2013年10月15日

「山形国際ドキュメンタリー映画祭2013」日記4日目

 明日はお昼すぎまで2プロ見てそのまま撤収となりますので、今日が事実上のほぼ最終日。山形は初日から比べるとガンガン寒くなってきました。ジャンパーとか多めに持ってきてよかったなーさすがにセーターは不要でしたか(^^;

6つの眼差しと〈倫理マシーン〉
「キャットフィッシュ」
 どうやら2010年ごろに町山さんが話題にしてるらしい。アメリカでは大ヒットしたそうで、日本で未公開のままなのはなんとも不思議。ものすごいヒットからテレビシリーズ化されリアリティTVのヒットにつながっていったそうだけど、たしかにそういうところはある作品。ただ、不思議な感動はある作品で、ただの電波少年と切り捨てられない何かが見られます。



 どこまでが事前リサーチの上の出来事なのか、と疑いは当然生まれますが、これ、タイトルが実に秀逸。かなりラスト間近である登場人物が語る話からとられているのですが「なるほどなあ」とおもわずつぶやいてしまう。CSとかで公開すればいいのに。けっこうよかった。ストーリーをまったく語れないのが難点ですが。

 コンペ作品
 「物語る私たち」
 これが今回見る最後の作品。カナダの有名女優サラ・ポーリーの監督作品。よくある私の家族史めいたポートレイトムービーとして始まるのですが、展開はどんどん奇妙な方向へ・・・たぶん今回のコンペ作品の中では一番驚いた。たぶん市民賞取るのこれじゃないだろうか。はっきりいってかなりたまげた。何だこれ。画面のあちこちで仕掛けがほどこされているので、結構集中して見ないと引っかかること請け合い。まあ、途中でたいていは「えー」とだんだん変な気分になってくるとは思うので・・・しかしこういう映画ができてしまったことに対して、実際のサラの家族親類はどう思うんだろう(^^;

 クリス・マルケル回顧展
 「アンドレイ・アルセニエヴィッチの一日」
 クリスによる死の床のタルコフスキーを撮ったドキュメント。実はこれが一番見たかった。「サクリファイス」は病床からの最終チェックだったのですね。しかしクランクインのころはガンだということすら知らなかったらしい。この若さだけに若年性だったのか・・・本当にこの若さで死ぬなんて惜しい。幻のデビュー作「今日は出張許可が出ない」が一部見られるのも注目だったし、やはりクリスは「ソラリス」と「ストーカー」を中心に話を組み立てているということになるほどと頷かされました。やはりSFの人なんですよね
 「アレクサンドルの墓」
 シュールなコメディ「幸福」で知られるソ連の映画監督メドヴェトキンの伝記フィルム。発掘したのはクリス本人だったのか・・・むむこれはおもしろそうだ。ぜひ見たい。
 「2084」
 ここからSF作品。百年後の労働運動を予測したサイバーパンク作品。依頼とはいえこんな変な作品作ってOKが出てしまうあたりはやはりクリスなんですよね。ぺかぺかした80年代風のSFCGは時代を感じますが、これもキッチュでおもしろい。
 「ビデオ俳句」
 ほんのちょっとの一瞬の風景を詩的に切り取ったビデオ俳句。でもオチがある・・・それは川柳だよ!(^^;
 「レベル5」
 SF的ガジェットの中で検証される沖縄戦。必ずしもSFする必要はなかった気もしないではないですが、この視点で迫るのがクリスなんだと思う。そして、時代を超えて残っていける視線というのはここにあるのかもしれない。
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2013年10月14日

「山形国際ドキュメンタリー映画祭2013」日記その3

 今日はかなり遅くまで見ていたので簡単に。

 コンペ作品
「空低く大地高し」
 タイの赤・黄勢力が対立しての手詰まり状態を描いた作品。そう、こういうの確かに見たかったんですが、少々正攻法すぎて息がつまるといえば息がつまる。あと、語られていることは結構すごいんですが、ポッと置いてあるカメラで延々会話を拾う形式は、少し見ていて眠くなります。もうすこし切り返しなどを入れて工夫してくれないと辛い。

「天からの贈り物 小林村の悲劇」
 連日ものすごいチラシ攻勢で思い切り「賞取りに来て」ます。カンヌとかだと珍しくないロビー活動、とうとう山形でもやるグループが出ましたね。それにつられて見に行ってる私もどうかとは思うが(^^;被災地に群がる利権を描いたかなり正攻法の大作です。で、これも正攻法すぎてやはり眠くなる。今回、壊れた作品はほとんどなくて正攻法の秀作が多いので、はっきり言って辛い。

クリス・マルケル回顧展
「空気の底は赤い」
クリスの政治映画の集大成、なんと3時間あります。小林村を見たもんで最初が少し欠けましたが、後半3分の2くらいは見てる。で、だいたい雰囲気はつかめた。クリスも左翼マニアなんだなあと思うことしきり。そういうのキライじゃないです(^^;最後がアジェンデだというあたりも。

「サン・ソレイユ」
 クリスの82年東京の旅。それをサイバーパンク的な視点でSF的に再構成している。今となっては、80年代の日本自体がわれわれにとっても異国。当時の記憶はないではないですが、こんなに泥臭くて垢抜けない国だったんだ日本は。それでもパックマンとか電光掲示板とかMSDOSコンピューターとかでサイバーパンクを気取ってたんだ。時代を感じますねえ。クリスはインスパイアされて2000年後からやってくる未来人のSFストーリーとかナレーションに入れてるけど。当時はパソコンも携帯もなかったんだということを思い出して愕然となりますね。
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2013年10月13日

「山形国際ドキュメンタリー映画祭2013」2日目

今日はコンペ作品ばかり4本。でも長めのものが多くちょっと疲れました。

「殺人という名の行為」
 前評判が一番高かった大注目作。軍事政権時代のインドネシアでおきた共産主義者大虐殺。世界各地で起きる虐殺の取材を専門に行っているアメリカ人監督が手がけた最新作で、主人公であるギャングの親分は今も大物のままで、虐殺を隠さず誇らしげにすら語る。そこで監督は、その一部始終を映画で再現してみてはどうかと提案する・・・つまりこの映画はそのメイキングなのですが、「ショア−」「クメールルージュの虐殺者たち」といった、虐殺の状況を検証するために当事者に再現を依頼したドキュメンタリーとはちょっと毛色が違う。監督はある企みがあって親分をそそのかすのですが、その結果何が起こるのかというと・・・はっきりいってとても驚いた。こんなことがカメラの前で起きるとはちょっと信じられなかったし、途中までは吐き気を感じて退場したかったけど(グロい意味ではなく親分の悪党ぶりに)、最後まで見て本当によかった。こんなことが起きるのなら映画も捨てたもんじゃない。映画ってある意味すごいのかもしれない。これは劇場公開されるかもなので、要注目です。
「庭園に入れば」
前日語った、モグラビ監督の最新作。旧作にくらべれば少しおとなしい感じがしてしまうのは残念。それでも十分に凝ってるんですけどね。今回は言語の問題を追及してます。
「蜘蛛の糸」
 韓国映画です。韓国語学習者としては、息をつめてじっくり鑑賞しました。150分もあるので少々くたびれましたが(笑)しかしこれはすごい。京畿道の米軍基地周辺で売春婦をしていた女性たちの内面の遍歴を追ったため息が出るほど美しい幻想的ドキュメンタリー。移動撮影を廃し徹底的に固定カメラにこだわってひとつひとつのショットを絵のように見事に磨き上げてみせました。心底圧倒されます。ドキュメンタリーだというのに、どうやって撮ったのだろうと不思議になるほど、画面構成や照明がギリギリまで研磨され、光り輝いています。廃墟を舞台にした後半は「インディア・ソング」もかくやという見事な舞踏映画になっていて、どこから劇映画に踏み込んだのかまったくわからない。これがまたすごい。DVDがあったらぜひほしい。探してみよう。
「パンク・シンドローム」
 これもまたすばらしい。見ていて元気になる。フィンランドを舞台に活躍する、知的障害を持つ四人組によるパンクバンド!時にトチったりケンカしたりするのもご愛敬。割と単純なのかもしれないけど非常にノリのいいビートに乗せて「グループホームなんてくだらねえ!」とか本気の怒りをぶつけてくるのですから。これが燃えずしてなんとしよう。最後は海外ツアーまでやっていっぱしの有名人になってしまう。それも当然。確かにかれらは間違いなくスターでしょう。これを見ていると障害って個性なんだなと本気で思えてくる。上映後、監督からバンドのバッジをもらえました。結構うれしい。
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2013年10月12日

「山形国際ドキュメンタリー映画祭2013」1日目

「山形国際ドキュメンタリー映画祭2013」1日目
 というわけで二年に一度のお楽しみ、広島はリタイアしたので、もう本当にこっちだけ。でも映画ファンとしてはこちらは止められない。映画の最先端の何かが間違いなくここにある。
 朝5時に起きて睡眠二時間で山形入り。おかげで最初のプログラムには間に合ったけどウツラウツラ。ああ(――;

 いつもコンペ中心に見るのですが、今回は特に「クリス・マルケル大回顧展」があるということで、市民会館を中心にカバー。メイン会場の中央公民館大ホールはあまり行けないことになりそう。

コンペ作品
「我々のものではない世界」
 パレスチナ難民青年の一家を描いたまったく平凡ではない苦難にみちたファミリーポートレイト。いわゆる家族映画への強烈なアンチテーゼになってますが、こういうのは、今回もコンペ入りしてるアヴィ・モグラビ監督がもっとひねった形でやっているので、ちょっと・・・ちなみに、この青年、見慣れぬ言語が書かれたTシャツを着てひどい目に遭います。「そんな変な言葉はヘブライ語に違いない」って。で実は何が書いてあるかというと
「ウルトラマン7」
と書いてある(本当!)で、映画の中で青年は何が書かれているかわからずじまいで終わってしまいます。「ウルトラマン7」と書かれたTシャツのままで(笑)
「ジプシーバルセロナ」
 全編派手なフラメンコが鳴り響くにぎやかな作品。で、会場は満杯です。フラメンコ人気あるなーでも、練習風景が延々続き最後に本番があるだけだからちょっと退屈。
「チョール 国境の沈む島」
これは地味かと思いきや、予想外におもしろかった。インドとバングラディシュの国境にある中州の集落が舞台。でも、ガンジスのおかげで浸食され日々場所が移動している。そこに暮らすしかない人々は常に不安にさらされ、引っ越しを余儀なくされる。毎日、氷山が崩れるように端から泥が崩落していくのですが、その光景は驚くほど美しい。全編、ターナーの絵画のような美しい画面に圧倒されます。でもとても悲惨な世界。
「祖国か死か」
 社会主義国も少なくなり、物資不足に悩むキューバの苦悩を描いた作品・・・なんだけど、北朝鮮とか旧ソ連と違って、軍隊とか官憲が威張ってなくて、みんななんだか楽しそう。確かに建物はボロボロ、商店には物はない。でも、みんな飢えてはいないし、歌って踊ってそれなりに楽しく日々を暮らしている。なんかキューバに行ってみたくなってしまった。

クリス・マルケル回顧展

「彫像もまた死す」
 コンペ作品の合間にすり抜けるようにして見た30分の作品。アフリカ芸術を人文的ではなく芸術的価値で語ろうという熱いメッセージ作品。時代を考えると先見性は驚くばかりだけど、同時通訳の男性がガチガチにアガってしまって、ドモるは口ごもるはトチるはと何言ってるかわからない。途中でイヤホン外してしまった。

「宇宙飛行士」「ラ・ジュテ」「もしラクダを四頭持っていたら」「エクリプス」
 SF映画特集・・・かと思いきやスチール映画特集なのでした。「宇宙飛行士」は実は見たことがあった。DVD「愛の島ゴド−」に収録されてます。クリス・マルケルは制作協力で東欧の監督さんによるSFアニメですが、スチールを使ったドタバタなSF世界がとても楽しい。35ミリで見られるのはありがたいけど、真っ赤に変色してた残念。
 「ラ・ジュテ」はやはり傑作。35ミリは意外に初めてかもしれない。でも傑作ですね。SFファンなら見ておきたい。「もしラクダ」は、SFではなく彼のスチール作品が多数使用されてますがエッセイ映画。かなりSFっぽい合成作品も多くておもしろいんですが。45分は少々長い。「エクリプス」は日食を見る人々を撮った冗談みたいな作品おもしろいけど10分は長いなあ。
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2013年09月02日

「パシフィック・リム」

 本日は映画の日、というわけで、昨日は久々に映画見ました。いやー封切映画見ること自体が久々ですね。

 

 いろいろな方面から反響が寄せられてる話題作。なるほどー

 まあ個人的な最大の関心は実はこの超豪華すぎる声優陣でして。生まれて初めて「これは吹き替えで見なくては」と固く決意しましたよ。3Dは極めてじゃまっけでしたが。本当、ただ見にくいだけでした。2D吹き替えがベストなんじゃないかなあ。

 玄田哲章の長官、痺れます!実質彼でもってるなあ、この映画。主役コンビが杉田智和と林原めぐみというのもよくわかってますが。「ロケットパーンチ」と叫ぶ杉田。そんな(^^;管制官が千葉繁って、アドリブが少なくてもったいない気もするんですが、まあ出ずっぱりではあるんですよね。

 マッドサイエンティストの凸凹コンビが、古谷徹と三ツ谷雄二って狙いすぎだろ!何を狙ってるんだ。私はうれしいが。

 この超豪華な面々の中で唯一の素人たるケンドーコバヤシ。大丈夫かなと思ってたんですが、実はまったく気付かなかった。ええ、あのハンニバル・チャオ役だったの?ベテラン声優さんなんだとばかり思ってたよ。お見事。なかなかうまかったじゃないですか。

 んで、私はロボットアニメ自体は大キライなんですが、この映画のロボットは重量感があってなかなかよかったんじゃないでしょうか。重い拳でゴシゴシ殴りあうのが実によろしい。

 ただ、唯一にして致命的な欠陥は、怪獣があまり魅力的ではなかったこと。どんなかっこうしてたか、思い出せます?灰色でぬめぬめしてて不定形で、要するにただの「怪物」でしょう、あれでは。ちょっとがっかりです。「グエムル」レベルだなあ。「怪物」ならあれでもいいんだけど、怪獣が見たいんですよ、オレは。

 ゼットンのあのすばらしく美しいデザインに匹敵するような造形、見たかった。怪獣はヒーローより魅力的じゃないと。
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2013年06月13日

「リアル〜完全なる首長竜の日」

 実はぜんぜん見に行く気なかったんですが、監督が黒沢清だ!と気付いて慌てて行ってきた次第。観客5人でしたわ(^^;



 原作は実は大好きなんです。いまどきこの薄さでここまでオリジナリティのあるミステリとして成立させる手際には拍手を送るしかない。

【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [文庫] / 乾 緑郎...

【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [文庫] / 乾 緑郎 (著); 宝島社 (刊)

 うーん。さすがの黒沢清でもこの映画を手中に収めることはできなかったか。黒沢作品としてはかなり凡作の部類に入ります。そりゃあ、「カリスマ」とか「回路」とかの大傑作に比べる方がおかしいかもしれませんが、プロデューサーの着眼点は悪くはないのですよね。ただ、およそ儲かりそうもない企画の方が生き生きしてくるんですよ、この監督(^^;
 キャスティングも主演の二人はさておき、脇役陣が実に凝ってておもしろい。黒沢映画の常連であるオダギリジョーが怪しげな編集者役とか、キョンキョンがすごい怖いお母さん役とか、そして中谷美紀がものすごく胡散くさい女医役を怪演。これは長く記憶にのこりそう。ある意味中谷美紀でもってる映画だなあ。

 実のところ、特に前半のクロサワホラーのテイストが色濃く出た表現は非常に面白かったんです。第三者が皆ゾンビみたいに見えてしまう表現とか、バーチャル世界のホラーとの親和性を強く感じさせる展開でした。

 しかし後半はあれはちょっとなあ。原作では謎解きが淡々と行われ、現実かひょいとひっくり返るわけですが、それでは絵にならないってことなんですかねえ。首長竜は出てくるけど意味変わってしまってるし。アクションを入れたかったんですよね、たぶん。でもあれでは無意味すぎる。

 黒沢ファンの方も、無理して行くことはないかと(^^;
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2013年06月09日

「三姉妹〜雲南の子」

 中国ドキュメンタリーの鬼才・王兵の最新作。これまで日本ではほぼすべての作品が紹介されていますが、結構話題作として遇されているのをみるとなんだか不思議な気分です。



 標高三千メートルを超える高山地帯に住む中国最貧地区の少女たちを追ったドキュメンタリー。王兵といえばデビュー作「鉄西区」からしてとてつもない作品で、続く「鳳鳴」と山形で唯一2回連続グランプリを制したおそるべき才能の持ち主です。とにかくその後も「名前のない男」に初劇映画「無言歌」とおそるべき衝撃的な作品が連打されており、当然今回も見なくてはと出かけた次第。

 うん、よくできてます。言葉を失うほど壮絶な貧困が論評をはさまずに生の形で描きだされていく課程はいかにも王兵。これだけぴったり寄り添って子供も大人もちっとも気にしないというのはどういうことなんだろう、と思っていたんですが、あの王兵のキャラクターだとそういうこともあるかなと思ったり。

 実は山形映画祭で見かけたことがあるんですが、実はついさっきまで近くで飲んでた非常に影の薄い青年が王兵だと知ってぶったまげました。ものすごく物静かでまったく目立たない。そんな大監督とはとても見えません。この影に潜むキャラクターがこういうドキュメンタリーには絶大な力となるんでしょうね。ある意味ですごいことです。

 ただ、今まで一作ごとにまったく予想もつかない形で映画に関する既製概念をガシガシ壊してきた衝撃のクリエイターでしたので、ちょっとものたりなかったのは確かです。王兵でなければ全面的に賞賛していたでしょう。貧困を通じて現代中国の病巣を痛撃する見事なドキュメンタリーとなっているのですから。でも、そうした作品はその後も中国からたくさん生まれているし、あえて王兵がやるべきことか?と思わないでもない。それよりもなによりも、もっと途方もない何かが見たかった気がする。普通の映画監督には望むべくもないいものねだりなんですけどね。
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2013年06月02日

「藁の盾」

 昨日は映画の日〜というわけで久々に行ってきました。最近、映画の日に行けてなかったからなあ。



 このブログを読んでおられる方ならおわかりのとおり、当方はかなりディープな三池信者。OVMまでわざわざ観るほどではありませんが、普通に劇場公開される作品はほぼカバーする「結構熱心なファン」のつもり。それにしても、結構事前情報を押さえてるつもりでも、予想外のところでとんでもない新作を出すのが三池監督でありまして。

 「逆転裁判」といいこれといい、映画祭報道で「あ、いま公開してるんだ」と知るというのはどうなのか(笑)しかし相変らず手馴れてますね。荒っぽく撮っているようでいて、ちゃんと映画になっているのは、さすが職人だなあと思います。

 芸術至上主義のカンヌでは酷評の嵐だったそうですが(さもありなん)ハリウッドの馬鹿っぽいアクションとは一線を画し非常に苦いテイストを保っているのはさすがだと思います。「最低の人間」を守る、という民主主義の根幹を問うような主題設定にきちんと映像言語で答えている三池監督、さすがです。

 テレビマンの薄っぺらい画像と違って、背景のぼやけた画面に入念な絵づくりが施された跡があるのが三池節といえましょう。左右ではなく奥行きに気を配ってこその映画演出です。

 それにしても、この作品のキーはやはり伊武雅刀と山崎努という名優の存在なくしては語れない。特に山崎努は「サラリーマン金太郎」のころから三池映画に出てるわけですからねえ。やはりなんか感慨深い。とくにラストシーンの鬼気迫る演技には圧倒されました。

 大沢たかおっていわゆる駄作にしか出てないって印象でしたが、演出家に恵まれればこんなにもいい演技をするのかと圧倒されました。感嘆です。すばらしい。まあ、三池監督は本当に演技指導が見事らしいんですけどね。
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2013年05月26日

「恐怖と欲望」

 「2001年宇宙の旅」を歴代洋画ベストワンにしているほどなので、当然キューブリックのことは熱烈に信奉してます。もうあんな大監督は二度と出ないんでしょうね。

 とにかく寡作な人でしたから、当然ほぼすべての作品は見ているのですが、唯一未見だったのが、このデビュー作。キューブリックが「失敗作」と断じて封印していたため観ることがかなわなかったものです。



 見た第一印象。うん、これは封印で正解(笑)

 わずか1時間強しかないのに、死ぬほど退屈でものすごく長く感じました。技術的にはデビュー作とは思えないほどシャープで優れているのに、なんでこうなってしまうのか。撮影と照明が特に素晴らしい。後の「博士の異常な愛情」を思わせる印象的なショットがいくつもありました。

 ストーリーは実に面白そうなんですよ。「虚構の戦争」の話だ、と最初にナレーションが入ります。敵地の真ん中に取り残された小隊が脱出を試みるんだけど、倒す敵はみんな自分たちと同じ顔をしているという。要するに精神分析的な「自己との対決」を戦争映画として描いたものなんですね。

 ところが実際に見てみるとこの最初のナレーションが実に押し付けがましい。ロケシーンは「ただ単にそのへんでウロウロしている」感じで緊張感ゼロだし、抽象的な内面世界らしさはほとんどない。それどころか戦場の緊迫感さえない。

 ところが屋内シーンでは一転してかなりいい感じの絵が撮れているんですね。これはどういうことなのか?

 たぶん若きキューブリックの技量でも、屋内シーンだとかなり完全に画面をコントロールできたってことでしょう。これはむしろ、変にロケとかやらずに空っぽのセットの中で全部撮ったほうが面白くなったかもですね。抽象性も高まって。まだこのころのキューブリックはそういう大胆な演出を思いつくことはできなかったということなのだろうと思います。

 あと、なんといっても編集が悪い。すごく淡々とつないでしまってるし。格闘シーンとかかなりイライラした。

 まあ、今となっては資料的価値しかないのかもしれません。それでも、後のキューブリックのきらめきの片鱗が見られたという意味では、やはり見てよかったと思います。ここで派手に爆死したからこそ、後に何をどうすべきか、学んだということなのだろうし。「シャイニング」とか久々に見たくなりました。
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2013年05月19日

「セデック・バレ」

 いま大阪で話題の台湾映画超大作見てきました。いや、それにしてもこれほど満杯であろうとは…



 だって全2部構成4時間半の超巨編なんですから。私以外誰が見るんだろうと思ってた。

 大阪ではシネヌーヴォと第七芸術の二館でやってるので、より近い第七に行きましたが、まったくのほぼ満席。みんな我慢強いなあ。

 あ、でも眠気覚ましのガム持参でいきましたけどまったく不要でしたね。とにかくスピード感満点で冒頭からラストまでひたすらアクションの連打。しかもえらく画面が美しく、ジャングルの中でのセデック族と日本軍の乱闘は実に迫力ありました。

 題材になってる霧社事件て、普通の先住民蜂起なんだとばかり思ってました。でもどっちかというと宗教戦争に近いのね。狩場を追われて誇りを奪われた先住民たちが怒りの蜂起をする、という映画は過去にもたくさんありますが、まあみんな負け戦なので基本的に悲壮感漂ってます。

 ところがこの作品の場合セデック族は、最初から日本人に勝てるとは思っておらず、禁じられた首狩りを実行することで天国に行く権利を手に入れようとすることが動機なのでした。だからぜんぜん悲愴じゃなく、日本人の首をバッサバッサ落としていく姿はなんか魅了にスカッとする。こちら悪役サイドの日本人なんですけどね。大阪アジア映画祭で観客賞を取ったというのにも納得。画面がキレイだからというのもあるかもしれない。

 キレイといえば主人公の先住民たちもみんな本物。そしてみんなびっくりするほど男前。

 日本人サイドも薄っぺらい悪役じゃなく、結構キャラが描きこまれているのが好感持てます。インテリ肌の安藤政信とか愛嬌のあるキム兄とか。キム兄は大虐殺の中にあっても「おれだって侍の子孫だ」と毅然と戦いに挑むなど、なかなか見ごたえのあるカットもらってましたね。

 監督が言っているとおりいわゆるペラい反日映画ではないんですね。セデック族は最初の襲撃で子供や女性など日本人を根こそぎ虐殺してしまっているし。その残虐さも見せておいて、「文明とは野蛮とはなんだろう」と考えさせる。それがこの映画のすごさです。確かにセデック族は首狩りを禁じられて誇りを奪われてしまうのですが、20世紀直前まで首狩りができたというのはある意味ものすごく遅い。

 確かに植民地主義は野蛮そのものだし台湾の資源を根こそぎ収奪した罪悪は消えるものではありませんが、じゃあ彼らの民族の誇りのために首狩りを許すのか、と問われたらそれはそれで困ってしまう。ある意味、彼らの信仰というのは戦争賛美そのものですからね。この映画でも第二部で子供たちが嬉々として人殺しに活躍する様は見ていてものすごく抵抗感ありました。それこそ活躍すればするほどね。そういったあたりも監督は計算のうちなのでしょう。

 結局のところどこかの阿呆な市長のように「仕方なかった」とか訳知り顔で言って正当化しても損害を与えた相手に失礼なだけで、世界中からは軽蔑されるしいいこと何もない。「やらずに済んだんじゃないか」と悔いてみても何にもならないし、結局、やってしまったことについてはくどくど言い訳せず謝るしかない。その上で「これからどうしよう」と考えていくしかないのでしょうね。本当にしみじみそう思いました。そんな映画。
posted by てんちょ at 02:30| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月09日

「ベルトリッチの分身」「殺し」「革命前夜」

 イタリア映画の巨匠ベルトリッチの初期三作品を一気に公開。というわけでGWを使って一気に見てきました。

 

 ハリウッド行った後のベルトリッチはイマイチなんですが、初期のものは本当にすばらしい。「暗殺のオペラ」とか「暗殺の森」とか。

 それで見逃していた三作品が一気に見られるということなら行かない手はない。

「ベルトリッチの分身」

 一応今回の目玉で日本初公開なんですが、なんか「あー未公開だったのも道理で」という感じ。ちょっとがっかりでした。なんかまったくゴダールの真似なんですね。こけおどしなところもキザなところも最後投げっぱなしなところも(笑)というわけできっちり沈没。どうして私はこうゴダールタイプに弱いのか。

「殺し」

 CSで最初30分見て挫折してたんですが、映画館だと一気に見られました。やはり映画館向きの素材かと。ただ、これ「羅生門」から影響を受けているのは確かですけど、決してミステリ映画ではなくて、ネオリアリスモの系列に入る作品ですね。貧しさから生まれる嘘と悲劇。

「革命前夜」

 いやあすばらしい。主人公が恋する若き叔母がすごく色っぽくてホレてまいますね。共産主義に夢を抱いたけど、結局夢破れ自分が嫌悪したブルジョアの世界に帰っていく…とても良質な青春映画と思いました。たぶん今後はベルトリッチのベストのひとつとして推すことになるでしょう。 
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2013年05月08日

「久里洋二の全仕事」Cプログラム

 京都に行ったついでにみなみ会館で見てきました。なかなかちゃんと見られないのですが、まあこうやって少しずつ消化していけるのは結構なことです。



 Bプロ見た時の感想はこちら。

http://tenchyo.seesaa.net/article/323477280.html

 そして今回は視聴済みの作品が多く、古い作品は見返してみると荒が目立つ。「二匹のサンマ」のモノクロ版なんて、22分はどう考えても長すぎ。後にずっと完成度がアップしたカラー版が作られたのもなんか納得の展開でした。「隣の野郎」「窓」「サドの卵」も、悪くはないんだけど、久里作品の中ではどちらかというとマイナー。このプログラムでは断然後半が面白いです。というわけで、個別の感想はそのあたりから。

 「フロイトの木」
 広島でも一度見ていますがいわゆる「うまい油絵」の久里洋二が楽しめる後期の秀作。マジに画力があるところをこれでもかと見せてくれます。久里版「灰色のめんどり」なんだけど、シュルレアル要素が強調されているあたりがとても「らしい」感じですばらしい。

 「幻想の喜劇」
 フリューゲルを一発コントの連打にしてみせるあたりはマンガ家としてのセンスの良さ。コントとブリューゲルのパロディアニメを交互に見せることでリズムを与えるあたりはなかなか秀逸。

 「人口爆発」
 いかにも70年代的ですねえ。「見ろ、人がゴミのようだ」的な陰鬱なブラックコメディはこれに限らず70年代にたくさん見ましたが、まさか少子化の時代が来るとは。だからこのネガティヴなトーンはやや時代遅れなのですが、それはそれで味わいがあります。

 「進化」
 うーん。これヒロシマで見たっけ?ちょっと思い出せないのですが、ラストの秀逸さが忘れ難い。

 「漫画」
 これは本当に面白い。「殺人狂時代」は確かに代表作だけど、飽きるぐらい何度も見てしまったので、後期のこの作品が今とっては妙に斬新。結構不思議に吹いてしまうのです。DVDで気軽に見られるのは喜ばしいかぎり。

 「フンコロガシ」
 近年、アニメ制作を再開した後で作られた作品。うーん。全盛期からみればずいぶんパワーダウンしてるのは否めないけど。でもこれはこれで楽しめるかな。
posted by てんちょ at 03:03| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月30日

「コズモポリス」

 デイヴィッド・クローネンバーグの最新作。って、本当に頻繁に新作撮りますねえ。もう立派な巨匠なんだから、もう少し出し惜しみしてたまに撮るぐらいの方がありがたみがあっていいのに。



 それにしてもどんどん文学趣味になるな、この人(^^;こんどはドン・デリーロか。サブプライムショック後の経済的荒廃を寓話的に描いたものということでしょうか。

 ウォール街の若き資産家が破滅するまでの24時間を、巨大リムジンの中を舞台に描いていきます。大統領暗殺計画を巡る混乱で渋滞しきったNYの街をただ髪を切るために強引に横切ろうとして暴動に出くわし、次々車に乗り込んでくる部下たちからは責めさいなまれ、どんどん狂気に追い込まれていく…

 こういう展開は、小説だったら緊張感が出て面白いんだけど、映画でやったら、すごいどんよりして単調なだけではないだろうか。いやマジで(^^;ほんとう、見ていてどんよりしたよ。yahoo映画評が★1コの嵐になってたのも無理はない。そこまでひどいとは思わないけど、まあ、クローネンバーグの映画としては駄作の部類なのは確かでしょう。あまりにも虚無的すぎる。

 仕掛けだらけな巨大リムジンのメカフェチな描写はクローネンバーグらしいし面白かったけど、そんなん早々もちませんで。

 やっぱりこういう展開だったら、「アメリカンサイコ」の方がど直球で私好みだったなあ。
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2013年04月24日

「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」

 春アニメも一段落したので、久々に映画とか行きますか。これ、結構好きなドキュメンタリーシリーズなんですね。はや第二弾。今回も面白かった。



 アートコレクターの老夫婦が生涯に集めたとんでもない量の現代美術コレクション。自分たちの給料で買える値段でコツコツ若手作家を買い進め、世界屈指の規模に到達してしまった、というのがまずすごい。それがあまりに膨大になったのでワシントンギャラリーに寄贈することになった、という騒動記が前回。

 自分自身が絵を描かなくても、審美眼だけでここまでのことを成し遂げることができるのか、となんか感動しましたね。前回は。

 そして今回は「あまりにコレクションが膨大すぎたので、全米50州に50点ずつ寄贈することになりました…」ってなんぼほど買ったんや(^^;その寄贈して廻る奇妙な漫遊記が今回の眼目。

 今回はさすがに前回ほど面白くはないかな、と思っていたんですが、ナメてましたね。すいません。コレクションの膨大さ、それに伴うアーティストとの交流のだけでもものすごい。クリストやコスタビまで出てくるんだから!そして二人のまったくえらぶらないマイペースな小市民ぶりが実に癒される。

 人生にアートは必要か?とよく言われますが、うん、必要。この映画を見たら自信を持っていい切れる。だって、アートがあれば人生がこんになにも楽しく元気になれるのだから。
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2013年02月18日

「久里洋二の全仕事」Bプロ

 アートアニメとはほとんど決別していますが、やはりそれはCGのせいであって、それ以前の世代、特に久里洋二は今見てもやっぱりすごいというほかない。今回こうして改めて見る機会が得られたのは本当にラッキー。かなり変な時間帯の上映で全3プロのうちひとつしか見られないのは痛恨事だけど。

 もちろん久里作品の代表作は今でもDVDで容易に見ることができる。

久里洋二作品集 [DVD] / 久里洋二 (監督)

久里洋二作品集 [DVD] / 久里洋二 (監督)

 ただ、これで完璧ではなくて、非常にすばらしい出来栄えだったLD版からいくつも脱落がある。そしてそれ以外にもまだまだすごい作品があることが感じさせられる今回のラインナップ。今までヒロシマでかなり拾ってきましたけど、それでもまだまだあるなあと実感。

「あっちはこっち」
 なんと25分を超す大作。たぶんフィルモグラフィー中でも最長と思われます。この作品が見たいがためにBプロを選んだようなもの。他のプログラムでも未見作品はちょっとずつ含まれてますが、だいたい20〜30分ぐらい。本当、悩ましい。まあ、長いとはいえごく初期のモノクロ作品であり、シュールなショートギャグ集といったところ。少し長すぎるなあと思わないでもないのですが、まだ未整理の生々しいイメージの数々が今となってはとても貴重。

「人間動物園」
 代表作中の代表作ですが、実はいつ見ても「??」となってた。今回初めて「傑作」と確信が持てました。遅すぎ。アートアニメが技術オリンピックと化してしまった現在から見れば、ほとんど動かないリミテッドアニメで男女のSM的闘争を描いた挑発的な表現は本当にとんでもなかったと思う。

「愛」
 これも前衛的な作品ですが、ギリギリまで表現を削ったことで見えてくるものがある。それが分かるようになるためには、結構年を重ねる必要がありました。いろいろと思うところがある。今となっては。

「さむらい」
 一種のジャポニズムパロディ的ドタバタなんだけど、唯一ウトウトしてしまった。よく動いてるんですが、動き方が旧来のアニメに一番近いせいかもしれない。

「マラソン」
 未見作品。どうやって早く走るかについてのパロディ的アイデア集。しかし、走っている人が手足がバタバタしてるだけ、上下にまったく動かないという超手抜き作画で今ではかんがえられない。でもそういう描き方だからこそ面白いというのはあるのですよ。

「エゴイスト」
 未見作品。1980年代、制作がだんだん間遠になるころの作品。確かにギャグの切れが失われ、シュールもただの意味不明になってしまっている。ここから長いスランプに入るのも無理はない…

「男と女と犬」「ケメ子のLOVE」
 「男と女と犬」は「人間動物園」の、「ケメ子のLOVE」は「LOVE」のリメイク、とされていますがぜんぜん違う。ふたつともただのミュージックフィルムになってしまっているのが興味深いといえば興味深い。

「寄生虫の一夜」
 最高傑作。何度見てもやはりすごい。富田勲のシンセ音楽もとってもクール。ボッシュをモチーフとしつつも、宗教批判から離れ、シュールで被虐的な饗宴が展開される。久里洋二であえて一本、時代を超えて残したい作品は、と問われるならこれですね。ソフト帽の男女は登場せず、絵のタッチも微妙に違う。でも久里美学の間違いない到達点。必ず一度見てほしい。
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2013年02月07日

「塀の中のジュリアスシーザー」

 先日、映画の日を幸い、東京で見た作品です。久々のタヴィアーニ兄弟ですねー最近はなかなか劇場公開されなくなって「笑う男」とか「ああ、これはしんどいなあ」と思ったものでしたが。



 なるほどこれはシンプルですばらしい。凝りすぎて難解だった最近の作品がウソみたいにすっきりとした75分。そもそも75分なんて小品、最近では珍しいですよ。

 実際に刑務所内でシェイクスピア演劇をやっている囚人たちを追いかけた話…というとドキュメンタリーみたいですが、必ずしもそうでもない。本来は舞台の上だけでやる演劇を刑務所全体を使って「劇映画」として再構成してしまおうという大胆な試み。相手は勝手知ったるタヴィアーニ番俳優じゃなくてれっきとした犯罪者。もちろん刑務所側の協力を得るのも大変だったろうし、囚人に演技をつけるのは大変だったと思う。

 それでも、独特のストイックな美が立ち現れたのは見事なものです。そぎ落としすぎて少々眠たくなりましたけどね(^^;でも囚人たちの俳優としてのうまさはびっくりするほど。実際、主演した囚人は出獄後にプロの俳優になってしまったというのだから大したものです。芸術の渇望はどこにでも生まれ、芸術はどこでもなすことができる。そんな話です。いわば。
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2013年01月29日

「ホビット 思いがけない冒険」

 アニメラッシュもひと段落したので、この冬見た映画もぼつぼつ書いていきましょう。



 もともと「指輪物語」からの原作ファンとしては、こうして「ホビットの冒険」の方も無事映画化されたのはうれしい限り。ガンダルフのイアン・マッケランを見るだけでなんだかうれしくなる。

 ただ、個人的には前シリーズとの整合性を重視して意地でも2Dで見るつもり。これまた劇場が少なくて苦労しましたが。そこまで3Dで見せたいかな。

 それにしても長大な「指輪物語」と違って、岩波少年文庫で上下二巻しかない「ホビットの冒険」をわざわざ三部作にする必要あるかなーまあ、長く楽しみたいという監督の気持ちも分からないではないですが。追補篇から膨大にエピソードが追加されてるとのことなので、そこは楽しんでみていきたいですね。追補篇、ほとんどどんなエピソードだったか忘れてるんだけどこんな話だっけ(^^;

 まあ何にせよ迫力あるアクションあってこその映画版なんですが、前回の講談調のカタルシスとうってかわって結構痛い肉弾戦が結構含まれていたのはちょい残念。今回は童話原作ですからねえ。なるべくならスカッと楽しめるものにしてほしい。ゴブリンの王の腹をザクッと切るとことか結構痛かったよ(^−^:

 まあ何にしても第一部だからこんなもんでしょうか。次も楽しみに待ってます。贅沢はいえませんが「これを入れるのか」という驚きの要素とかほしいですね。エピソード足すのであれば。
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2013年01月18日

「フランケンウィニー」

 新春スタートのアニメ評の最中ですが、行って来ましたので久々に映画の話でも。



 というのもこの映画、大半の劇場では本日で終わってしまうので。1ヶ月で終映。最近のバートンの映画としては大コケと言っていいでしょう。だってこの日見た回は、私一人だけだよ?マイナーなミニシアターやオフシアターじゃなくて、梅田の大手シネコンで1人上映なんて初めてですよ。まあ、豪華といえば豪華だが。めったにできる体験じゃない。

 なにが最大の失敗って、ディズニーはこの映画を子供向けとして売ろうとしたみたいだということでしょう。吹き替え・3D中心で字幕2Dが見られるのは都会のごく一部の映画館だけ。

 でも、バートンのイラストそのもののグロテスクなCGキャラたちが蠢くマニアックな作品を子供が見に行くわけがない。バートンのファンの中でもごくごく一部のマニアだけでしょう、こういうのが好きなのは。「ナイトメアビフォアクリスマス」は確かにヒットしたけど、あれあくまでお化けの世界の話ですからね。普通の郊外住宅の住人たちが異形のように描かれた作品を一般観客が受け入れるはずがない。

 まあでも「オイスターボーイ」など陰鬱なバートンのイラストが好きな身からすれば、今回は久々に「バートンが帰ってきてくれた!」という感じ。マッドサイエンティストのような理科教師、せむし男のような同級生、化け物じみた住民たち…そして屈折した孤独な主人公・ヴィクターはまさしくバートンの分身。たぶんバートンには世界がこのようにしか見えないのだろうと思います。むしろここのところの「勝ち組賛歌」の方がおかしかったというべきで。

 ちなみに今回のポイントは、初めてバートン作品に登場する日本人少年トシアキ。ステロタイプな釣り目には「やれやれ」と溜息をついてしまいますが…そこは仕方ない。他のキャラも歪んでてまともな人間は一人もいませんから。それにしてもこのトシアキ、クラスのリーダーにしてガキ大将、野球では完全試合を記録する無敵のエース、学年きっての秀才で、ヴィクターにも負けないくらいの映画ヲタクでもある…って、いろいろなんだか混ぜすぎだ(^^;バートン映画のガキ大将に野茂と金子修介を混ぜた感じ。って、そんな奴おらんわ!(^^;

 まあ、バートンの日本への憧れと嫉妬が混ざり合った妙なキャラで、これは結構見所。クライマックスではトシアキが作り出した巨大ガメラがカーニバルを襲う!って子供が見ても「??」だろうに。長年のファンとしてはうれしくてしょうがなかったけど。

 この作品、やはり字幕2Dで見るのが一番しっくりきます。ある意味往年のモノクロスタンダードB級ホラーへのオマージュですからね。3D吹き替えを標準としたディズニーの方針は理解できない。

 ただ、最後とってつけたようなハッピーエンドになるのはちょっとがっかり。パパが「生き物を安易に甦らせるな」とヴィクターを叱ったのが正論であるはずなのに、なんでこんな安っぽいラストになるかなーそこだけは本当に残念。

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2012年12月04日

「雪之丞変化」

 容易に見られるのは市川昆のリメイク版ですが、映画史上に名高い傑作はこちら。衣笠貞之助監督の代表作で、



 ただし、残念ながら全3部の壮大な物語は完全な形では残っておらず、100分弱の総集編が残るのみ。まあ総集編でも「戦国群盗伝」とか、うまく鋏が入れてあればむしろスピード感を増してうまく楽しめるんですが、どうも戦後に総集編が作られた当時にも切れ切れにしか残っておらず、欠落した部分をナレーションで埋めた慌しいバージョンなのが残念。冗長な部分をカットしたわけではなくて、欠けている部分を補っているだけだから、すごく重要な部分がひょっこりなかったりするわけで。

【VHSです】雪之丞変化 (1935年)|中古ビデオ【中古】

【VHSです】雪之丞変化 (1935年)|中古ビデオ【中古】

 とはいえ、ストーリーははっきり言ってご都合主義の産物。女形役者の壮絶な復讐劇なのですが、見るほどにストーリーはあんまり重要ではないなと思ってしまう。ただ、林長次郎の存在感はすばらしく、一世一代のはまり役ともてはやされたのもさもありなんという感じ。伊藤大輔のテンポのいい脚本と衣笠貞之助のシャープな演出は見事というほかない。そのあたりの味わいはこの総集編でも存分に味わうことができます。まあ、でもアレだなあ。すこし繋ぎ方がおかしい部分もあったりするし。できれば修復版とか作った方がいいんじゃないかと思う。
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2012年12月03日

「悪の教典」

 監督が三池さんだから仕方ないじゃないですか(^^;原作の貴志祐介はあまり好きじゃないし、題材的にもまあ、喜んで見たいタイプのものではない。



 しかし「バトルロワイヤル」以降(といっても大分たつけど)、最近の若い人こういうの好きですねえ。場内は若いカップルでいっぱいだった。どう見てもデート向きの映画じゃないだろ、これ(^^;

 はっきり言って、いろいろと見ていて疑問が浮かぶ映画でした。予告編らにも出てくるショットガンを学校で振り回して虐殺を始めるシーン、冗談かと思ったら本当に出てくるんで驚いた(ウソ)。まあでも冗談扱いしたくもなりますよ。特に取り返しのつかない形で決定的にバレたというわけでもないのに、何の理由もなくいきなり大量虐殺始めますから。あんたはウラジミール・ソローキンの「ロマン」か。

ロマン〈1〉 (文学の冒険) [単行本] / ウラジーミル ソローキン (著); 望月 哲男 ...

ロマン〈2〉 (文学の冒険) [単行本] / ウラジーミル ソローキン (著); 望月 哲男 (翻訳); 国書刊行会 (刊)

 原作未読ですが、どうやらそもそも原作がこんな感じらしい。だとしたらちょっとひどいなあ。まあ、虐殺シーンでは人体損壊はほとんど見せず、ひたすら恐怖におののき逃げ回る生徒たちの姿を撮り続けるので、見ていてすごくイヤな気分になる。残酷なシーンが最小限に抑えられているにもかかわらず、ものすごくエグいものを見たような感覚におそわれるのです。

 これはおそらく、三池監督なりの原作への皮肉というか、観客への風刺なんだろうなあ。あんた方が見たいものを映画にするとこうなるんですが、見ていて楽しいですか?と。三池さんのいつものバイオレンス描写はもう少しマンガ的でギャグっぽいので、そういう路線を期待したのですが、ちょっと残念。かなり真面目なモラリストとしての側面があるのは意外でしたが。

 とはいえ確かに伊藤英明の演技はすばらしい。「陰陽師」の時の大根ぶりがウソのようです。まあ、あれからいろいろがんばったんでしょうが、三池監督の力量のすばらしさということもあるでしょう。役者をおだてて一瞬でいい演技を引き出すのは最高にうまい人らしいので。助演陣では吹越満の物理教師・釣井がすばらしいかった。生徒陣はまあ、若いから仕方ないけど、それなりの演技。

 結構な大作のはずですが、ガラクタと廃物の美術の中でコンパクトに収めてしまうのがいかにも三池流ですよね。主人公・ハスミンの住んでいるのは、悪の秘密結社みたいな廃屋。廃屋好きですねえ。前半なんてボロボロのライトバンに乗って出てくるし。農家のオヤジか。立派な家に住んでいる方が殺人鬼としての凄みが出るとは思うんですが、そうするとかぎりなくテレビ的にうすっぺらくなる。

 ガラクタを山と使ってそれでも堂々たる「映画」に仕上げてしまうのはさすが世界の三池、という感じでしたよ。個人的には「愛と誠」みたいなお笑い路線の方がずっと好きですけどね。売れるのはこっちなんだろうなあ。ちょっとそこが残念。
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2012年11月24日

「映画と恋とウディ・アレン」

 うちの家族はアレンのコメディを深く深く愛しているのですが、私はどうかな?好きな作品はすごく好きだけど、まあ見たいとすら思わずスルーした作品も多く…なんと今まで40本以上撮っているそうですが、私が見たのはせいぜい10本。初期のアナーキーなコメディと「アニー・ホール」とか「カイロの紫のバラ」とか最近では「タロットカード殺人事件」とかも好きですが…



 新作「恋のロンドン狂騒曲」公開に合わせてその先触れとして公開されたドキュメンタリー。せっかくだからと家族と二人で見に行ってきました。いやあ面白かった。サービス精神旺盛にしゃべりまくるアレンにすっかり笑わされてしまい、2時間たっぷり楽しませてもらいました。

 これまでの作品を一気に振りかえっていくのですが、場面のチョイスが絶妙で、その時々の人生とうまくリンクする形になっているし単体でも笑えるものだから、ついつい見たくなってしまう。「マンハッタン」とか文芸映画と勘違いしてスルーしてましたが、結構笑えるのね。さっそく帰宅後、DVDを数枚、アマゾンでポチッてしまいました。むう安い。1000円しないとは。

 あ、映画内ではあまり触れられていませんでしたけど、アレンの出演オンリー作品は結構好きですよ。「カジノロワイヤル」とか「ボギー俺も男だ」とかね。私は監督としてよりもコメディアンとしての彼がすきなのかもしれない。
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2012年11月21日

「シザーハンズ」

 午前十時の映画祭、おかげさまでいろいろ見てきましたが、ようやくこれを見ることができました。うちの家族からは「まだ見てなかったの?」と言われてしまいました。まあ映画好きを名乗ってる割には恥ずかしい話ではありますが、いやどうしてもフィルムで劇場で見たかったんだよ!

シザーハンズ(特別編) [DVD] / ジョニー・デップ, ウィノナ・ライダー, ダイアン・ウ...

シザーハンズ(特別編) [DVD] / ジョニー・デップ, ウィノナ・ライダー, ダイアン・ウィースト (出演); ティム・バートン (監督)

 まさかこんなにも名画座が壊滅して映画館でみることができない時代が来るとは思ってませんでしたけどね。ちなみに私がバートンを意識して見始めたのは「バットマン」から。その後はほぼリアルタイムで追いかけているけど、本当に面白いと思ったのは「エド・ウッド」とか「マーズアタック!」とかごく少数。

 絵づくりはいつも端正だし平均点は異常に高い人ですけどね。だから木戸台はきっちり見合うだけのものは見せてくれるけど、そこからプラスアルファってのはなかなか。特に最近は子供ができて人生成功してすっかり勝ち組意識が濃厚になってしまったのが残念。やっぱり弱者の味方であってこそのバートンだと思うし、その点ではこの作品は本当に名作の名に恥じない。

 文字通りの傑作とはこのことでしょう。芸術に長けていてでも人と触れ合うことができないという主人公の姿は監督本人、そしてヲタクのメタファーそのものですが、決して甘甘な展開とはせず残酷な童話とでもいうべき苦さを保ったのは見事。ものめずらしさからちやほやした周囲がほんのささいなことから手の平を返すという展開もいかにもありそう。

 もちろん、博士役のヴィンセント・プライスは見事のひとことで、彼のそれまでのキャリアも背後に感じさせて痺れるものがある。バートンのデビュー作短編「ヴィンセント」を思い出してしまいましたよ。

 ちなみに、新参者があっという間にオバさんのネットワークで肴にされていくという展開は、個人的に他人事じゃなかったですよ。今の住所に越してきてからというもの、オバさんたちの噂話の格好の餌食になってしまいましたから。その後回覧板がまわってきまして
「怪しげな若い男が町内の庭をうろついているのが目撃されています。ご注意ください」
って、それたぶんオレだよ!(^^;
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2012年11月16日

「ミステリーズ 運命のリスボン」

 全上映時間堂々4時間25分。最近、長い映画ばかり見てる気がするなー



 恥ずかしながらフランス映画を代表する巨匠・ラウル・ルイスのことはぜんぜん知りませんでした。この作品も、パウロ・ブランコが製作しマノエル・ド・オリヴェイラも好むカミロ・カステロ・ブランコの原作を基にしたポルトガル舞台の作品ということで見に行きました。結構前衛的な作品が多いということでほとんど公開されないままのようですが、生涯に100本以上の作品を撮ったというのはまさしく驚異。今後紹介が進むといいなあ。

 実際、映画は長さを感じている間もないほどに次から次へといろいろなことが起こり、退屈している間などありません。ほとんど前世紀のメロドラマか歌舞伎・文楽あたりでよく出てくるネタで、荒唐無稽もいいところなんですが、そのバカバカしさをよく理解したうえでさらに非現実的な世界へリンクしていくので、まったく呆然とするばかり。芋蔓式に人が繋がり、どんどんあり得ないような方向に転がっていき、最後には誰が主人公なのかすら判然としなくなってしまう。まさしく眩暈がしそう。なんなんだろうこの作品。特にラストシーンの皮肉っぽいひねりはいかにも現代的なんですが、驚くことに、これは原作から既にあった設定のようで、ブランコの原作小説が読んでみたくなりました。

 ストーリーを紹介するとネタバレになってしまうのが難しいところなんですが、「ポルトガルのミステリー」という原題は伊達じゃないです。通俗的メロドラマの荒唐無稽さを推理小説的なタッチで再構成してみせたのが本作品というところでしょうか。殺人こそおきませんが全編謎だらけ。思わせぶりな描写は結構丁寧に解説してくれますが、一箇所だけ放置されている部分があって、これが謎を解く鍵なのかなと思ったりもします。
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2012年11月09日

「演劇」1&2

 「選挙」「精神」などクールな人間観察ドキュメンタリーで知られる想田和弘監督の最新作は全2部堂々5時間半を超える超大作でした。でも見てきました(^^;



 平田オリザという人は、劇作家というよりは演劇理論家というイメージが大きい。たぶんロボット演劇のイメージが強いんだろうな。そのあたりの話は「2」の方で見ることができます。

 抑揚や語るスピード、立ち位置や首の傾け方まで100%俳優をコントロールすることによって出現するイメージ空間を使って表現していく、独特の演出方法がとても興味深い。俳優に「役になりきる」ことを求めるスタニスラフスキーシステムへの強烈なアンチテーゼ。ある意味でとても痛快でクールです。

 「1」では、その徹底的な俳優管理ぶりを、「2」では外国語劇や学生向けワークショップ、そしてロボット演劇に至る応用形の数々が語られることになります。したがって、バラエティ豊かな「2」の方が断然面白い。「ロボットと俳優への演技指導はどちらもまったく同じ」という平田氏の言葉は大変ショッキングですが「まあそうだろうなあ」という感じ。そして、ロボットがいかにも心を持っているように見えてしまう不思議。今後梅田駅前で上演されていくそうですが、これは売れる。SFファンとしてもこれからが気になりますね。
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2012年11月07日

1+1=11

 矢崎仁司という映画監督が好きです。衝撃を受けたのはデビュー作「三月のライオン」。記憶喪失になった兄のもとに彼を恋する妹が恋人だと偽って近づく、という息の詰まりそうなほど危険な、でもすばらしく美しい物語。お兄ちゃんに迫る妹ネタはいまや小山のように一大ジャンルを成していますが、背徳感を表現できているものは皆無ですね。

三月のライオン [DVD]

三月のライオン [DVD]

 ものすごく寡作な人で、現在までに制作した作品はわずかに7本。4時間の超大作「花を摘む少女 虫を殺す少女」は今も忘れがたい。そして、長いのにとてもエロいんですよ。普通この長さでエロかったらさすがに飽きてうんざりしてしまうと思うんですが(愛のコリーダ2000とか2時間でもツラかった)、呆然とするままにどっぷりと官能美の世界に浸ってしまう。その後の「ストロベリーショートケイクス」は少女マンガ的世界なのにこれまたエロい。これは大ヒットしたらしい。納得。

 その後2本撮ってるみたいですけど、気付かなかった。雇われ監督であまり監督がアピールされなかったのかもしれない。「スイートリトルライズ」「不倫純愛」。レンタル屋で探してみようか。

 で、今回は久々に矢崎監督を前面に押し立てての上映。でもすごく地味。うーん。

 まあ、67分という尺はいかんせん物足りない短さですねえ。素人をワークショップで育成する「映画24区」プロジェクトの一環とかで、即興的な演出による断片的なエピソードがあまり有機的に結びついていかないうらみがあります。やはり俳優の経験の浅さがマイナスになってるのか…

 山中貞雄の「人情紙風船」をベースにしているというんだけど、そういう感じはぜんぜんしませんでした。残念ながら。ただ、ところどころエロティックな演出の艶はやはりすばらしい。これで俳優がもう少し動けていればねえ…残念です。
posted by てんちょ at 02:05| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする