毎回おんなじこという羽目になってますよ。見終わった瞬間に感嘆のため息がもれる。今回もしてやられた。
この作品を「ガバガバ」と非難している人は、的外れ。よーく見てると、雑な作劇ミスと思われたツッコミ所が、どこかで必ず伏線として回収されている。こういう緻密さが、お見事というほかないのです。
とにかく文句言わず黙って見てろ、グウの音も出なくなるから、というところ。
確かに絶対絶命のピンチと思わせておいて、それは今回の冒頭であっという間に解決してしまう。こうなると「ああまたか」とそろそろ思えてきてしまいますよね。ところが、そういう視聴者の心を見透かすかのように、まったく思いがけない新展開が現れるのだから、おそろしい。
次から次へとナナに襲い来るピンチ。しかし、それをとことん理詰めの策謀で切り抜け、実にエレガント、に解決した、と思わせておいて、実は敵の方が一枚上手だった、という驚愕の展開。しかもこれ、ちゃんとOPでヒントが示されてるんですわ…… どうして気づかなかったかな。
ナナに指令を出している委員会は本当に信用できるのか、ナナの前任者はいたのか、次々生徒が殺されているのに、ナナは疑われずに済むのか、ナナはなぜ無様なミスを連発しているのに犯行を突き止められないのか。
どうやら、これらは全部物語の不備じゃなくて、伏線なんですよ。定められたルールの中で、とことん設定を活かしぬいてこそ物語は生きる。こうでなきゃいけません。
で、これに対して典型的なダメ展開になっている作品があったので、ご紹介。いや、これはあかんやろ…… 「魔女の旅旅」第9話。
今回ダントツの人気作品でありながら「死ぬほど平板」という声もあり。私も同意見。まあ、それでも高慢ちきな主人公の成長物語かと思っていたんだけど……
別に「シュナの旅」みたいな残虐さがない、という不平が出ているからといって、じゃあ出そうか、と言って出せばいいというものではない。そういう伏線はここまでまったくありませんでしたし。そう、こういう急展開は、ちゃんと伏線が張られていないと、ただの思いつきになってしまうんです。
確かに主人公はどこかで大きな挫折を与えられそう、という伏線はありましたけど、これじゃあ成長にはならない。ただのトラウマ抱えるだけですよね。しかも、主人公たちが助けに行く過去の親友が、実はサイコ野郎でした、という展開は、開始5分で予想がつきます。こんな素人でも読めるような浅い展開してるから、深みがない、って言われるんですってば。
最初に設定したルールを思いつきで壊すのは、最低の行為。残虐な設定を出しさえすれば、なんか深みが出たような気がするのは、それこそ底が浅いというべきでしょう。
2020年11月30日
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