで離れ業なんだろう。アインが玲二の上に乗っかって服を脱ぎだすシーンなんて、普通の演出家がやったら即アウトなんだろうけど、細心の注意を払ってコードに一切抵触しないように作っているんだからとんでもない。しかも、アインが触らせるのは自分の胸じゃなくて、かつて玲二が弾をえぐったナイフの傷跡だというのだからなんともはや、壮絶にエロい。
いや、まあ原作もそうなんだろうけど(笑)最初から看板上げてる18禁ゲームと基本的にやってはいけない地上波テレビアニメではそもそもの環境が違う。そこで期待される以上のことを約束事を破らずにやってしまうというのは、やっぱりとんでもない。
今回はリズィとクロウの関係も、なんだか限りなくミレ霧コンビっぽかったですね。海岸を笑顔で駆けて行くクロウの後ろから鎮痛な表情で追いかけてくるリズィという構図はなんとも真下的。吹っ切れた霧香対未練タラタラ撃ちたくない気たっぷりのミレイユ、の構図。ていうか、この海岸、どうみても「NOIR」のEDなんですけど(^^;
♪あの雲の真下へ〜届いて〜
ああ、もう何をやってるんだ、オレは(−−;
それはさておき、まあこの作品では主要キャラの皆さんが死にそうでなかなか死なないようなので、まあクロウも死んでないのかなあと。銃声聞こえなかったしそのくせ出てくるリズィの墓参りシーンはどうにもわざとらしい。
まあ、その意味ではキャルもまた。いや…いくらなんでもまさかこんな幕切れ?とか半信半疑だったのですけど、最終シーンの「雨に打たれる時計」のカットを見て「ああ、やっぱりキャルは死んだのか」と思わざるを得ませんでした。あれはそういう描き方ですよねえ。
…って思っていたら、予告でいきなり
「…どうしていなくなったの?」
って、いなくなったのは君の方や!(^^;
…ということは、原作にかなり忠実なんでしょうなあ。「生きる意味」について哲学的な対話を交わすアインと玲二。なんともひとつひとつの言葉が美しく印象的。
美しく詩的な台詞回しなんて真下的じゃございません(^^;
まあ、それでいて真下テイストは全然放棄せず、自分の色もくっきり出しつつも原作にぴったりと寄り添って忠実であり続けるとは、われらが社長もずいぶんと器用になったものです。だってこの作品、原作ファンの評価がすこぶる高いようですからねえ。
しかも18禁ゲームの艶をコードを守りつつ再現してみせるとは、本当にどこまで離れ業なんだろう。アインが玲二の上に乗っかって服を脱ぎだすシーンなんて、普通の演出家がやったら即アウトなんだろうけど、細心の注意を払ってコードに一切抵触しないように作っているんだからとんでもない。しかも、アインが触らせるのは自分の胸じゃなくて、かつて玲二が弾をえぐったナイフの傷跡だというのだからなんともはや、壮絶にエロい。
いや、まあ原作もそうなんだろうけど(笑)最初から看板上げてる18禁ゲームと基本的にやってはいけない地上波テレビアニメではそもそもの環境が違う。そこで期待される以上のことを約束事を破らずにやってしまうというのは、やっぱりとんでもない。
今回はリズィとクロウの関係も、なんだか限りなくミレ霧コンビっぽかったですね。海岸を笑顔で駆けて行くクロウの後ろから鎮痛な表情で追いかけてくるリズィという構図はなんとも真下的。吹っ切れた霧香対未練タラタラ撃ちたくない気たっぷりのミレイユ、の構図。ていうか、この海岸、どうみても「NOIR」のEDなんですけど(^^;
♪あの雲の真下へ〜届いて〜
ああ、もう何をやってるんだ、オレは(−−;
それはさておき、まあこの作品では主要キャラの皆さんが死にそうでなかなか死なないようなので、まあクロウも死んでないのかなあと。銃声聞こえなかったしそのくせ出てくるリズィの墓参りシーンはどうにもわざとらしい。
まあ、その意味ではキャルもまた。いや…いくらなんでもまさかこんな幕切れ?とか半信半疑だったのですけど、最終シーンの「雨に打たれる時計」のカットを見て「ああ、やっぱりキャルは死んだのか」と思わざるを得ませんでした。あれはそういう描き方ですよねえ。
…って思っていたら、予告でいきなり
「…どうしていなくなったの?」
って、いなくなったのは君の方や!(^^;
2009年07月27日
Phantom第17話「真相」
先週に続いて、印象的なBGM演出が目立ったエピソード。いいですねえ、やっぱりこういう真下印な演出スタイルは。何よりもかっちょいい。特に、梧桐に呼び出された操車場のシーンがすばらしい。
梧桐からクロウの策略を聞かされて呆然としているところにアインが銃撃してくる。銃撃戦の末に貨車に飛び乗った玲二は、貨車の屋根の上でアインに再会。「逃げなさい」という言葉だけを置き土産に、アインの乗った車両だけが切り離されて遠ざかっていく…
印象的な七瀬光の音楽もあって、非常に強く心に残るシーンとなりました。確かにライフルで撃たれた程度で貨物車の連結が外れるのか、そもそもなぜ貨車は走り出したのか、ましてや走り出した貨車が都合よく途中で連結が外れるとはどういうことだ…とツッコミだしたらキリがないのですが、そんなことは真下自身百も承知。シーンの印象を高めるためならリアリズムなんてかなぐり捨てるのが真下演出。
こういうシーンは「ああ、映画だなあ」と思います。近代映画はどんどんリアリズムを高める方向に進化してきてしまったけど、そうでない表現も確かにあったはず。確かにリアルな方が「本当らしく」見えるわけですから説得力が増したように錯覚しがちなのですが、一見リアルに見える表現は現実と大きく食い違っているというのもよくあること。映像の美しさがリアリティと相反することなんてもっとざらでしょうが、そこで美しい構図を「ありえない」と放棄してしまうのは絶対にもったいない。
特に今回のように錯綜した陰謀劇が解き明かされていくシーンでは幻想的な迷宮感を増幅し、実に効果的なクライマックスといえるのではないでしょうか。本当、これだけ大量の人物が登場していながら一方的にハメられる愚か者が一人もおらずお互いに相手をだしぬこうとしのぎを削り合っているのだからすさまじい。まあ、ほぼ全員が悪党なのですから、それも当然か。ほぼ唯一「無」である主人公のみがその中央で立ちすくむ姿が一層浮かび上がることとなります。それは同時にわれわれ視聴者の立ち位置でもあり…まあ原作がゲームなんだから当然なのだけど。ほとんど原作の痕跡をまったく感じさせず、完全に映像表現に移し替えてみせるのがわれらが社長の手わざの見事さということでしょうか
。ぎこちなくもとの活字メディアの痕跡を見せてしまう親房氏とはそのあたりさすがに比べ物にならない。いくら親房氏が真下にあこがれたとしてもね。
今回は今までのストイックな音楽演出の借りを返すかのように、これでもかと印象的なBGMが次々と登場します。玲二が立ち去った後、梧桐が志賀に射殺されるシーンで叙情的なオルゴールサウンドが鳴る不思議さも、いかにもな「真下演出」といえます。あの「兄弟舟」のズッコケぶりに比べればはるかにちゃんとうまくいってます。実際には描かれることのなかった志賀と梧桐の仁侠映画的な活躍の数々が断片的なカットの積み重ねでありありと眼前に広がってくるのがすばらしい。まさかたったあれだけの尺数で。なんだか勝新の「兵隊やくざ」を思い出してしまいましたよ。いや、あれはやくざ映画じゃないけど(^^;志賀はイメージが若すぎると原作ファンには不評のようですが、イメージとしては「企業舎弟」な雰囲気なんではないかな。アニメ独自のいいキャラクターになっていると私は気に入っています。
さて、そんな騒乱の中、唐突に爆破される玲二とキャルの隠れ家。結構呆然の結末でびっくりしました。次回、どう収拾をつけるか、要注目です。
梧桐からクロウの策略を聞かされて呆然としているところにアインが銃撃してくる。銃撃戦の末に貨車に飛び乗った玲二は、貨車の屋根の上でアインに再会。「逃げなさい」という言葉だけを置き土産に、アインの乗った車両だけが切り離されて遠ざかっていく…
印象的な七瀬光の音楽もあって、非常に強く心に残るシーンとなりました。確かにライフルで撃たれた程度で貨物車の連結が外れるのか、そもそもなぜ貨車は走り出したのか、ましてや走り出した貨車が都合よく途中で連結が外れるとはどういうことだ…とツッコミだしたらキリがないのですが、そんなことは真下自身百も承知。シーンの印象を高めるためならリアリズムなんてかなぐり捨てるのが真下演出。
こういうシーンは「ああ、映画だなあ」と思います。近代映画はどんどんリアリズムを高める方向に進化してきてしまったけど、そうでない表現も確かにあったはず。確かにリアルな方が「本当らしく」見えるわけですから説得力が増したように錯覚しがちなのですが、一見リアルに見える表現は現実と大きく食い違っているというのもよくあること。映像の美しさがリアリティと相反することなんてもっとざらでしょうが、そこで美しい構図を「ありえない」と放棄してしまうのは絶対にもったいない。
特に今回のように錯綜した陰謀劇が解き明かされていくシーンでは幻想的な迷宮感を増幅し、実に効果的なクライマックスといえるのではないでしょうか。本当、これだけ大量の人物が登場していながら一方的にハメられる愚か者が一人もおらずお互いに相手をだしぬこうとしのぎを削り合っているのだからすさまじい。まあ、ほぼ全員が悪党なのですから、それも当然か。ほぼ唯一「無」である主人公のみがその中央で立ちすくむ姿が一層浮かび上がることとなります。それは同時にわれわれ視聴者の立ち位置でもあり…まあ原作がゲームなんだから当然なのだけど。ほとんど原作の痕跡をまったく感じさせず、完全に映像表現に移し替えてみせるのがわれらが社長の手わざの見事さということでしょうか
。ぎこちなくもとの活字メディアの痕跡を見せてしまう親房氏とはそのあたりさすがに比べ物にならない。いくら親房氏が真下にあこがれたとしてもね。
今回は今までのストイックな音楽演出の借りを返すかのように、これでもかと印象的なBGMが次々と登場します。玲二が立ち去った後、梧桐が志賀に射殺されるシーンで叙情的なオルゴールサウンドが鳴る不思議さも、いかにもな「真下演出」といえます。あの「兄弟舟」のズッコケぶりに比べればはるかにちゃんとうまくいってます。実際には描かれることのなかった志賀と梧桐の仁侠映画的な活躍の数々が断片的なカットの積み重ねでありありと眼前に広がってくるのがすばらしい。まさかたったあれだけの尺数で。なんだか勝新の「兵隊やくざ」を思い出してしまいましたよ。いや、あれはやくざ映画じゃないけど(^^;志賀はイメージが若すぎると原作ファンには不評のようですが、イメージとしては「企業舎弟」な雰囲気なんではないかな。アニメ独自のいいキャラクターになっていると私は気に入っています。
さて、そんな騒乱の中、唐突に爆破される玲二とキャルの隠れ家。結構呆然の結末でびっくりしました。次回、どう収拾をつけるか、要注目です。
2009年07月19日
Phantom第16話「告白」
なんかもう、「描かずして描く」真下演出の自在さにうっとりですよ。本当、ここまでされると、放送コードなんて事実上無意味だなあと非常に痛快。こうして出来上がってきたものを見ていると、あからさまに描く方が無粋に感じてしまうのですから面白いものです。
まあ、露骨なヲタク好み性描写がテレビアニメでも氾濫してくるようになって、さすがに希少価値も薄れたし。真下は常に時代の先を行ってるんだなあとしみじみ実感。なんせ、「イートマン」のときはあからさまなベッドシーンがあって、これが「深夜っぽさ」を強調するインパクトがあったものでしたが。「Nice Boat」以降はショッキングな方向に描写するのはもはや無意味となってしまいました。まあ、テレビ局の警戒レベルも上がりましたから、事実上できなくなってしまったわけですけどね。本当にどうしてもやりたければいまやCSもネットもありますし。
個人的にはむしろ、制約があった方が表現の幅が広がると感じることが多い昨今です。まあ「無限の住人」なんてリミッター全解除な作品も作ってますけど、それはそれで意味のあるものにしているのが真下のさすがなところ。
今回は原作が18禁アダルトゲームとはいえ、エロだけが売りではないのですから、その部分を外した内容でも誰も文句は言わなかったはず。しかし、放送コードが厳しいテレビ東京系でここまで官能を感じさせるというのには驚かされます。
今回なんて。えーとキャルはいくつなんだっけ(^^;まあそういう、ヘタをすると極めてヤバい展開を空っとぼけて、でもきちんと見ているとあの「白味」の時間に何があったのかを強く示唆する演出が施されている。
今回の性的な記号の排除は実に徹底していて、ベッドの中で二人で横たわっているシーンすらない。しかし、このシーンの編集をたどっていくと、
裸でうずくまってシャワーをあびるキャル→バスタブの外から話しかける玲二→立ち上がるキャル→笑顔でシャワーカーテンを引き開ける玲二→白味→眠るキャルの横でベッドに腰掛ける玲二。ちなみに二人とも着衣。
あくまでもうろおぼえです。細かい部分でツッコミは入れないように。深夜にアニメ見るのもブログ書くのもうちの家族がうるさいんだから。確認のために見返してる時間なんてないよ(^^;
ともかくも、性的な描写はこれっぽっちもないのに、二人の間に何かがあったことは明確にわかるし、その後の微妙な受け答えの変化にすごくドキッとさせられる。そうか、必ずしも性的な暗喩は必要ないんだな。これだけでここまで描けることに本当に驚かされるし、ただの白味が非常にエロく感じられることなんてびっくりするほかない。さすが社長、一味違うことをやってくるね、というほかありません。
そしてストーリーはさらに進み、次回、アインとの再対決。ある意味「NOIR」での「荘園の修羅場(笑)」のリメイクとなるかもですね。どのような仕掛けを施してくるか、楽しみです。
まあ、露骨なヲタク好み性描写がテレビアニメでも氾濫してくるようになって、さすがに希少価値も薄れたし。真下は常に時代の先を行ってるんだなあとしみじみ実感。なんせ、「イートマン」のときはあからさまなベッドシーンがあって、これが「深夜っぽさ」を強調するインパクトがあったものでしたが。「Nice Boat」以降はショッキングな方向に描写するのはもはや無意味となってしまいました。まあ、テレビ局の警戒レベルも上がりましたから、事実上できなくなってしまったわけですけどね。本当にどうしてもやりたければいまやCSもネットもありますし。
個人的にはむしろ、制約があった方が表現の幅が広がると感じることが多い昨今です。まあ「無限の住人」なんてリミッター全解除な作品も作ってますけど、それはそれで意味のあるものにしているのが真下のさすがなところ。
今回は原作が18禁アダルトゲームとはいえ、エロだけが売りではないのですから、その部分を外した内容でも誰も文句は言わなかったはず。しかし、放送コードが厳しいテレビ東京系でここまで官能を感じさせるというのには驚かされます。
今回なんて。えーとキャルはいくつなんだっけ(^^;まあそういう、ヘタをすると極めてヤバい展開を空っとぼけて、でもきちんと見ているとあの「白味」の時間に何があったのかを強く示唆する演出が施されている。
今回の性的な記号の排除は実に徹底していて、ベッドの中で二人で横たわっているシーンすらない。しかし、このシーンの編集をたどっていくと、
裸でうずくまってシャワーをあびるキャル→バスタブの外から話しかける玲二→立ち上がるキャル→笑顔でシャワーカーテンを引き開ける玲二→白味→眠るキャルの横でベッドに腰掛ける玲二。ちなみに二人とも着衣。
あくまでもうろおぼえです。細かい部分でツッコミは入れないように。深夜にアニメ見るのもブログ書くのもうちの家族がうるさいんだから。確認のために見返してる時間なんてないよ(^^;
ともかくも、性的な描写はこれっぽっちもないのに、二人の間に何かがあったことは明確にわかるし、その後の微妙な受け答えの変化にすごくドキッとさせられる。そうか、必ずしも性的な暗喩は必要ないんだな。これだけでここまで描けることに本当に驚かされるし、ただの白味が非常にエロく感じられることなんてびっくりするほかない。さすが社長、一味違うことをやってくるね、というほかありません。
そしてストーリーはさらに進み、次回、アインとの再対決。ある意味「NOIR」での「荘園の修羅場(笑)」のリメイクとなるかもですね。どのような仕掛けを施してくるか、楽しみです。
2009年07月12日
Phantom第15話「再会」
いったん消えたアインがふたたび主人公の前へ登場。実にドラマチックな瞬間です。とはいえ、ドラマチックな再会は過去に語りつくされているところもあり、陳腐にならないようにどう描くべきかは頭を絞るほかない部分。かなりの難題と言えます。まあ、世の大半の作品は、陳腐かどうかなんて、カケラも気にしている気配はないんですけどね(^^;それをあえて自らに縛りをかけて挑む真下。さすが前衛派職人。
むろん、プロットの立て方として頭をひねる部分もあり、そこは黒田チームの担当領域なのですが。黒田+真下コンビはそのあたりの役割分担が本当にきちっとできていて、「社長ならこう演出してくるだろう」という目安を立てた上で黒田氏が脚本を執筆し、その期待の微妙に斜め上を横切るような形で(笑)真下が演出を施す。このあたりのチームワークの良さは本当にさすが。「MADLAX」「スパイダーライダーズ」を手がけたチームだけのことはあるわ。本当に信頼関係ができているんですね。真下一家は結束が固い。
今回ならば前回のエピソードでチラッとだけすれ違わせておいて、今回は直接顔を合わせないままに再会を確信させるという手の込んだつくりはさすがの黒田節。
それに対して、前回ははっきりとアインの顔を見せず、今回は(直接会わないにもかかわらず)視聴者にははっきりとアインの顔を見せる、というトリッキーな演出はいかにも真下らしいといえましょう。さらに言うなら、給水塔の裏に隠れた狙撃主の正体がつかめず苛立った玲二が立ち上がってわざわざ相手の的になるような愚かなまねをする、という一連の流れは、真下ならではの挑発的な演出ではないかと推理するんですけどいかが。原作のゲームにまったく同じシーンがあったら笑うけどね(^^;
でもまあ、このあたりの一連の流れ、実に真下っぽいなあ。そしていったんは「アインじゃない」と玲二にいったんホッとさせておいて、「もう一人狙撃手がいた」と驚く展開は「見えないものを見ようとする→見えなかったものから見えてしまう」というかなり哲学的ともいえる二重のアイロニーすら読み取れたり…とまあここまで来るとやや深読みですが。まあとはいえ、真下なら当然考えるであろうトリッキーな演出。ストーリーを知らないぶん、しっかり驚かされ、倍お得な気分が楽しめました。
まあ、そうした構成のせいか、ずっとストイックな効果音的な使われ方をしてきたBGMは今回ばかりは前面に出て朗々と梶浦チックに流れていました。こういうシーン見ると「ここだけでも梶浦サウンドで聞きたい」とか思うんですけどね(^^;
あ、もちろんでも七瀬サウンドもいいですよ。ちょっと「兄弟舟」シーンはいただけないが(笑)初めてですよ!真下サントラ演出にスッこける事態となったのは。いくらなんでも冒険しすぎだ(^^;
むろん、プロットの立て方として頭をひねる部分もあり、そこは黒田チームの担当領域なのですが。黒田+真下コンビはそのあたりの役割分担が本当にきちっとできていて、「社長ならこう演出してくるだろう」という目安を立てた上で黒田氏が脚本を執筆し、その期待の微妙に斜め上を横切るような形で(笑)真下が演出を施す。このあたりのチームワークの良さは本当にさすが。「MADLAX」「スパイダーライダーズ」を手がけたチームだけのことはあるわ。本当に信頼関係ができているんですね。真下一家は結束が固い。
今回ならば前回のエピソードでチラッとだけすれ違わせておいて、今回は直接顔を合わせないままに再会を確信させるという手の込んだつくりはさすがの黒田節。
それに対して、前回ははっきりとアインの顔を見せず、今回は(直接会わないにもかかわらず)視聴者にははっきりとアインの顔を見せる、というトリッキーな演出はいかにも真下らしいといえましょう。さらに言うなら、給水塔の裏に隠れた狙撃主の正体がつかめず苛立った玲二が立ち上がってわざわざ相手の的になるような愚かなまねをする、という一連の流れは、真下ならではの挑発的な演出ではないかと推理するんですけどいかが。原作のゲームにまったく同じシーンがあったら笑うけどね(^^;
でもまあ、このあたりの一連の流れ、実に真下っぽいなあ。そしていったんは「アインじゃない」と玲二にいったんホッとさせておいて、「もう一人狙撃手がいた」と驚く展開は「見えないものを見ようとする→見えなかったものから見えてしまう」というかなり哲学的ともいえる二重のアイロニーすら読み取れたり…とまあここまで来るとやや深読みですが。まあとはいえ、真下なら当然考えるであろうトリッキーな演出。ストーリーを知らないぶん、しっかり驚かされ、倍お得な気分が楽しめました。
まあ、そうした構成のせいか、ずっとストイックな効果音的な使われ方をしてきたBGMは今回ばかりは前面に出て朗々と梶浦チックに流れていました。こういうシーン見ると「ここだけでも梶浦サウンドで聞きたい」とか思うんですけどね(^^;
あ、もちろんでも七瀬サウンドもいいですよ。ちょっと「兄弟舟」シーンはいただけないが(笑)初めてですよ!真下サントラ演出にスッこける事態となったのは。いくらなんでも冒険しすぎだ(^^;
2009年07月04日
Phantom第14話「監視」
結局のところ、以前よりも整合性は取られつつあるようにも見えても、やはり真下を小ざかしい豆知識でわかったような気になるのは浅はかだったとつくづく反省。
先週のコメント欄で延々とキャルの現ナマ入りカバンの重さについて論議したわけですが、その結果わかったのは、こういうトリビアは真下にはまったく無効だということ。なんか理屈突きつけて合ってる合ってないと言って讃えてみたり見下したりするのは、ことこの演出家には見当はずれなアプローチってことでしょう。
今回は比較的リアリズムな演出かと誤解していたので、私も回り道をしてしまいましたが、そのあたりの「アンチリアル」という信念は微塵も揺らいでいないということ。
実際、アニメにおける作画方法では、「重さ」が重視されるわけですし。重いものは「何キロぐらいか」ということをあらかじめ確定させてから動きをつける。だから、札束の重さもあらかじめ決めたはずで、当然考えてみればわれわれが論議したことはすでに周知のはず。つまり、それらのことを承知の上で、現実にはあり得ない光景を作り出したことになります。
それはまさしく真下的なアンチリアルな演出形式で、絵による表現の虚構性を自覚した表現であるということになります。絵としての美しさ、勢いのよさを優先させ、正しさは二の次とする。つまり、瑣末なトリビアで「リアルじゃない」と言ったところで真下の演出は微塵も揺らがないということ。今回は私が揺らいでしまった(^^;何か真下に変化があるような気がしたので。そうではなかったんですね。
それはさておき。今回も緊張感のあるよい展開だったと思います。キャルが映画ヲタクだったからといってたまたま銃の天才だったなんて話は到底ありえないことだけど、あの虚無的な眼と雰囲気、そして細かい動作と会話の細かい組み合わせ、間合いの取り方などをコントロールしていくことで、強引にでも説得力を持たせてしまうことは可能なのだなと感服させられました。いや、これが本当の「演出」の醍醐味なのですよね。さすが社長!
キャルが「やだ!当たった!」とか言いながらも煉瓦を次々撃ち砕いていくシーンは一種カタルシスすら感じましたよ。でも、それも、まったく出鱈目に撃っても当たる、という無茶苦茶をやっているわけではなくて、玲二がある程度コツを伝授することでスッとそれを習得してみせるという過程を見せているからこそ可能になるわけですよね。このあたりが、真下の現在の着地点ということでしょうか。
まあ、キャルがどのように「仕事」をこなすかは次回のお楽しみ。それよりか、キャルと玲二が服を買いに行ったときの台詞の方がシャレになってない。どの服を選んでいいかわからないと困惑するキャルに「一生に一度の買い物じゃあるまいしもう一度来ればいい」と玲二は言うわけですが(^^;彼女選ぶときにはその台詞は言えまい。ギャルゲーでそれを言ったらギャグ意外の何物でもないわけで、「School days」なんてそのために大惨事になってしまった(^^;
原作がエロであることをたいていのアニメは忘れよう忘れようとしていますが、ここまで放送規定の範囲内でドキッとするような表現を見せてくれる本作品は本当にすごい。今回も平然と桐藤と寝てしまうクロウが出てきます。こうしたことをコードに触れずに表現してみせる真下。さすが社長!「無限の住人」を通過したのは無駄ではなかったのですね。こういう驚きがあるから、本当に真下信者はやめられない。
先週のコメント欄で延々とキャルの現ナマ入りカバンの重さについて論議したわけですが、その結果わかったのは、こういうトリビアは真下にはまったく無効だということ。なんか理屈突きつけて合ってる合ってないと言って讃えてみたり見下したりするのは、ことこの演出家には見当はずれなアプローチってことでしょう。
今回は比較的リアリズムな演出かと誤解していたので、私も回り道をしてしまいましたが、そのあたりの「アンチリアル」という信念は微塵も揺らいでいないということ。
実際、アニメにおける作画方法では、「重さ」が重視されるわけですし。重いものは「何キロぐらいか」ということをあらかじめ確定させてから動きをつける。だから、札束の重さもあらかじめ決めたはずで、当然考えてみればわれわれが論議したことはすでに周知のはず。つまり、それらのことを承知の上で、現実にはあり得ない光景を作り出したことになります。
それはまさしく真下的なアンチリアルな演出形式で、絵による表現の虚構性を自覚した表現であるということになります。絵としての美しさ、勢いのよさを優先させ、正しさは二の次とする。つまり、瑣末なトリビアで「リアルじゃない」と言ったところで真下の演出は微塵も揺らがないということ。今回は私が揺らいでしまった(^^;何か真下に変化があるような気がしたので。そうではなかったんですね。
それはさておき。今回も緊張感のあるよい展開だったと思います。キャルが映画ヲタクだったからといってたまたま銃の天才だったなんて話は到底ありえないことだけど、あの虚無的な眼と雰囲気、そして細かい動作と会話の細かい組み合わせ、間合いの取り方などをコントロールしていくことで、強引にでも説得力を持たせてしまうことは可能なのだなと感服させられました。いや、これが本当の「演出」の醍醐味なのですよね。さすが社長!
キャルが「やだ!当たった!」とか言いながらも煉瓦を次々撃ち砕いていくシーンは一種カタルシスすら感じましたよ。でも、それも、まったく出鱈目に撃っても当たる、という無茶苦茶をやっているわけではなくて、玲二がある程度コツを伝授することでスッとそれを習得してみせるという過程を見せているからこそ可能になるわけですよね。このあたりが、真下の現在の着地点ということでしょうか。
まあ、キャルがどのように「仕事」をこなすかは次回のお楽しみ。それよりか、キャルと玲二が服を買いに行ったときの台詞の方がシャレになってない。どの服を選んでいいかわからないと困惑するキャルに「一生に一度の買い物じゃあるまいしもう一度来ればいい」と玲二は言うわけですが(^^;彼女選ぶときにはその台詞は言えまい。ギャルゲーでそれを言ったらギャグ意外の何物でもないわけで、「School days」なんてそのために大惨事になってしまった(^^;
原作がエロであることをたいていのアニメは忘れよう忘れようとしていますが、ここまで放送規定の範囲内でドキッとするような表現を見せてくれる本作品は本当にすごい。今回も平然と桐藤と寝てしまうクロウが出てきます。こうしたことをコードに触れずに表現してみせる真下。さすが社長!「無限の住人」を通過したのは無駄ではなかったのですね。こういう驚きがあるから、本当に真下信者はやめられない。
2009年06月29日
Phantom第13話「偽装」
今回はマジで見ごたえありましたねーそれにしても原作を知らないとひとつひとつのエピソードがすごく斬新に思えてなんか得した気分(笑)原作を知っている人にとってはどうなんだろう。アマゾンのDVD評とか見ていると意外と原作ファンにも好評なようで、賛否まっぷたつの(しかも否の方がやや多い)ことが多かった近年の真下作品の中ではかなり珍しい幸運な作品となりました。ありがたいことです。
今回は、なんだか人生を達観したかのようなキャルの「老いた」眼が印象的でした。後から思えばそれが伏線になっていたのね。おそるべし真下。
もちろん今回のストーリーは原作にあるエピソードなんだろうけど、結構驚きました。まさか追い詰められた玲二がでまかせで「キャルを殺し屋にする」と言い出すんだとはね。ストーリーを知ってしまっている原作派のみなさんはやや残念な思いをすることも多いようで、そのあたり、忠実な原作付きアニメというのは完成度が高いほどに難しいですね。真下信者としてはやはり真下版をマスターピースに仕立ててしまいたいところですが(^^;
それはさておき今回。まあ普通は転がり込んできた少女の方が弟子入り志願するものですよね。大元の「ペーパームーン」しかり、近年でも(あまり好みではないけど)「レオン」しかり。主人公が少女をやむを得ず修羅の道に引き込むことになろうとは。
このあたりのシリアスなストーリーを支える表現として、真下の乾いたタッチからは、願望充足的なテンプレート表現とは一線を画した演出が感じられます。
主人公の前に山ほどハンバーガー積み上げて食う少女、というのは割りとありふれた光景(笑)ですが、普通はこれを全部ペロッと食ってしまうのですよね。アニメならではの誇張表現として。ところが、この作品の場合はそうではない。実際には大して食べられず「お持ち帰り」して、玲二の隠れ家の冷蔵庫に入れていくところまでがきちんと描かれる。こういう表現は割とありそうで見たことがない。これまで虚構性の高い演出を得意としてきた真下としても珍しいことで、ここでキャルの「精神的に飢えている」一面が描かれたとも言えます。
キャルはこうしてみるとかなり難しい役柄で、みゆきち嬢が抜擢されたのも納得の展開です。さて次回、キャルがどのような形で銃を手にとることになるのか、それを真下はどのように描いていくことになるのか。これまた注目となりそうです。
今回は、なんだか人生を達観したかのようなキャルの「老いた」眼が印象的でした。後から思えばそれが伏線になっていたのね。おそるべし真下。
もちろん今回のストーリーは原作にあるエピソードなんだろうけど、結構驚きました。まさか追い詰められた玲二がでまかせで「キャルを殺し屋にする」と言い出すんだとはね。ストーリーを知ってしまっている原作派のみなさんはやや残念な思いをすることも多いようで、そのあたり、忠実な原作付きアニメというのは完成度が高いほどに難しいですね。真下信者としてはやはり真下版をマスターピースに仕立ててしまいたいところですが(^^;
それはさておき今回。まあ普通は転がり込んできた少女の方が弟子入り志願するものですよね。大元の「ペーパームーン」しかり、近年でも(あまり好みではないけど)「レオン」しかり。主人公が少女をやむを得ず修羅の道に引き込むことになろうとは。
このあたりのシリアスなストーリーを支える表現として、真下の乾いたタッチからは、願望充足的なテンプレート表現とは一線を画した演出が感じられます。
主人公の前に山ほどハンバーガー積み上げて食う少女、というのは割りとありふれた光景(笑)ですが、普通はこれを全部ペロッと食ってしまうのですよね。アニメならではの誇張表現として。ところが、この作品の場合はそうではない。実際には大して食べられず「お持ち帰り」して、玲二の隠れ家の冷蔵庫に入れていくところまでがきちんと描かれる。こういう表現は割とありそうで見たことがない。これまで虚構性の高い演出を得意としてきた真下としても珍しいことで、ここでキャルの「精神的に飢えている」一面が描かれたとも言えます。
キャルはこうしてみるとかなり難しい役柄で、みゆきち嬢が抜擢されたのも納得の展開です。さて次回、キャルがどのような形で銃を手にとることになるのか、それを真下はどのように描いていくことになるのか。これまた注目となりそうです。
2009年06月22日
Phantom第12話「亡霊」
ここから第2部、すっかり顔つきの変わった主人公でしたが、OPは相変わらずもとのままで、どういうことなのか社長の見解をうかがいたいところ。まあ、そのうちに仕掛けが見えてくるんだとは思うが。
なんかますますヤクザ映画度に磨きがかかってきて、刹那的に体を求め合う玲二とクロウとか、確かに放送コードには触れてないけどドキッとするシーンが出てきているのは興味深い限り。いや、確かに実写ではありふれたシーンですけど、アニメでやられると本当にドキッとするな。通常のヲタク向けアニメがいかに書き割り的なセクシャル表現に堕しているかということでもあります。本当、このようにまったく放送コードに触れなくても、強烈な官能を感じさせるほうがよっぽどすごい。もっとも、玲二もクロウも心ここにあらずで、個人的にはその後自室に戻った後に床に倒れる玲二を無音でとらえるシーンの方が印象的だったりするのですが。いや、正確に言うとまったくの無音ではなくかすかに「サー」というホワイトノイズが流れている。これが逆に静寂感を強調する仕掛けで、今回のノイズ音に重点を置いた真下演出の真骨頂と言えましょう。
そもそも冒頭のオペラシーンにスタイリッシュかつこれみよがしな暗殺シーンがありますが、これも「ゴッドファーザー」か「アンタッチャブル」を思わせる展開。こういうのは本来の意味の暗殺ではないのですが、映画的なパッションの発露としてうまく織り込むと生きるスタイルではあります。まあ、そもそもこういうのが真下演出ですしね。
ただ今回は、追手から逃げるシーンも入れたりして多少なりともリアリズムにも心を砕いているのが新しいかも。それでも映像のスピード感が失われない自信がついたということですかね。さて、ここからどう変化していくか要注目です。
そして物語はキャルとの邂逅へ。ここでいきなり物語のトーンが変わらなければいいなあと思っていたんですが、さすがうまいですね。なんだか「ペーパームーン」みたいだ。いや、それはヤクザ映画ではないけれど(^^;
それにしても、今回は霧香…いや違ったアインが登場せず。次回以降どうなるのか。しょんぼりとしおれて霧香の消えた穴を埋められない玲二がえらくミレイユっぽく見えてきました(^^;。さあどう出る霧香。
なんかますますヤクザ映画度に磨きがかかってきて、刹那的に体を求め合う玲二とクロウとか、確かに放送コードには触れてないけどドキッとするシーンが出てきているのは興味深い限り。いや、確かに実写ではありふれたシーンですけど、アニメでやられると本当にドキッとするな。通常のヲタク向けアニメがいかに書き割り的なセクシャル表現に堕しているかということでもあります。本当、このようにまったく放送コードに触れなくても、強烈な官能を感じさせるほうがよっぽどすごい。もっとも、玲二もクロウも心ここにあらずで、個人的にはその後自室に戻った後に床に倒れる玲二を無音でとらえるシーンの方が印象的だったりするのですが。いや、正確に言うとまったくの無音ではなくかすかに「サー」というホワイトノイズが流れている。これが逆に静寂感を強調する仕掛けで、今回のノイズ音に重点を置いた真下演出の真骨頂と言えましょう。
そもそも冒頭のオペラシーンにスタイリッシュかつこれみよがしな暗殺シーンがありますが、これも「ゴッドファーザー」か「アンタッチャブル」を思わせる展開。こういうのは本来の意味の暗殺ではないのですが、映画的なパッションの発露としてうまく織り込むと生きるスタイルではあります。まあ、そもそもこういうのが真下演出ですしね。
ただ今回は、追手から逃げるシーンも入れたりして多少なりともリアリズムにも心を砕いているのが新しいかも。それでも映像のスピード感が失われない自信がついたということですかね。さて、ここからどう変化していくか要注目です。
そして物語はキャルとの邂逅へ。ここでいきなり物語のトーンが変わらなければいいなあと思っていたんですが、さすがうまいですね。なんだか「ペーパームーン」みたいだ。いや、それはヤクザ映画ではないけれど(^^;
それにしても、今回は霧香…いや違ったアインが登場せず。次回以降どうなるのか。しょんぼりとしおれて霧香の消えた穴を埋められない玲二がえらくミレイユっぽく見えてきました(^^;。さあどう出る霧香。
2009年06月13日
Phantom第11話「襲名」
いわゆる、総集編。なんだけど。4分の1ほど新作映像が混じっているのが複雑なところ。次回から新章突入なわけですし。これはいわゆる「製作が間に合いませんでしたごめんなさい」的な総集編ではないようですね。そもそも手が早い真下社長は、そのような屈辱的な不始末は犯したことがない気がします。一番ヤバ気なのは「ロビンフッドの大冒険」の頃なんだけど。私も5−6話程度しか見たことがないので全体像はわからない。見た人の情報求む、って感じでしょうか。でもまあ、さすがにそれはない気が。
おそらく、次回からの急展開で視聴者が混乱しないようにここまでの展開を反芻する機会を設けた、というところではないかな。事実、ストーリーはしっかり進んでいて、サイスは日本に亡命(フジモリ大統領みてえ)、クロウは地位を固め、玲二はファントムを襲名。そして正式にクロウの配下となる。それにしても、わずか三ヶ月でぜんぜん別人になってしまっている玲二には絶句。まあいろいろあったわけだけど。原作のゲーム版もこんなのなんだろうか。となると次回からOPの画像もいろいろと差し代わりそうですが。
なんか中世騎士団みたいな襲名場面は、「NOIR」のアルテナの趣味っぽくてニヤッとさせていただきました。今のところほとんどキャラクターとしてほとんど手の内のカードを切っていないマグワイヤの今後に注目ってところでしょうか。いや本当、これは男アルテナになるかもですね。
先週触れましたブランコのシーンも、今回ようやく再登場。少なくとも何か非常に重要なシーンであることはわかりましたけど、まだ全容が見えるのは先になるのかな。まあ、最初に出て、ここに出て、ということで、より計算ずくの場面構成になっていることはよくよくわかりましたけどね。
それにしてもクロウの過去はあれはあれでいろいろと考えさせられるところもあったわけで。クロウも出身は外様だったのか。超美形の少年の過去はいろいろと憶測したくなりましたけど、墓碑銘から見てあれは彼氏じゃなくて弟なんだろうなあ。まあ、リズィとの関係を考えると、このアニメ版のクロウはあくまでレズビアンスで、玲二を手駒として誘導するためだけに自分の色気を使っている気がする。リズィがこのアニメ版でいかにもタチっぽいべリショートなのはそのへんを示唆している気がするけどどうなんでしょうね。以前、ベリショートなレズの友達に「タチだよね?」と聞いて怒られたことあるけど(−−;:現実のレズはそんなに単純なものじゃないみたいですが。
何にしても次回の新章から大きく動く予感が。さあ、待たされましたけど、いよいよみゆきち氏登板です!
おそらく、次回からの急展開で視聴者が混乱しないようにここまでの展開を反芻する機会を設けた、というところではないかな。事実、ストーリーはしっかり進んでいて、サイスは日本に亡命(フジモリ大統領みてえ)、クロウは地位を固め、玲二はファントムを襲名。そして正式にクロウの配下となる。それにしても、わずか三ヶ月でぜんぜん別人になってしまっている玲二には絶句。まあいろいろあったわけだけど。原作のゲーム版もこんなのなんだろうか。となると次回からOPの画像もいろいろと差し代わりそうですが。
なんか中世騎士団みたいな襲名場面は、「NOIR」のアルテナの趣味っぽくてニヤッとさせていただきました。今のところほとんどキャラクターとしてほとんど手の内のカードを切っていないマグワイヤの今後に注目ってところでしょうか。いや本当、これは男アルテナになるかもですね。
先週触れましたブランコのシーンも、今回ようやく再登場。少なくとも何か非常に重要なシーンであることはわかりましたけど、まだ全容が見えるのは先になるのかな。まあ、最初に出て、ここに出て、ということで、より計算ずくの場面構成になっていることはよくよくわかりましたけどね。
それにしてもクロウの過去はあれはあれでいろいろと考えさせられるところもあったわけで。クロウも出身は外様だったのか。超美形の少年の過去はいろいろと憶測したくなりましたけど、墓碑銘から見てあれは彼氏じゃなくて弟なんだろうなあ。まあ、リズィとの関係を考えると、このアニメ版のクロウはあくまでレズビアンスで、玲二を手駒として誘導するためだけに自分の色気を使っている気がする。リズィがこのアニメ版でいかにもタチっぽいべリショートなのはそのへんを示唆している気がするけどどうなんでしょうね。以前、ベリショートなレズの友達に「タチだよね?」と聞いて怒られたことあるけど(−−;:現実のレズはそんなに単純なものじゃないみたいですが。
何にしても次回の新章から大きく動く予感が。さあ、待たされましたけど、いよいよみゆきち氏登板です!
2009年06月07日
Phantom第10話「終幕」
まさしく「第一部・完」という感じでしたが、いわゆるアクションもののツッコミ所をすべて潰してくるスキのなさにはびっくり。どちらかというと、リアリティを犠牲にしてもエキセントリックなアクションシーンを見せることに執着してたわれらが社長が。「もう両立できる」ってことなんですかねえ。それはそれでさびしいが。
ふつう、主人公と敵役が都合よくクライマックスで一対一になりますが、必ず敵か味方の別キャラが乱入してきて盛り上がっている暇はないし、アインと玲二が相対する葛藤のシーンもサイスとリズィのせいで決断はウヤムヤになってしまう。
最後の最後で玲二が凶戦士化して、サイスが小悪党らしくおびえながら逃げ惑うシーンはいかにもやくざ映画のクライマックス、という感じですが。ああ、納得。このシーンは確かに江原正士じゃ困るものね。
ただ、この最後の一撃はアインの介入によって阻まれ、これまたウヤムヤに。でもまあ、けがしているアインが玲二の脚下をうまく撃つのは無理だし、体を張って拒むしかないか…なに、そもそも二人に追いつけないだろうって?そこは確かに真下演出がこっそりまぎれこんでますね(^^;
とはいえ自らの手でアインを撃つ結果となり、その場にくずおれて絶望する玲二。わあバカ、そんな独白してる間にサイスなんで撃たないんだと思ったら本当に撃つし。ふつう、この手のシーンは撃たないものなんだけど、そこが逆に新しい。
あ、このシーンはもちろん「NOIR」の第17話「コルシカに還る」のラストシーンから、第18話「私の中の闇」にかけてのミレ霧二人の葛藤を巧妙に裏返しにしたものですね。特にアインは、葛藤の対象が何度か逆転しながら現れるのが面白い。
そして最後の最後、誰の策略も実を結ばないまま、事件は中途半端に収束してしまう。もっとも風上に立ったと確信していたクロウの思惑すら超えていくことになる…そして瀕死の形で引き裂かれる二人の主人公。ほぼ無傷のまま霧香に逃げられたミレイユと比較すると面白いかもしれません。あれ、ひょっとすると今回はクロウがミレイユの立ち位置でサイスがクロエ?
まあ何にしてもたぶん次回から新展開、のはず。真下作品にしては珍しく半分ぐらいは総集編になるのかな。ただ、クロウの立場から語りなおされるということなので、これはこれで興味深いかもちょっと注目です。
ふつう、主人公と敵役が都合よくクライマックスで一対一になりますが、必ず敵か味方の別キャラが乱入してきて盛り上がっている暇はないし、アインと玲二が相対する葛藤のシーンもサイスとリズィのせいで決断はウヤムヤになってしまう。
最後の最後で玲二が凶戦士化して、サイスが小悪党らしくおびえながら逃げ惑うシーンはいかにもやくざ映画のクライマックス、という感じですが。ああ、納得。このシーンは確かに江原正士じゃ困るものね。
ただ、この最後の一撃はアインの介入によって阻まれ、これまたウヤムヤに。でもまあ、けがしているアインが玲二の脚下をうまく撃つのは無理だし、体を張って拒むしかないか…なに、そもそも二人に追いつけないだろうって?そこは確かに真下演出がこっそりまぎれこんでますね(^^;
とはいえ自らの手でアインを撃つ結果となり、その場にくずおれて絶望する玲二。わあバカ、そんな独白してる間にサイスなんで撃たないんだと思ったら本当に撃つし。ふつう、この手のシーンは撃たないものなんだけど、そこが逆に新しい。
あ、このシーンはもちろん「NOIR」の第17話「コルシカに還る」のラストシーンから、第18話「私の中の闇」にかけてのミレ霧二人の葛藤を巧妙に裏返しにしたものですね。特にアインは、葛藤の対象が何度か逆転しながら現れるのが面白い。
そして最後の最後、誰の策略も実を結ばないまま、事件は中途半端に収束してしまう。もっとも風上に立ったと確信していたクロウの思惑すら超えていくことになる…そして瀕死の形で引き裂かれる二人の主人公。ほぼ無傷のまま霧香に逃げられたミレイユと比較すると面白いかもしれません。あれ、ひょっとすると今回はクロウがミレイユの立ち位置でサイスがクロエ?
まあ何にしてもたぶん次回から新展開、のはず。真下作品にしては珍しく半分ぐらいは総集編になるのかな。ただ、クロウの立場から語りなおされるということなので、これはこれで興味深いかもちょっと注目です。
2009年05月31日
Phantom第9話「名前」
今回のエピソードは比較的「ダレ場」といえる平板なストーリー。ただ、ここまでの急展開を一度受け手の方で整理する機会が必要なのも確かなので、この演出は正解。真下のかつての同僚である押井も言ってますが、「ダレ場」というのはタツノコ学校の独特の演出方法ですね。うっかり作画が少し崩れているのは残念の極みですが。
全体的なトーンとしては「NOIR」の第7話「運命の黒い糸」を強く感じさせる負傷した相棒をかばいながらの逃避行。とはいえ市街地を舞台にしているせいか、ロードムービー的要素が非常に強い。まだまともだったころのヴェンダースを思い出してしまいましたよ。最後に海にたどりついて二人が射殺されればゴダールになるんでしょうが、それでは話が終わってしまうので(笑)
ふつうのロードムービーとこの作品が決定的に異なっていることを思い知らされるのが後半のストーリー。普通のロードムービーでは結末部分で見えない「影」のように表現されるだけです。真下お気に入りの「冒険者たち」なんてまさしくそうですよね。
ところが本作品では、それまで主人公の視界の外に消えていた追っ手たちが唐突に出現してストーリーの主導権を奪い返してしまう。そしてクロウの発言から、ツヴァイのここまでの行動を含めてすべてがクロウの計算のうちであること、罠にはめられたと思われたサイスも実は結構対等に立ち回っていたことがあかされるわけです。
クロウは「自分の考えで動け」と主人公を挑発しておきながら、実はそれこそが、より高い位置から操るための糸であったという仕掛け。そしていったん絶望させておきながら希望を与えることでより強固に操ろうという洗脳のメカニズム。すげーなクロウ。
「Phantom」と「NOIR」の類似は前半だけ、と思っていたんですが、実は後半も深く関与していくようですね。霧香の洗脳のメカニズムはかなりぼかされていたけど、次第に人格が分裂していく描写などはまさしく「NOIR」。洗脳の課程が詳細に描写されているのは、演出としても着実な前進と言えそうです。
こうなるとサイスがどう出るか、続きが楽しみ。次回、いったんストーリーは結末を迎えることになるのかな?
全体的なトーンとしては「NOIR」の第7話「運命の黒い糸」を強く感じさせる負傷した相棒をかばいながらの逃避行。とはいえ市街地を舞台にしているせいか、ロードムービー的要素が非常に強い。まだまともだったころのヴェンダースを思い出してしまいましたよ。最後に海にたどりついて二人が射殺されればゴダールになるんでしょうが、それでは話が終わってしまうので(笑)
ふつうのロードムービーとこの作品が決定的に異なっていることを思い知らされるのが後半のストーリー。普通のロードムービーでは結末部分で見えない「影」のように表現されるだけです。真下お気に入りの「冒険者たち」なんてまさしくそうですよね。
ところが本作品では、それまで主人公の視界の外に消えていた追っ手たちが唐突に出現してストーリーの主導権を奪い返してしまう。そしてクロウの発言から、ツヴァイのここまでの行動を含めてすべてがクロウの計算のうちであること、罠にはめられたと思われたサイスも実は結構対等に立ち回っていたことがあかされるわけです。
クロウは「自分の考えで動け」と主人公を挑発しておきながら、実はそれこそが、より高い位置から操るための糸であったという仕掛け。そしていったん絶望させておきながら希望を与えることでより強固に操ろうという洗脳のメカニズム。すげーなクロウ。
「Phantom」と「NOIR」の類似は前半だけ、と思っていたんですが、実は後半も深く関与していくようですね。霧香の洗脳のメカニズムはかなりぼかされていたけど、次第に人格が分裂していく描写などはまさしく「NOIR」。洗脳の課程が詳細に描写されているのは、演出としても着実な前進と言えそうです。
こうなるとサイスがどう出るか、続きが楽しみ。次回、いったんストーリーは結末を迎えることになるのかな?
2009年05月23日
Phantom第8話「急変」
というわけで3週間ぶりのリアル日視聴。やはりリアルタイムはいいなあ。遅れて後から見ると残念感が倍増しますから。
「無限の住人」もたいがいエロいと思ってたんですが、このエピソードは本当にすごい。まあ、そういえばこの原作18禁ゲームだったんだっけなんて思い返したりするわけですが。ここまで比較的禁欲的な画面構成が続いてきたうえでのこれですからね。ちょっとびっくり。
それにしても久川綾は本当にうまいなあ。あ、いやそういうことを言うのは失礼なほどのベテランさんではありますが。構図的にはメチャクチャベタな「お姉さまキャラに背後から誘惑される」シチュエーションで、ここまで存在感のある演技をなし得るのはすごい。一瞬、「どこかで見た」感を忘れてましたから。普通はそれを真っ先に感じてしまうものですからね。
私、こういうベタな展開見ると結構凹むほうなんですが、それをまったく感じさせないのが真下の演出力であり、久川綾の演技力、ひいては二人の長年の信頼関係のたまものなんでしょうね。クロウはぜんぜん脱がないし、胸も強調しないし、エロい言葉とかぜんぜんないんですが、全体として画面から受ける影響はひたすらエロい。これはたぶん、全体の雰囲気として「私のものになれ」的な「誘惑」の要素を強く持った演出がなされているからなんでしょう。
ベタといえば、今回の後半、負傷したアインの傷口から麻酔なしで銃弾をえぐりだすシーンもそうなんですが、むしろこちらもえらくエロい印象を受けたのが不思議。普通はこういうシーンでエロさは感じないものですよね。なるほどこういうベタさの回避方法もあったか。
途中まで音声を消して伴音だけで見せているのは、真下ならではの演出方法でしょう。口にハンカチをくわえてのけぞるアイン、そして最後にひと声だけ「ああっ」と声を聞かせると、確かにエロティシズムが強く印象付けられる。
そうすると確かに、二人がお互いを男女として意識していくきっかけとしては非常に効果的なわけですよね。さすが社長。過去に作った作品は必ず次に生かしてくるんだなあと。あ、もちろん女上司キャラぶりを堂々と演じ切った久川綾もそうですが。
「無限の住人」もたいがいエロいと思ってたんですが、このエピソードは本当にすごい。まあ、そういえばこの原作18禁ゲームだったんだっけなんて思い返したりするわけですが。ここまで比較的禁欲的な画面構成が続いてきたうえでのこれですからね。ちょっとびっくり。
それにしても久川綾は本当にうまいなあ。あ、いやそういうことを言うのは失礼なほどのベテランさんではありますが。構図的にはメチャクチャベタな「お姉さまキャラに背後から誘惑される」シチュエーションで、ここまで存在感のある演技をなし得るのはすごい。一瞬、「どこかで見た」感を忘れてましたから。普通はそれを真っ先に感じてしまうものですからね。
私、こういうベタな展開見ると結構凹むほうなんですが、それをまったく感じさせないのが真下の演出力であり、久川綾の演技力、ひいては二人の長年の信頼関係のたまものなんでしょうね。クロウはぜんぜん脱がないし、胸も強調しないし、エロい言葉とかぜんぜんないんですが、全体として画面から受ける影響はひたすらエロい。これはたぶん、全体の雰囲気として「私のものになれ」的な「誘惑」の要素を強く持った演出がなされているからなんでしょう。
ベタといえば、今回の後半、負傷したアインの傷口から麻酔なしで銃弾をえぐりだすシーンもそうなんですが、むしろこちらもえらくエロい印象を受けたのが不思議。普通はこういうシーンでエロさは感じないものですよね。なるほどこういうベタさの回避方法もあったか。
途中まで音声を消して伴音だけで見せているのは、真下ならではの演出方法でしょう。口にハンカチをくわえてのけぞるアイン、そして最後にひと声だけ「ああっ」と声を聞かせると、確かにエロティシズムが強く印象付けられる。
そうすると確かに、二人がお互いを男女として意識していくきっかけとしては非常に効果的なわけですよね。さすが社長。過去に作った作品は必ず次に生かしてくるんだなあと。あ、もちろん女上司キャラぶりを堂々と演じ切った久川綾もそうですが。
2009年05月19日
Phantom第7話「過去」
目下大阪は黒死館状態…ていうかバイオハザードか。つーかそれほど深刻でもないんだからみんな落ち着け。しかし学校閉鎖を幸いと遊び歩いている高校生はけしからん。みんな家でおとなしくしてなさい。あと台風が来たみたいに大ハシャギしてるうちの家族も少し落ち着きなさい(^^;
というわけで、なかなか時間も取れないので、まずはPhantomを優先。今週分も見ることができました。
ツヴァイの過去エピソードそのものは実はそれほど驚くべきものじゃない。というわけで、お得意の前衛カットバックはなく、むしろ現在のエピソードの間にサンドイッチのようにコンパクトにたたみこまれていたのが興味深いところ。
今回の演出の白眉はなんといっても、まさしく真下ならではの緻密な音響演出。ツヴァイが「夢を見たことはあるか」とアインに聞き、しばらくのやりとりの後、それまで低く単調に流れていた風の音がフッと途切れ、ほんの一瞬だけボワッと耳を聾するほどの無音が作りだされた後、アインが不自然なほど冷たい口調で「それを知ってどうするの」と答える。その言葉を引き継ぐように単調なスコアが流れ始めるという展開にはまったく感服するほかありませんでした。いやまったく、社長以外のだれが、ここまで緻密なサウンドトラックを作り出せることでしょう。
七瀬光のスコアは、梶浦姉の朗々たる華麗さとはうってかわって非常にストイック。ていうかこれは真下の演出なんでしょうね。なるほど自己主張の強い梶浦サウンドではこういう使い方はできない。ほとんど音楽を自然音やノイズと区別できない形で複雑に組み合わせて使用しているわけですから。風の音や水の音と区別がつかないほど禁欲的なサウンドというのも大変な割に報われない部分が多く、七瀬氏には同情しますが、本当にすばらしいものになっていると思います。
しかし、ではこれを単体で聞いたときにどんな風に聞こえるのか。これはまた別物なんだろうなあ。サントラがいつもとはまた別の意味で待ち遠しい。梶浦サウンドは、真下世界の場面場面を強く想起させるインデックスの役割を持っていましたが、今回はそうではないでしょうから。
そして、この緻密な演出があるからこそ生きる今回の最後の場面。「…大丈夫」とつぶやくアインを見つめるツヴァイ。二人の瞳をアップにするだけで、覚悟・逡巡・駆け引き・嫉妬・妬み・挑発といった多彩な感情が入り混じった複雑な心理の交歓を見せてしまうのですから。普通アニメではこういう場合オーバーアクションでなければ成立しないものなんだが。本当に社長はすごい。瞳の演出では天下一品ですね。
というわけで、なかなか時間も取れないので、まずはPhantomを優先。今週分も見ることができました。
ツヴァイの過去エピソードそのものは実はそれほど驚くべきものじゃない。というわけで、お得意の前衛カットバックはなく、むしろ現在のエピソードの間にサンドイッチのようにコンパクトにたたみこまれていたのが興味深いところ。
今回の演出の白眉はなんといっても、まさしく真下ならではの緻密な音響演出。ツヴァイが「夢を見たことはあるか」とアインに聞き、しばらくのやりとりの後、それまで低く単調に流れていた風の音がフッと途切れ、ほんの一瞬だけボワッと耳を聾するほどの無音が作りだされた後、アインが不自然なほど冷たい口調で「それを知ってどうするの」と答える。その言葉を引き継ぐように単調なスコアが流れ始めるという展開にはまったく感服するほかありませんでした。いやまったく、社長以外のだれが、ここまで緻密なサウンドトラックを作り出せることでしょう。
七瀬光のスコアは、梶浦姉の朗々たる華麗さとはうってかわって非常にストイック。ていうかこれは真下の演出なんでしょうね。なるほど自己主張の強い梶浦サウンドではこういう使い方はできない。ほとんど音楽を自然音やノイズと区別できない形で複雑に組み合わせて使用しているわけですから。風の音や水の音と区別がつかないほど禁欲的なサウンドというのも大変な割に報われない部分が多く、七瀬氏には同情しますが、本当にすばらしいものになっていると思います。
しかし、ではこれを単体で聞いたときにどんな風に聞こえるのか。これはまた別物なんだろうなあ。サントラがいつもとはまた別の意味で待ち遠しい。梶浦サウンドは、真下世界の場面場面を強く想起させるインデックスの役割を持っていましたが、今回はそうではないでしょうから。
そして、この緻密な演出があるからこそ生きる今回の最後の場面。「…大丈夫」とつぶやくアインを見つめるツヴァイ。二人の瞳をアップにするだけで、覚悟・逡巡・駆け引き・嫉妬・妬み・挑発といった多彩な感情が入り混じった複雑な心理の交歓を見せてしまうのですから。普通アニメではこういう場合オーバーアクションでなければ成立しないものなんだが。本当に社長はすごい。瞳の演出では天下一品ですね。
2009年05月18日
Phantom第6話「大火」
とりあえずまずはPhantomから。というわけで見ました。なんと前の話が続いている!しかもこれ原作にないアニメオリジナルだそうで。なるほど「NOIR」を思わせるエピソードになっているのも納得ですね。
前半部分のツヴァイの迷いはまさしく「日々の糧」を思い出させるし。なんか象徴的に「犬」が何度も出てくるのも「迷い猫」を感じさせるかも。
何か前回のOVA版では無駄にバリバリ弾を撃ちまくる全然「暗殺」ではないストーリーだったようですが、今回はまさしく策謀を巡らせまくった犯行計画がオリジナル版の映画「ジャッカルの日」を思い出させる緻密さ。なるほど、そうすると無駄に撃ちまくったOVA版はリメイク版の方に対応するのか(笑)
それにしても、ここまで緻密な暗殺計画は「NOIR」でもなかったもので、なんとなくなつかしの「スパイ大作戦」を思い出してしまいましたよ。ただし、あれはひたすら「正義」(いい意味でも悪い意味でも)だったわけですが。今回は主人公の側がはっきりと「悪」だというのはひたすらに重い。
ところで、そんな中にあってひたすら喜々として暗躍するサイスマスターが印象的なわけですが。なるほど、ベントスさんがご指摘の通り、ここまでフェティッシュなキャラとしてサイスマスターを描くのであれば、江原正士の声を乗せたらまさしくフライデーそのものになってしまう。そういう意味では、あえて江原ボイスを外してきたのは正解かもしれない。あくまで久川リズィの部下として「小物の野心家」でしかないわけですから。江原ボイスではまさしく「神のごときアーチスト」となってしまう。
ああ、それでも江原サイスマスターが見たかったよ(^−^;
前半部分のツヴァイの迷いはまさしく「日々の糧」を思い出させるし。なんか象徴的に「犬」が何度も出てくるのも「迷い猫」を感じさせるかも。
何か前回のOVA版では無駄にバリバリ弾を撃ちまくる全然「暗殺」ではないストーリーだったようですが、今回はまさしく策謀を巡らせまくった犯行計画がオリジナル版の映画「ジャッカルの日」を思い出させる緻密さ。なるほど、そうすると無駄に撃ちまくったOVA版はリメイク版の方に対応するのか(笑)
それにしても、ここまで緻密な暗殺計画は「NOIR」でもなかったもので、なんとなくなつかしの「スパイ大作戦」を思い出してしまいましたよ。ただし、あれはひたすら「正義」(いい意味でも悪い意味でも)だったわけですが。今回は主人公の側がはっきりと「悪」だというのはひたすらに重い。
ところで、そんな中にあってひたすら喜々として暗躍するサイスマスターが印象的なわけですが。なるほど、ベントスさんがご指摘の通り、ここまでフェティッシュなキャラとしてサイスマスターを描くのであれば、江原正士の声を乗せたらまさしくフライデーそのものになってしまう。そういう意味では、あえて江原ボイスを外してきたのは正解かもしれない。あくまで久川リズィの部下として「小物の野心家」でしかないわけですから。江原ボイスではまさしく「神のごときアーチスト」となってしまう。
ああ、それでも江原サイスマスターが見たかったよ(^−^;
2009年05月02日
Phantom第5話「刹那」
うわ、いきなり卓球選手権で時間20分押してたし。野球は常に警戒してたけど、テレビ大阪は野球で番組の繰り下げはしない、という美徳があるはずです。すっかり気がゆるんでて、時間になっても始まらずに焦りましたよ。一応確認してみてよかった。野球は冷遇してても、自社主催の世界卓球は延長するのね(^^;地デジの時代なんだから、延長は自社3チャンネルのうち1つだけで放映して、残りは予定通りすればいいのに。2011年までは無理かなあ。
それはさておき。今回は質的にはまさしく感嘆のため息の出るできばえ。ノワールは一匹狼の殺し屋たちだけど、ファントムは仁俠の世界、と指摘したのはポール・ブリッツさんですが。言われてみれば真下のガンアクションは虚構性が強く、殺伐たるやくざ世界を描写した文字通りのフィルム・ノワールは今回が初めてかもしれない。しかも今回のエピソードでは、モラル的に理があるのはターゲットであるトニー・ストーンの側、というのがおもしろい。古風な日本の仁俠映画だと、まさしくこういう昔気質な親分が主人公になって孤立無援な戦いに身を投じていくものだけど。
今回はまったく逆で、インフェルノは強大かつ邪悪な巨大組織。主人公はその手駒として、なんと何の罪もないターゲットの妻と娘を殺さなければならない。それでも、「仕事」として淡々と非道な行為に手を染める。もっとウェットな描き方もあるとは思うけど、思い切って実に真下らしいハードボイルドなタッチに染め抜かれていたのにはほれぼれしました。ここまでハードボイルドなのはノワールでの第3話「暗殺遊技」以来じゃなかろうか。
主人公がターゲットに感情移入してしまい、それでもなおかつ仕事を完遂する、という意味ではノワールの「暗殺遊技」「迷い猫」とちょうどぴったり重なるエピソード。個人的にはこういう乾いた哀しみ、とでもいうべきタッチはとても好みなのです。
ただ、ノワールではターゲットのモラル的位置は巧妙に避けられていた面もありました。実はそこがちょっと不満でもあったのですが。本来は殺し屋なんですから、「悪いやつ」だけを殺すとは限りませんよね。そこをぼかしている月村氏の脚本は若干ズルいなあと思ったものでした。もちろん真下もそう思いながら演出していたはずで、そこが次作「MADLAX」での善と悪に関する壮大な哲学的思索に満ちた世界に結実したんだろうけど。
「ちょっと同情した殺し屋」を撃つよりは、「なんの罪もない母子」を撃つ方が心が痛むにきまっている。そこを「仕事」と割り切り心の痛みを押さえ込むやせ我慢な感覚、それもまたひとつのハードボイルドなのでしょうか。むろん、おさえこんだ心の傷はいつまでも隠しておけるものではなくて、いつか大事を呼び込むことになるわけですが。
それにしても、ストーンの息子のつぶらすぎる瞳は何とも鬱になりそう。ただ、えくぐ後味の悪いものとせず、純粋に抽出された哀しみというべきものに昇華してみせた真下の演出技はまさしく見事のひとことです。息子が撃たれる瞬間の銃声はあえて聞かせず別シーンに切り替えて、何カットか後に重なり合った母子の手をインサートすることでツヴァイの仕事の完遂を悟らせる、という、きわめてサイレント映画的な演出に興味深さを覚えました。こうした演出によって、過剰にウェットにならず、ドライな悲劇性が保たれてるとみることができるでしょう。
なんだか、「迷い猫」でのムイシュキン侯爵の目を思い出させるのですが、これは偶然ではないでしょう。ちなみに、今回はじっくりとドラマを見せるためか、トリッキーな演出は抑制気味でした。これで正解かと思います。
それはさておき。今回は質的にはまさしく感嘆のため息の出るできばえ。ノワールは一匹狼の殺し屋たちだけど、ファントムは仁俠の世界、と指摘したのはポール・ブリッツさんですが。言われてみれば真下のガンアクションは虚構性が強く、殺伐たるやくざ世界を描写した文字通りのフィルム・ノワールは今回が初めてかもしれない。しかも今回のエピソードでは、モラル的に理があるのはターゲットであるトニー・ストーンの側、というのがおもしろい。古風な日本の仁俠映画だと、まさしくこういう昔気質な親分が主人公になって孤立無援な戦いに身を投じていくものだけど。
今回はまったく逆で、インフェルノは強大かつ邪悪な巨大組織。主人公はその手駒として、なんと何の罪もないターゲットの妻と娘を殺さなければならない。それでも、「仕事」として淡々と非道な行為に手を染める。もっとウェットな描き方もあるとは思うけど、思い切って実に真下らしいハードボイルドなタッチに染め抜かれていたのにはほれぼれしました。ここまでハードボイルドなのはノワールでの第3話「暗殺遊技」以来じゃなかろうか。
主人公がターゲットに感情移入してしまい、それでもなおかつ仕事を完遂する、という意味ではノワールの「暗殺遊技」「迷い猫」とちょうどぴったり重なるエピソード。個人的にはこういう乾いた哀しみ、とでもいうべきタッチはとても好みなのです。
ただ、ノワールではターゲットのモラル的位置は巧妙に避けられていた面もありました。実はそこがちょっと不満でもあったのですが。本来は殺し屋なんですから、「悪いやつ」だけを殺すとは限りませんよね。そこをぼかしている月村氏の脚本は若干ズルいなあと思ったものでした。もちろん真下もそう思いながら演出していたはずで、そこが次作「MADLAX」での善と悪に関する壮大な哲学的思索に満ちた世界に結実したんだろうけど。
「ちょっと同情した殺し屋」を撃つよりは、「なんの罪もない母子」を撃つ方が心が痛むにきまっている。そこを「仕事」と割り切り心の痛みを押さえ込むやせ我慢な感覚、それもまたひとつのハードボイルドなのでしょうか。むろん、おさえこんだ心の傷はいつまでも隠しておけるものではなくて、いつか大事を呼び込むことになるわけですが。
それにしても、ストーンの息子のつぶらすぎる瞳は何とも鬱になりそう。ただ、えくぐ後味の悪いものとせず、純粋に抽出された哀しみというべきものに昇華してみせた真下の演出技はまさしく見事のひとことです。息子が撃たれる瞬間の銃声はあえて聞かせず別シーンに切り替えて、何カットか後に重なり合った母子の手をインサートすることでツヴァイの仕事の完遂を悟らせる、という、きわめてサイレント映画的な演出に興味深さを覚えました。こうした演出によって、過剰にウェットにならず、ドライな悲劇性が保たれてるとみることができるでしょう。
なんだか、「迷い猫」でのムイシュキン侯爵の目を思い出させるのですが、これは偶然ではないでしょう。ちなみに、今回はじっくりとドラマを見せるためか、トリッキーな演出は抑制気味でした。これで正解かと思います。
2009年04月25日
Phantom第4話「暗殺」
何か今回は音が気になる。というのも、社長から梶浦嬢を奪っておきながら音がダメダメな「パンドラハーツ」があるからなのでしょうが。とはいえ、ならばなぜ真下演出では、セリフと音楽と効果音はケンカしないのか。というわけで、今回は、細心の注意を払ってサウンドトラックを聞いてみました。
今までの真下作品、こうだっけ?今回が特にそうだという部分もあるのでしょうが・・・わかった点がひとつ。まあ、トゥディさんあたりもおわかりでしょうが、映画を実際に自分の手で作ったことのある人ならわかること。セリフと音楽と効果音をすべて並び立たせることは不可能なんです。どれかひとつに絞らないと。それをシーン単位で厳密に選定し、なおかつボリュームを絞るなどして効果音も聞かせどころを作っているのが真下サウンド。ただ、単調な音、ある一定以下のボリュームの音はあっても邪魔にならないのですよね。ガヤ音とか噴水の水音とか。そういう単調で記憶に残りやすい音をうまく使っているのも今回の特徴。広場の中央に噴水がインターバルで水の勢いが変わるのなんかうまいなあと思います。時勢の変化もドラマチックな瞬間もこれですべて描写できますからね。
というわけで、実は今回の大半を占めるショッピングモールの場合、ガヤガヤという雑音が入るのは最初のカットだけ。実はその後一度もガヤ音は入ってないんです。ところが、最初のシーンで入れておくと、その後もずっとガヤ音が入っているような気がしてしまう。不思議ですけど面白いことですね。
それと、これは今回の大きな特徴ですけど、七瀬光の音楽は、みっちりとフレーズが詰まっているものと、比較的大きく余白が取られたものとの二つがあって、これをうまく使い分けることによって、音楽をじっくり聞かせたり、ここぞというところでセリフや効果音に集中させることが可能になっている。梶浦サウンドとはまた別の形で非常に質の高い
スコアを作り上げている七瀬サウンドですけど、これはひょっとすると単体では成立し得ないかもしれない。大傑作「絶対少年」ともまた違いますね。これは今回ならではの真下の戦略なんでしょう。しかしこうなると、スコア単体では成立し得ないスコアも出てくるわけで。そのあたり、サントラCDはどうするんだろう。気になるところです。未収録作品もずいぶん出てくるかもね。
あ、そうだ。忘れてましたけど今回のストーリー。これはこれでいろいろとツッコミところもあって楽しかったです。何がっていやまさか、霧香(違う)が、あんなベタな恋愛ゲームみたいなセリフを吐いて「は?ドチラ様ですか?」
という感じになろうとは思いもしませんでしたよ。しかも3話までのアインの口調とはまったく違っていて、ジャスミンとも違う(笑)本当、プロ声優さんてスゴいなあ。アイドルあがりとは比べ物にもならんわ。
もちろんそれが演技なのかそうでないのか、非常に微妙なところで見せていたのがうまいところ。しかもただ単純な「情が移った」的なものではなくて、少し遅れて鏡に自分の姿が映るような感覚、という表現がなかなか見事。
ところで、今回の暗殺の「正解」となる瞬間とは何なのか。結局正解は言葉で語られることはないので、混乱した人も多いのでは。私も、一瞬「??」となって、一拍遅れて「あ、そうか!」と気づいた次第。本当、社長は「説明」を嫌いますよねえ。まあ、そこを読み解いていくのが真下ファンの醍醐味ってもんですが。
結局のところ、見張りも本人も「やれやれ終わった」と気が緩むのは買い物を終えて車に乗り込んだ瞬間。ただ、その瞬間を狙うのは本当に秒殺勝負になるし、防犯カメラはないけど(ショッピングモールの外だからね)、群集に暗殺の瞬間がさらされることになってしまう。そんなわけでこけおどし的な仮面は必須というわけ。うーん。なるほど。
前回の黒歴史アニメはどうなっているのか知りませんが、今回は実に真下流に染め抜かれていると思うので、これはこれでいいんじゃないかな。もう少しアンチリアルな荒唐無稽アクションが見たいけど、これはそれから、でしょうか。楽しみ。まあ、一回は「ゴルゴ13」的射的も見たいかな。それは「MADLAX」でも一回あったしね。
今までの真下作品、こうだっけ?今回が特にそうだという部分もあるのでしょうが・・・わかった点がひとつ。まあ、トゥディさんあたりもおわかりでしょうが、映画を実際に自分の手で作ったことのある人ならわかること。セリフと音楽と効果音をすべて並び立たせることは不可能なんです。どれかひとつに絞らないと。それをシーン単位で厳密に選定し、なおかつボリュームを絞るなどして効果音も聞かせどころを作っているのが真下サウンド。ただ、単調な音、ある一定以下のボリュームの音はあっても邪魔にならないのですよね。ガヤ音とか噴水の水音とか。そういう単調で記憶に残りやすい音をうまく使っているのも今回の特徴。広場の中央に噴水がインターバルで水の勢いが変わるのなんかうまいなあと思います。時勢の変化もドラマチックな瞬間もこれですべて描写できますからね。
というわけで、実は今回の大半を占めるショッピングモールの場合、ガヤガヤという雑音が入るのは最初のカットだけ。実はその後一度もガヤ音は入ってないんです。ところが、最初のシーンで入れておくと、その後もずっとガヤ音が入っているような気がしてしまう。不思議ですけど面白いことですね。
それと、これは今回の大きな特徴ですけど、七瀬光の音楽は、みっちりとフレーズが詰まっているものと、比較的大きく余白が取られたものとの二つがあって、これをうまく使い分けることによって、音楽をじっくり聞かせたり、ここぞというところでセリフや効果音に集中させることが可能になっている。梶浦サウンドとはまた別の形で非常に質の高い
スコアを作り上げている七瀬サウンドですけど、これはひょっとすると単体では成立し得ないかもしれない。大傑作「絶対少年」ともまた違いますね。これは今回ならではの真下の戦略なんでしょう。しかしこうなると、スコア単体では成立し得ないスコアも出てくるわけで。そのあたり、サントラCDはどうするんだろう。気になるところです。未収録作品もずいぶん出てくるかもね。
あ、そうだ。忘れてましたけど今回のストーリー。これはこれでいろいろとツッコミところもあって楽しかったです。何がっていやまさか、霧香(違う)が、あんなベタな恋愛ゲームみたいなセリフを吐いて「は?ドチラ様ですか?」
という感じになろうとは思いもしませんでしたよ。しかも3話までのアインの口調とはまったく違っていて、ジャスミンとも違う(笑)本当、プロ声優さんてスゴいなあ。アイドルあがりとは比べ物にもならんわ。
もちろんそれが演技なのかそうでないのか、非常に微妙なところで見せていたのがうまいところ。しかもただ単純な「情が移った」的なものではなくて、少し遅れて鏡に自分の姿が映るような感覚、という表現がなかなか見事。
ところで、今回の暗殺の「正解」となる瞬間とは何なのか。結局正解は言葉で語られることはないので、混乱した人も多いのでは。私も、一瞬「??」となって、一拍遅れて「あ、そうか!」と気づいた次第。本当、社長は「説明」を嫌いますよねえ。まあ、そこを読み解いていくのが真下ファンの醍醐味ってもんですが。
結局のところ、見張りも本人も「やれやれ終わった」と気が緩むのは買い物を終えて車に乗り込んだ瞬間。ただ、その瞬間を狙うのは本当に秒殺勝負になるし、防犯カメラはないけど(ショッピングモールの外だからね)、群集に暗殺の瞬間がさらされることになってしまう。そんなわけでこけおどし的な仮面は必須というわけ。うーん。なるほど。
前回の黒歴史アニメはどうなっているのか知りませんが、今回は実に真下流に染め抜かれていると思うので、これはこれでいいんじゃないかな。もう少しアンチリアルな荒唐無稽アクションが見たいけど、これはそれから、でしょうか。楽しみ。まあ、一回は「ゴルゴ13」的射的も見たいかな。それは「MADLAX」でも一回あったしね。
2009年04月19日
Phantom第3話「実践」
ただいまー砥部から帰ってきました。かなりヘロヘロです。というわけで何とか視聴しましたが今回は少し短めでご勘弁を。
今回はサウンドトラックと効果音の配置に注意しながら見てました。というのも、梶浦嬢参加の「パンドラハーツ」があまりに痛いサウンドトラックになっているからで・・・セリフと効果音とBGMが角突き合わせてケンカしまくっている。はて、なんで真下はあんなにうまく仕上げるんだろうと改めて疑問を抱いたわけですが。
「パンドラハーツ」をはじめ普通のアニメの演出ではサウンドトラックの優先順位として@セリフA音楽B効果音となっていると思うのだけど。それでは音楽がコマ切れになる、効果音もあるていど聞かせたいと思い始めると共倒れということになりがち。
では真下はどうしているのかというと、@効果音A音楽Bセリフと優先順位がまったく逆。ある意味、セリフなんてなくても画面に緊張感を持たせることができれば、十分理解できる、と視聴者を突き放してしまう不親切さが真下流の前衛表現となるわけで。ズボラな視聴者には「わけわからん」となるのでしょうけどね。それよりも、画面をコントロールし、抽象的な統一感を完成させるためには効果音と音楽を重視せざるを得ない。むろん、いったん作曲家が完成させた音楽を短いミニマルなフレーズに分解し、映像を編集作業でつなぎ合わせるように複雑に組み合わせてまったく別の意味を持たせる、という独特の演出を施しているからこそこんな離れ業が可能だというのはあるのですけどね。
今回は、ツヴァイの「試験」シーンで、ターゲットたるウォレス大佐・ツヴァイ、サイスマスターたち、の4者の視点を複雑に入れ替えながら一本のドラマを作り上げていく。そして視点が変わるたびにカメラ視点が複雑に変化し、地面からあおったり、天井から俯瞰したり、高みから見下げたり、そして時には手持ちカメラの手ぶれまで再現する(!)アニメだというのに。さすが映研系と言うほかありません。
その全体をまとめているのは複雑に反響しながら何度も鳴り響く複数の銃の音声であり、決してセリフではないのです。ようやく真下の今回の実験テーマが見えてきた気がします。つまり、セリフではなく効果音でどこまで表現できるのか、という音声の実験。DVDの5.1チャンネル版も要注目ですね。
今回のターゲットたるウォレス大佐はローゼンバーグ=三宅健太。次回からゲストキャラでボチボチ真下チームの声優たちが出てきそうです。それもまた楽しみ。
今回はサウンドトラックと効果音の配置に注意しながら見てました。というのも、梶浦嬢参加の「パンドラハーツ」があまりに痛いサウンドトラックになっているからで・・・セリフと効果音とBGMが角突き合わせてケンカしまくっている。はて、なんで真下はあんなにうまく仕上げるんだろうと改めて疑問を抱いたわけですが。
「パンドラハーツ」をはじめ普通のアニメの演出ではサウンドトラックの優先順位として@セリフA音楽B効果音となっていると思うのだけど。それでは音楽がコマ切れになる、効果音もあるていど聞かせたいと思い始めると共倒れということになりがち。
では真下はどうしているのかというと、@効果音A音楽Bセリフと優先順位がまったく逆。ある意味、セリフなんてなくても画面に緊張感を持たせることができれば、十分理解できる、と視聴者を突き放してしまう不親切さが真下流の前衛表現となるわけで。ズボラな視聴者には「わけわからん」となるのでしょうけどね。それよりも、画面をコントロールし、抽象的な統一感を完成させるためには効果音と音楽を重視せざるを得ない。むろん、いったん作曲家が完成させた音楽を短いミニマルなフレーズに分解し、映像を編集作業でつなぎ合わせるように複雑に組み合わせてまったく別の意味を持たせる、という独特の演出を施しているからこそこんな離れ業が可能だというのはあるのですけどね。
今回は、ツヴァイの「試験」シーンで、ターゲットたるウォレス大佐・ツヴァイ、サイスマスターたち、の4者の視点を複雑に入れ替えながら一本のドラマを作り上げていく。そして視点が変わるたびにカメラ視点が複雑に変化し、地面からあおったり、天井から俯瞰したり、高みから見下げたり、そして時には手持ちカメラの手ぶれまで再現する(!)アニメだというのに。さすが映研系と言うほかありません。
その全体をまとめているのは複雑に反響しながら何度も鳴り響く複数の銃の音声であり、決してセリフではないのです。ようやく真下の今回の実験テーマが見えてきた気がします。つまり、セリフではなく効果音でどこまで表現できるのか、という音声の実験。DVDの5.1チャンネル版も要注目ですね。
今回のターゲットたるウォレス大佐はローゼンバーグ=三宅健太。次回からゲストキャラでボチボチ真下チームの声優たちが出てきそうです。それもまた楽しみ。
2009年04月11日
Phantom第2話「訓練」
今回は比較的時系列に沿った描写で、その点ではもの足りなくもないのですが、そのぶん哲学的表現が目立ったのが興味深い。まあ、これは原作がそうなんでしょうけど。何度も繰り返される仮面と操り人形の描写は、真下お得意の象徴的描写でしょう。人はなぜ「知らない人」なら殺すことができるのか、「知っている人」を殺すことに抵抗を感じるのはなぜなのか。そのあたりに「人間とは何か」という哲学的意味を込めてきたのが新しい。もっとも哲学的な「MADLAX」でさえ真下的直感に満ちた世界であって、哲学という論理で語れる部分は少ないですからね。おそらくこのあたりは原作にもあるテーマなんでしょうが、真下流の直感と溶け合ったときにどのような展開を見せることになるか、非常に興味深いところです。
思えば真下作品で「訓練」なんて描写が出てくるのは初めてのことですね。力量のない演出家が手がけたら、単なるスポ根になるか地味な展開になるかだけでしょうから。そういうこともあって、最近では「訓練」なんてスッ飛ばしていきなり最強から始めてしまうわけだけど。
まあ真下が「訓練」を描かないのはキャラクターの不可思議さを増すためだと思うのですけどね。事実、こうやって描けばちゃんとしたものを仕上げてくるわけで。そのひとつひとつの行動に重みを込めて噛み締めるように描写することで、「人を殺して生き延びる」というメインテーマと密接に絡ませていく。実は物事は細部にわたって描写するほどに意味を失っていくわけで、ツヴァイがやっている「命じられたことをやっていれば何も考えずに済む」という状態をまさしく描くことになる。もちろんツヴァイがやっていることは「人を殺すための準備」なのですが。
まあそういった哲学的テーマとは別に、真下作品としては珍しくきっちりと銃の扱い方が描かれていたのも面白いことでした。あまりミリタリーマニアではないんで、「NOIR」とか「MADLAX」のガンアクションもそれほど不快感は感じないのですが。ミリタリーな方には嫌みたいですねー真下の演出は。んで、以前、「NOIR」で霧香がやっていたような「銃を斜めに構える」ことは「あり得ない」という指摘を読んだことがあるのですが、今回のエピソードで納得。ああ、なるほど。照準器が視界から外れてしまうからね。
まあ、たとえスコープ付きの銃だって胸に横抱きに抱えて撃つ、なんてことをしてしまうわけですけどね(^^;われらが社長は。そこが面白いんだが。
それにしても入野君うまくなったなあ。ツバサ・クロニクルの時から見れば雲泥の差ですよ。これなら久川姐さんと二人芝居しても十分に張り合える。今回の「速度」を巡る二人のやり取り、なかなか聞き応えありました。まあ、入野君はほとんどしゃべってないけど(笑)
あと一点。心配された七瀬光との初顔合わせ、今のところあがってきているスコアはみなすばらしく、見事のひとこと。さすが社長、サウンドを操る能力の見事さは他に類を見ないものがあり、もちろんあの「電波発注メモ(笑)」の魔力もあって、作曲家は持てる力を十二分に発揮できるのですね。効果音と音楽を区別せず一体に処理するのが真下流なわけで、今回の冒頭では背景でずっと「ブーン」という感じの重低音が鳴り続けている。気が付かなかった方はぜひヘッドホン装着でチェックしてみてください。
「パンドラハーツ」を受けたがためにキャンセルしたであろう、梶浦さん、かわいそう。第1回を見ましたけど、演出家によってはここまでサウンドが殺されてしまうものかと。セリフとサウンドがケンカし合って殺されてる。うーん。残念。
思えば真下作品で「訓練」なんて描写が出てくるのは初めてのことですね。力量のない演出家が手がけたら、単なるスポ根になるか地味な展開になるかだけでしょうから。そういうこともあって、最近では「訓練」なんてスッ飛ばしていきなり最強から始めてしまうわけだけど。
まあ真下が「訓練」を描かないのはキャラクターの不可思議さを増すためだと思うのですけどね。事実、こうやって描けばちゃんとしたものを仕上げてくるわけで。そのひとつひとつの行動に重みを込めて噛み締めるように描写することで、「人を殺して生き延びる」というメインテーマと密接に絡ませていく。実は物事は細部にわたって描写するほどに意味を失っていくわけで、ツヴァイがやっている「命じられたことをやっていれば何も考えずに済む」という状態をまさしく描くことになる。もちろんツヴァイがやっていることは「人を殺すための準備」なのですが。
まあそういった哲学的テーマとは別に、真下作品としては珍しくきっちりと銃の扱い方が描かれていたのも面白いことでした。あまりミリタリーマニアではないんで、「NOIR」とか「MADLAX」のガンアクションもそれほど不快感は感じないのですが。ミリタリーな方には嫌みたいですねー真下の演出は。んで、以前、「NOIR」で霧香がやっていたような「銃を斜めに構える」ことは「あり得ない」という指摘を読んだことがあるのですが、今回のエピソードで納得。ああ、なるほど。照準器が視界から外れてしまうからね。
まあ、たとえスコープ付きの銃だって胸に横抱きに抱えて撃つ、なんてことをしてしまうわけですけどね(^^;われらが社長は。そこが面白いんだが。
それにしても入野君うまくなったなあ。ツバサ・クロニクルの時から見れば雲泥の差ですよ。これなら久川姐さんと二人芝居しても十分に張り合える。今回の「速度」を巡る二人のやり取り、なかなか聞き応えありました。まあ、入野君はほとんどしゃべってないけど(笑)
あと一点。心配された七瀬光との初顔合わせ、今のところあがってきているスコアはみなすばらしく、見事のひとこと。さすが社長、サウンドを操る能力の見事さは他に類を見ないものがあり、もちろんあの「電波発注メモ(笑)」の魔力もあって、作曲家は持てる力を十二分に発揮できるのですね。効果音と音楽を区別せず一体に処理するのが真下流なわけで、今回の冒頭では背景でずっと「ブーン」という感じの重低音が鳴り続けている。気が付かなかった方はぜひヘッドホン装着でチェックしてみてください。
「パンドラハーツ」を受けたがためにキャンセルしたであろう、梶浦さん、かわいそう。第1回を見ましたけど、演出家によってはここまでサウンドが殺されてしまうものかと。セリフとサウンドがケンカし合って殺されてる。うーん。残念。