2006年08月29日

ツバサ・クロニクル第42話「望郷のカナタ」

 3週間ぶりの「ツバサ・クロニクル」。こちらもボチボチ最終回がはっきりと見えてきました。とはいえまだ10話もあるわけですが。ともかくも、CLAMPが原作で出した小道具はすべて登場させる、その上でCLAMPならではの陰湿な展開を否定し、ストーリーを真下流に完全に改変すること、そのことをはっきりと宣言した、宣戦布告のエピソードだったと思います。

 何しろ今回は、原作付きエピソードを途中から作り替えてオリジナルエピソードにする、という初めての試み。途中にオリジナルエピソードを挿入するんじゃありませんよ。結末がまったく変わるわけだから。しかも、そこで小狼君たちがたどり着くのは、現実とは別の、無人のクロウ国。決定的に本質に触れるエピソードであり、原作とは水と油ぐらいに違う思想が語られるれ。これまでの真下の演出は、相当に辛辣でありましたが、批評・挑発レベルにとどまっていたと思います。

 でもこれは違う。明らかに「おまえらとは違う道を行く」という決別宣言に等しいものでしょう。そのくせいま原作でネチネチやってるあたりの小道具はきっちり見せて、結末で同じ場面にたどり着くこと、でもそこで語られることはまったく別のことであることを明示する。何という信念、何という悪意!さすが真下、と拍手喝采するほかありません。

 基本的にCLAMPの描いてきた「旅」は、暢気な物見遊山の旅。これに対し真下のアニメ版は小狼君の内面をたどる旅。結末に絶望しか待っていないのに、それでも進み続ける。なぜなら「そうしようと決めたから」。

 たぶん、CLAMPは最終的に人間を信じていないんだろうけど、真下は人間を信じたいと思っているんだと思います。それをおめでたい、なんて冷笑する資格は誰にもないはず。もちろんCLAMPにも。だって結末にはどんな希望も残されていないのに、それでも進む。それもまた人間のひとつのある姿、ということ。

 今回の「無人のクロウ国」が、羽の力でサクラの記憶をもとに作り出された世界である、というのは実に象徴的なアイデア。世界を巡ることが、その人の主観的内面を巡ることになる。そしてそれは同時に、サクラと共にあり続けた小狼の内面をたどる旅にもなります。記憶が戻ったとしても、自分とサクラの関係性だけは絶対に戻らない。そこにはどんなご都合主義的抜け道もなく、自分に関する記憶だけは決して戻らない。そこから何を読み取るか。人間の愚かさの象徴とみるのか、それとも複雑な多様性の象徴とみるのか。そこで道は大きく分かれます。

 もはや、こうなったらNHKのコードとか関係ない。これはクリエイターとしての、物語に対する思想の問題でしょう。真下は、モラルとか品の良さとか、そういう低レベルな次元でCLAMPの思想に反対しているわけじゃない。ともかく、人間のネガティヴな側面をネチネチとほじり出して、まったく唐突に結末部でそれをぶつける。まるでそれがすばらしい思いつきである、とでも言わんばかりに。そういうCLAMPの制作態度というのは、はっきり言って病んでいると思います。そのくせやたらに説教臭く、妙な高みから押しつけてくる。そんなものをエンターテインメントとは言いたくない。

 ここから先は未知の世界。原作をとるかアニメをとるか。もちろん、私は真下について行きます。みなさんはどうされますか?
posted by てんちょ at 23:23| 🌁| Comment(2) | TrackBack(9) | ツバサ・クロニクル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アナタ、原作ちゃんと読んでますか?w
Posted by a at 2006年09月03日 17:52
>aさん
 あら、違ってましたか。失礼しました。
 いや、けっこう最近までは読んでたんですけどね。あれ、読んでて本当にイヤな気分になるんですよ。不快さに耐えられず、投げ出しました。本当、ストーリーはほぼ同じなのに、何なんだろう、アニメとのこの差は。
 複数のブログで、今回からはオリジナルの展開だと指摘があったので(原作ではそのまま次の世界に行っているという話だった)、鵜呑みにしてました。鵜呑みはいけませんね、やはり。失礼しました。
Posted by てんちょ at 2006年09月03日 22:33
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