2005年11月12日

絶対少年第25話「穴と水玉は同時に認識できないこと」

 あっけにとられた方も多いのではないでしょうか。これ、本当に次回で終わるの?と。

 何しろ今回のサブタイトルは「世界の皮膜が穴だらけ」。すさまじい大スペクタクルが見られるものと期待が高かったはずです。私も目覚ましをかけて早朝からスタンバイ。本日ばかりはまばたきもできぬと、息を詰めて見守っていたわけですが…

 あれ?これだけ?そもそも「穴」はどこ?

 私も見終わった瞬間、頭を抱えました。しかし、まあこのゆるやかな叙述速度こそが「絶対少年」の固有のカラーなのであり、最後までそれは守られるということなのでしょう。最終回を黙って待つより仕方ありません。

Green Onion」の万年青さんが、こう指摘しておられます。

>絶対少年は製作者側が視聴者に考えることを強いているんだと思います。

 これはまさしくその通りで、毎回居心地の悪い思いで見終える視聴者は、頭を振り絞ってあれこれと考えざるをえない。そのための足がかりは作品のあちこちに残されていて、それは民俗学だったり、大脳生理学だったり、生物学や進化論だったりします。いかにもSFチックなファーストコンタクト論も含まれているのはご愛敬。

 ただ、どれかひとつですべてを説明し尽くすことはできない。複数の理論を微妙に組み合わせて、視聴者がそれぞれ独自の理論を構築しなくてはならないのです。見続けることは、どうしても自分なりの理論を作ることになってしまう。
 それまで淡々とストーリーを追うにとどめていたブログが次々とその週のストーリーを語るのをやめ、考えを語り始めたのはこのアニメならではの特性に基づくことなのかもしれません。まさしく、語らずにはいられない。
 
 ならば、お前の考えはどうなのか。

 そうですね。やはり「穴」というのはマテリアルフェアリーのことだと思いますよ。
 先週の予告編でタルトたちが言っていたことが大きなヒントになるのではないでしょうか。水玉柄は見方によっては穴でもある。
 ベタな説明ではありますが、「ルビンの壺」を思い出してください。誰でも一度は見たことがあるはずです。
http://www.brl.ntt.co.jp/IllusionForum/basics/art/rubbin.html
実はこれは、人間の脳の認識方法の大きな特徴である「地」と「図」を説明する格好のサンプルなのです。「ルビンの壺」なんか知ってるよ、という人もとりあえずもう一度じっくりと見てください。
 「壺」と「人の横顔」を同時に鮮明に見ることはできますか?
 できないはずです。人間の脳は対象物を「地」と「図」に分け、「図」を見て「地」を排除する傾向があるからです。つまり、「壺」を認識すれば「人の横顔」が背景として意識から排除されてしまうし、「人の横顔」を認識すれば、「壺」が背景として排除されてしまう。
 でも「ルビンの壺」は、「壺」でもあり「人の横顔」でもある、というのが本当のところ。

 …だから。マテリアルフェアリーは異世界への「穴」でもあると思うのですよ。これは比喩的な意味ではなくて、文字通りのこととしてです。マテリアルフェアリーを通して、我々の世界に異世界が流れ込んできてしまっているのですから。しかも、フェアリーはだんだん数を増やし、まさしく「世界の皮膜が穴だらけ」というのが現状。

 まだ断定することはできませんが、今主人公たちの前で起きていることは、フェアリーたちの独自の生殖活動である可能性が高い。そうすると、上空に浮かぶ巨大な円盤はフェアリーたちのコロニーということになります。
 確かにどこか暴力的な側面もあるのですが、実は人間に限らず生物にとって性と暴力は一体のもの。もちろんフェアリーは生物とすら言えないかもしれませんが、自律的存在が自分のデータを継承させるためには、おのずと同種との競争が発生します。もちろん勝つためには闘わなきゃならない。
 あれ、ならば暖色系同士、寒色系同士が闘うべきであって、暖色系と寒色系が闘うのはおかしいだろう、という疑問を持たれる方も多いと思います。しかし我々の世界の生物でも不思議とそういう風にはならないことも多いのです。
 私がまっさきに思い出したのはヒキガエルの繁殖活動。一匹の雌に大量の雄がラグビーのタックルのように鈴なりにしがみつき、我こそはと雌の卵に精子をかけようとする。気の毒にも、雌はこの騒動で圧死してしまうこともよくあるそうです。

 ただ、マテリアルフェアリーの場合、個体のデータが少しずつ変化しながら寒色系、暖色系、寒色系、暖色系と服を着替えるように引き継がれていく。だから産卵した側の個体は交配時に必ず壊れる。我々生物の生殖とは相当に異なります。そもそもこれじゃあ個体はぜんぜん増えないじゃないか…それも確かにその通り。ただ、「ぶんちゃん」が「産卵」したのはあの機械魚の一カ所だけとは限らない。希紗と一緒に横浜のあちこちをフラフラしているのですから、あちこちに「産卵」している可能性はかなり高いとみます。それが「機械卵」と同時期に一斉に孵化していたとしたら?

 ひょっとすると、ラストシーンでちらと登場した、幼稚園の暖色系の大群はそれなのでは…

 確かに今回、希紗にとってはとんでもない大事件が起きました。でも希紗は、それを薄々感じた上で、覚悟してみなとみらいにやって来た節がある。
 もしマテリアルフェアリーのライフサイクルが、今述べたような特異なものだとすれば、今閉じこもってやりすごしたとしてもいつかは惨劇が起きる。
 ならば、相手に触れるしかない。理解しようと努力するしかない。青ざめ、倒れ込みながらも、懸命にライフサイクルを理解しようといる希紗。
 …次回、最終回。希紗は何らかの結論にたどりつくことができるでしょうか。
posted by てんちょ at 19:05| 大阪 ☀| Comment(2) | TrackBack(15) | 絶対少年 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>てんちょさま
こんにちは、いつもTBありがとうございます♪(ウチじゃあんまり効果なくて申し訳ないのですが;)

さて、いよいよ次回最終回ですね。
あたしはアタマが悪いしEVAで懲りたので、ペダンチックに走りそうになるのを堪えてるところです(苦笑)。伊藤さんの今までの作品からして、やっぱ最後は正義が勝つ感じかな?

昨夜の横浜上空は、巨大なフェアリーならぬ玲瓏たる満月が君臨しておりましたよ。
Posted by 青猫 at 2005年11月17日 13:15
いえいえ。いろいろな人がいろいろなことを論じられるのがこの作品のよいところだと思います。
ところで、正義…って、この作品に正義とか悪とか出てきましたっけ(素朴な疑問)。

 えっ「エヴァ」ですか?私にはどうしてもギャグアニメにしか見えなくて。劇場版見に行って、一人で大笑いしてて、真面目そうな中学生たちににらまれました。ごめんなさい(^^;
 ただ、「エヴァ」のころはかなりみんなヤバいくらいにマジで論じあってたので、「そういうのはよくない」と言い続けてました。
 たかがアニメです。気楽に、冗談交じりで、でも一見アニメと無関係な知識をポイポイと取り込んで、それでいてそれなりにつじつまの合う理屈が仕立て上げられたら、それは面白いじゃないですか。
Posted by てんちょ at 2005年11月17日 15:55
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