2012年06月20日

「嵐の孤児」

 D・W・グリフィスの代表作のひとつですが、通常日本で上映されているのは125分版。私の手元にあるLDのキリアムコレクション版も125分です。ところが先日WHDが発売した版権フリー2000円ディスクのシリーズは150分。「発掘した幻の完全版!」とうたってますが、それが本当かどうかは実のところよくわからない。ただ、大半の流通版より30分近く長いのは確か。とはいえ、わざわざ買うほどのものかどうか判らず…悩んでいたところに十三のシアターセブンで800円上映会があると聞き、行ってみることにしました。

D・W・グリフィスの嵐の孤児 <全長版> [DVD] / リリアン・ギッシュ, ドロシー・ギッ...

D・W・グリフィスの嵐の孤児 <全長版> [DVD] / リリアン・ギッシュ, ドロシー・ギッシュ, ジョセフ・シルドクラウト, フランク・ロシー, モンテ・ブルー (出演); D・W・グリフィス (監督)

 まあ、もともと2000円のDVDですからデジタル上映なら「買った方がいい」と思いますよね、普通。でも上映終了後の茶話会(オマケで付いてた。コーヒーサービス)で聞いた裏話によると、なんとこれ特別に版元に作ってもらったブルーレイ版!!道理で画面がえらくきれいだと思いましたよ。会場はガラガラだけど皆さん損したと思う。「なんでそれをチラシに謳わないの」と支配人さんには言いましたけど。

 ちなみにアマゾン評では「伴奏音楽がいい」と言ってる人もいますけど、そう??どんなにサスペンス盛り上がるシーンでも壮大なスペクタクルのシーンでも、のんびりとしたラジオ体操みたいなピアノ音楽が流れててなんだかいろいろ台無し。

 ただ、画面の素晴らしさはそれを打ち消すほどで、フランス革命の動乱の中で引き裂かれた二人の姉妹の波乱に満ちた運命を壮大なスケールとともに描くグリフィスの描写力はまさしく圧倒的。個人的には「イントレランス」よりも「国民の創生」よりも、こちらの方が「誰が見ても文句なしに楽しめる」という点ではるかにお薦めできます。普通、こういうメロドラマって、むりやり悲劇にしてるっぽくなってしまうし、すれちがいがとてもわざとらしくなってしまう。でも、これは違う。グリフィスの伏線の張り方は非常に巧みで、しかも「後にこの男が姉妹の運命に大きく関わる」とか予告した上で、実に自然にストーリーに絡めてくるんだから恐れ入ります。

 以前池田富保の「尊王攘夷」を評した時に「視点がマクロ的すぎて庶民の視点がどこにもないので冷たい印象を受けてしまう」と言いました。庶民とマクロの歴史を絡めるという点でこれはまさしくお手本。ダントンとロベスピエールの相克が姉妹の運命に重なる構成も本当に見事。ただし、史実にはほとんど沿っていないようだし「ダントン=善玉」「ロベスピエール=悪役」というお定まりの構図を用いているのは若干物足りない。まあ、お約束を使っているからこそきれいに決まるという所はあるのですけどね。そのあたりは実に悩ましい。近年では沖方丁の「シュヴァリエ」などでよりニヒルで複雑なロベスピエールが登場していますが。その点ではアベル・ガンスの「ナポレオン」が一番よくできていたかもしれません。

 
posted by てんちょ at 02:50| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | サイレント映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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