2006年06月25日

ツバサ・クロニクル第35話「ふたつのキオク」

 今回、みなさんストーリー分かりましたか。特に後半はわけがわかりませんよね。いやあ、すばらしい。まさかモリヲカ氏の方が、師匠よりも前衛の方向へ行ってしまうとはまったく予想外。しかも非常に一見関係性の薄い短いショットを積み重ねることによって、漠然としたイメージを方向付けしていくなんて、あなたはエイゼンシュテインですか(^^;

 いや、イヤミでも何でもなくてマジほめてます。特に冒頭の阿修羅王と夜叉王の対峙シーンを、各キャラの細かい部分のアップの積み重ねで描くところなんて大胆だし、サブタイトル後も、サクラの夢と阿修羅王の幻視と実際の闘いのシーンが混交したシーンが実に効果的。

 確かに複数の場面を何の説明もなくつなぎ合わせ、登場人物たちが決して経験することのない別の時間のリズムを作り上げるのは、師匠である真下社長の得意技であるのは皆さんよくご存知のことと思います。ただ、社長の場合は丁寧にほどいていけば、我々素人でももともとそれぞれの構成要素が持っていた別個のストーリーを復元することは不可能ではない。しかし今回のモリヲカ氏のこれは、あまりにもお互いの領域に入り込み、侵犯し合っているため、もとの3つの要素にバラすことはほぼ不可能になっています。それが、複数の意識が混ざり合うこのシーンを表現する手段としてはもっとも適切であり、絶妙な効果を上げていると言わねばならないでしょう。

 師匠はもう少し長めの、ふたことみこと、台詞があるショットをつなぎ合わせる編集を好みますが、モリヲカ氏は台詞も排したほとんどイメージ映像に近い大胆な編集を試みました。各ショットの長さはほんの数秒のものも多いはずです。

 特に一番最後の阿修羅王と夜叉王の対決シーン。飛び上がる阿修羅王、燃える切っ先、転げ落ちるサクラのブローチ、呆けた表情のサクラ、窓の外の赤い月、驚いた表情のサクラ、近づく阿修羅王、燃える切っ先、阿修羅王の目、前半の幻想シーンに登場した阿修羅王と夜叉王の抱擁シーン、夜叉王の涙、何かに気付いた表情のサクラ、抱き合う阿修羅王と夜叉王(剣が夜叉王を貫いているかどうかはあいまい)、二人のアップショット、真上からの構図で燃え上がる夜叉王、阿修羅王の涙、とここまで約2分間、台詞がまったくありません。今、1ショットずつ分解して見てようやくストーリーが分かったよ(笑)。え、それは演出として失敗じゃないのかって?いや、必ずしも分かりやすいのが良い演出とは言い切れないでしょう。特にこれ、ストーリー自体は大したもんじゃないんだし。

 特にCLAMP作品のような魔法インフレ世界では、より超自然的なことが起きたことを表現するのはすごく難しい。その場合、こういう「容易には理解し難く断片的にしか感じ取れない」手段が効果的。まあ、CLAMPはそんなことカケラも気にしてないんでしょうけどね。

 ただ、真下に「お気楽なテーマパーク世界」と断じられたのはよほど気に障ったと見えて、飛王のコントロールによる「安全な世界」をようやく離れたのだと言い出すんだけど、いまさら手遅れです(笑)

 モリヲカ氏、ぜひこのままの路線で突っ走って独自カラーを確立してください。あ、今回もアップ画面が少々荒れてました。何とかしてください(^^;
posted by てんちょ at 13:26| 🌁| Comment(2) | TrackBack(8) | ツバサ・クロニクル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かに今回に至っては真下師匠よりモリオカ氏の方が上手だと感じました。

恋愛を表現するには「好きだ」とか「愛してる」とか直接的にやらないほうが効果的なことが多い。あくまで表現においてですが。
そういう点において、今回の演出方法は(前衛であるでないはおいておき)効果的に作用している。
キスシーンを長めに、そして無言にさせたこと。ある一種の禁断の恋状態のふたりを表現させるには適切だったんじゃないかと。

小狼達の戯れを阿修羅王が眺めるところのシーンにも書きたいのですが長くなるので割愛。

さて、てんちょさんの注目していた所に入っていきます。同じく感心していますので。
モリオカ氏は時間軸を交錯させ、一見関係のないシーンを組み合わせていってラストまで持っていく手法をとっています。
しかも余分な説明をしないことでより深みが増していくようにも。

後のネタバレになりますが阿修羅王は夜叉王と抱擁するに至り、夜叉王がすでに死した存在であることを知ります。戦場で会うのは魂の残りだとも。
そういったことは次の回で描かれるでしょうが、視聴者は知らされず観るわけです。

しかし、阿修羅王の感情の一端は、しっかりと視聴者に伝えられます。

モリオカ氏の手法は一番最後のシーンにおいて結実します。そして阿修羅王が取り残されたまま、長い空白でENDを迎えるわけです。

とくると次の回を誰が担当するかはわかりませんが、個人的には言葉少なに終えて欲しいなと思う次第。

(全くCLAMPにも見習って欲しい。あの五月蝿く行き当たりばったりな漫画を見て書いていると、つくづく今回は非常に良く纏められているのだなぁって感心します。)
Posted by トコヤミ at 2006年06月25日 17:47
 ふむむ。変わらず緻密ですね。トコヤミさん。確かに今回のモリヲカ氏の作戦はシーンの断片化と台詞の排除。

 これは独創的だったし、ことツバサ・クロニクルにおいては大正解だったと言わなければならないでしょう。

 ブログを見てまわると「原作の台詞がない」と不満をもらしている人もいるようですが、あんまり賛成できない。だって、なくても十分成立してるから。もの足りないと思う人は、たぶん原作をなぞるように見すぎているんだと思う。それははっきり言ってアニメ表現の敗北。「xxxHoLic」のスタッフはもっと反省すべきです。なんで平べったい原作にあわせてアニメまで平べったくならなきゃいけないのか。

 ご指摘の通り、モリヲカ氏の「ミックスショット」と呼ぶべき技法は、ストーリーを濃縮し効率的にまとめあげる力がある。ぜひこの先もブラッシュアップし、自身の作風として確立してほしいですね。
Posted by てんちょ at 2006年06月25日 21:56
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