2014年12月18日

黒澤明映画祭「乱」

 というわけでもう一本の劇場未見黒澤作品。行ってきました。たぶん、今後も35ミリで見られる可能性はほとんどないと思います。



 なんせ国内では「老人の妄想」「大枚をはたいた駄作」という評価が確定しているので、今も人気が高いモノクロ作品のようなリバイバル上映も望みにくい。

 ただ、この作品欧米では異常に評価が高くて、「黒澤の最高傑作」とする評価すら珍しくないんですね。まあ日本人は「欧米のエキゾチシズム趣味」と片付けてしまいがちですが、久しぶりに見た感想としては「それほど悪くないし欧米人が熱狂する気持ちもわからないではない」と思いました。私はきらいじゃないです、こういう映画。

 まあ、モノクロ時代の黒澤作品とは似ても似つかない「お芸術」な作品で、「これぞ娯楽」という路線を求める人には失望しかないでしょう。ただ、ここまで一人の人間の美意識が貫かれた映画は早々なく、その点ではある意味立派。そして久々に見て気付いたんですが、これ時代劇じゃなくて明らかにシェイクスピア劇。なによりもまず舞台劇なんですよ。だから映画としては非常に空々しいし、時代劇として当然クリアするべきいろいろな要素がすっ飛ばされてしまっている。

 でも欧米人にしてみれば、時代劇のよくわからない約束事が省略されて、自分たちに親しいシェイクスピア劇にぴったり寄り添ってくれているのですもの。それはもう嬉しいしスッと頭に入る。騎馬戦も時代劇というよりは中世騎士道的質感がありますね。ある意味寓話的。初公開当時「庶民がどこにもいない」という批判がありましたけど、まあそれはないものねだりというもの。寓話で舞台劇なんだから。むしろ個人的には「七人の侍」の「侍とは」「百姓とは」という押し付け気味な御託の方がウザいので、むしろこれ位がちょうどいい。

 そしてなにより仲代達矢のリア王は見事なはまり役。その後仲代がシェイクスピア劇に傾倒していく先触れとなったとすら言えます。狂気の芝居をやらせたら、この人ほどハマる人もいない。「影武者」はイマイチ合ってませんでしたが、これは実にぴったり。

 しかし考えてみれば、黒澤明って、結構バタ臭い監督だったんだなあとしみじみ。そういう点では、小津安二郎と結構似てる。そして私は日本的な部分よりもバタ臭い部分の方が好きだったりするので。最高傑作は、と問われたらやっぱ「用心棒」と答えるかな。 
posted by てんちょ at 02:15| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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