2012年12月10日

「弥次喜多 善光寺詣り」

 京都文化博物館で日活映画100年記念上映がスタート。フィルムセンターの方は別にどこででも見られるような作品が主体でかなりがっかりしましたが、こちらはなかなかずらりとレアものがそろってます。

http://www.bunpaku.or.jp/exhi_film.html

 新派悲劇の「二人静」がある、大河内傳次郎の「槍供養」がある、内田吐夢の「汗」に「天国の日帰り」田坂具隆の「路傍の石」に稲垣浩版の「闇の影法師」…

 そんな上映の先頭を切るのが目玉の松ちゃんこと尾上松之助主演のこの作品。フィルムセンターの方では、より有名な「豪傑児雷也」をやってるみたいですね。



 こちらほどコテコテではありませんが、あまり残っていない松之助主演作品のバラエティぶりを示すよい例といえるでしょう。DVD版は45分に対し上映は68分。どこがそんなに違うんだろうと思いましたが、フィルムの傷やタイトルカット・字幕まで同じなのでほぼ同一バージョン、DVDは24コマで流しているだけのようです。

弥次喜多善光寺詣り [DVD] / 尾上松之助 (出演); 辻吉郎 (監督)

弥次喜多善光寺詣り [DVD] / 尾上松之助 (出演); 辻吉郎 (監督)

 監督は「槍供養」の辻吉朗ですが、うってかわってなんとも陽気で呑気なコメディ。ご存知「東海道中膝栗毛」のコンビが主役ですが、なぜか善光寺参りに出かけ、途中で出会った姉弟の敵討ちを助太刀すべく敵を追っていざ広島・宮島へ…って、善光寺どこ行った(笑)とにかく全編脱線につぐ脱線。フィルムが切れて残っていないのかそれとも最初から撮っていないのか、投げっぱなしのネタも多数。

 何の脈絡もなく唐突に狐に化かされたり、天狗の団扇を拾って悪戯をして天狗に拉致られたり…と結構特撮もいっぱい。さすが松之助映画です。

 まあ、伊藤大輔らが映画の革新を行う前の作品なので、カメラは据えっぱなし、舞台劇のようにひたすらロングショットで撮っているというありさま。今の目線から見るとかなり退屈するかもしれません。このころの映画はみんなこうでした。インテリは日本映画を馬鹿にして見ず、洋画ばかり見ていたというのも仕方ないかもしれない。まあ、われわれサイレント映画好きにしてみれば、これはこれで独自の味わいがあるんですが。当時の人にしてみれば、芝居を見る楽しみに近いものがあったんでしょう。松之助に対する当時の熱狂は、併映の記録映画「尾上松之助葬儀」から感じ取ることができます。ほとんど天皇の葬儀のごとき蓮台に棺を乗せて壮大な葬列が街を練り歩き、沿道を埋め尽くす人・人・人…
 日本映画が独自の映画話法を辻吉朗がこの映画を撮ったのは1921年。「槍供養」はわずか6年後の1926年。この期間に急激に日本映画が変化したことがわかります。今回は上映ないけど伊藤大輔おそるべし。
posted by てんちょ at 01:07| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サイレント映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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