へうげもの(7) (モーニングKC) [コミック] / 山田 芳裕 (著); 講談社 (刊)
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ただ、今回ちょっと意外だったのが、今回まるまる使って山崎の合戦を描いていること。こういうのはちょっと社長では珍しい。そして、結構関心したのだけど、このぐちゃぐちゃの合戦の中にあって、それぞれの人物が思惑を持ってどう動いているかがすごくすっきりと分かる仕組みになっている。これは驚いた。大河ドラマでもこれができてなくてただワーワー攻め合っているだけというのが大半な中にあって、さすが名匠の演出力。
原作でも、ここは左介が武人として生きるのをあきらめる重要なシーンなんだけど、はっきり言ってそれほどうまく表現できているとはいえない。押し倒した敵を切れずに顔が凹むほど殴ってごまかす、という感じで。
そこをじっくりと葛藤とともに描いて、秀吉の謀略を知ったことによる動揺も実に鮮やかに描き出している。そこは原作同様のこけおどし演出を封印しただけのことはある百戦錬磨の手わざ。お見事いうほかありません。禁欲的な演出だからこそ、心理描写が生きてくるわけですからね。なんせ「ファントム」では、カーテンを引くだけで肉体関係を悟らせてしまうほど微妙な演出技を駆使する人です。ここでじっくり尺を取った戦略には「なるほど」というほかない。まあ、ここまでやるから、秀吉との今後の腹の探りあいも生きてくるんだろうなあ。
そして意外なことに、武人をあきらめることによって、順調に出世の道が開けていくのが左介の人生の皮肉にして面白いところ。あ、でも今回の兜一杯の抹茶一気飲みとかは、原作にある程度敬意を払った演出でしたけどね。あまりボロが出ないように長く見せなかったのも、社長らしいといえば社長らしい。