2007年10月16日

スパイダーライダーズよみがえる太陽第26話

 ああ、とうとう終わりました。感慨深い。昨春の「真下祭り」3本立ての中ではもっとも期待していた本作品ですが、途中中断、CSのみ放映という不運に見舞われつつも、当初に考えていたのからははるかにとてつもない高みまで上り詰めてしまいました。久々の子供向け真下作品だったわけですが、前衛路線も大胆に取り込んだ、非常に野心的傑作に仕上がったのは、真下信者としては慶賀のきわみであります。うん、こういうのが見たかったのですよ。まさか本当にやってくれるとは思っていませんでしたが。しかも、どうみても苦渋に満ちた結末を迎えそうな設定を山ほど繰り出しておきながら、ラストは驚くほど爽快。しかもご都合主義ではなく、結構とことん突き詰めた結果というのがえらい。

 「マンテッド、困ってんだろ?ならおれに言えよ」

 そう来たか。いや、これは見ていてうなった。ここまでやられると、「悪の心だけを斬る」というのは、単なる奇麗事ではなくて、かなりの説得力を持つものになってくる。

 悪を倒す、という概念が自ずから悪を抱え込むことになる、という哲学的構図は、このコンビの前作「MADLAX」にも通底するものでありますし。苦悩を全部バグースに押し付ける構図はややずるいといえなくもないのですが、確かにうまいといえばうまい。ハンター君が最後まで屈折せずまっすぐであるからこそ、あの結論にたどりつけたという部分はあるわけですからね。

 このあたりはまさしく黒田氏の手柄ですね。今までもいろいろな脚本家とコンビを組んできた真下ですが、黒田氏が一番しっくり合ってるんじゃないかという気がしてきた。

 そもそも伏線の回収能力という点では、黒田氏は金巻氏より断然優れていますね。確かにコロナとアクーネの過去話は放りっぱなしだし、結局地上世界はどうなっているのか、ハンター君の過去はどうなのか、いろいろ未解決な要素は残っていますが、全体としてはかなり納得の行く結末といえるんじゃないでしょうか。かなり壮大でどっしりと手ごたえのある重い結末、しかも爽快。

 最後の最後までオラクル神はほとんど出てきませんでしたね。本当に最後の一瞬にチラッと出て来ましたが、結局その意図は人々によっと外側から解釈されるばかりで、オラクル神が自ら意図を語ることはなかったわけですから。

 でも神というのはそういうものだ、ということなのでしょう。実は極めて不条理かつ異質な存在であり、個々人が「解釈」を加えて勝手に納得しているにすぎないのだと。

 結局のところオラクル神がやっていることは何なのかというと、地上世界から次々と人間を徴発してきて、地下世界のために戦わせる、ということだけ。どうやらインセクターだけでなく、その前にも「敵」はいたらしい。どうやらオラクル神にとって満足な事態とは、善と悪が闘って善が勝つことではなく、常に二つの勢力が闘っている状態、ということになります。

 ということは、次なる「敵」もどこかで準備されているはず。つまり敵を倒しても倒しても次なる敵が用意される。マンテッドはそのきりのなさにうんざりして怒りを覚えたということなのでしょう。そんなわけのわからない神などお断りだ、そんな残酷な神など否定しておれが神になってやる、と。そう考えるとマンテッドの行動はすごくよく理解できる。無理もないといえば無理もない。

 でもハンター君は逆に「困ってる目の前の人を助けたい」という、ものすごく卑近なところで行動しようとした。なるほど、それならば、オラクル神の意図はぜんぜん関係なくなる。確かにオラクル神は理解不可能な不条理の存在かもしれませんが、オラクル神のシステムのもとに世界が運営されている以上、「自分がそれにとって変わる」などということができるわけがない。

 オラクル神は、私たちの世界でいえば「運命」のようなものなのでしょう。「運命」が不満だからといって、自分が「運命」になれるはずもない。

 ある意味、かなりシビアな状況下から、ここまで前向きの結論を、しかも子どもにも理解できる形で引き出したことアニメは誠に見事というほかありません。最後はバグースにも、グラスホップにも見せ場があったしね。そして、ハンター君は地上に戻らず、地下にとどまりつづけることを決意する。結構あっけらかんと。まあそれが「責任を果たす」ということなのでしょうが。何の悲壮感もなくあっけらかんと決断してしまうのが、ハンター君。1年かけて作り上げてきたキャラだからこそ、説得力のある結末となったんでしょうね。この前向きさ、結構貴重です。苦難を乗り越え、全52話を完結させた真下&黒田コンビに拍手。またこの二人の作品、見たいものです。

 ただ、「ハンター、コロナちゃんとアクーネちゃんとどっちを選ぶんじゃ?」というブレイドの質問はなんだか(^^;

 いやーどう考えてもコロナでしょう。あの二人、もはや思いっきり所帯じみてましたから。コロナも「私のハンターは」とか言いまくってましたしね。普通なら「お前のもんじゃないだろ」とかツッコミ入れるところですが、どうみても、もうハンター君はコロナのものだよなあ(笑)
posted by てんちょ at 03:02| 大阪 | Comment(2) | TrackBack(0) | スパイダーライダーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
勇者ブレイドの処理は、ファンタジーでなければ「あほかっ」でしたなあ。
それにしても、ここまで「初めから処理するつもりのなかった重要そうな伏線」だらけの作品の伏線処理を評価なされるとは。うーむ。製作者側の決断はある意味潔いとは思いましたが……。
Posted by ポール・ブリッツ at 2007年10月19日 17:04
黒田さんのえらいところは、「処理する必要のない伏線」をちゃんと理解して、絶対に処理すべき伏線はちゃんと処理してたこと。それは「マドラックス」でも一緒だったでしょう?
金巻さんが困るのは、「魔女とは何か」という、一番根本の絶対外してはいけない伏線を放置して終わってしまったこと。それは…マズいよねえ。
Posted by てんちょ at 2007年10月20日 00:14
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック