2006年05月21日

ツバサ・クロニクル第30話「哀しいキセキ」

 いやあ、やはり真下監督エピソード、しかもオリジナルとなると、できばえも完成度が数段違いますねえ。作品に対する演出態度というのがよりはっきりと分かりやすい形で示されるということもあるのですが。

 これと交互に演出しなきゃならないモリヲカ氏は本当に大変だとは思いますが、なんとか頑張ってついていってほしいところです。

 で、今回は第1シーズン最終話に置かれ、CLAMP原作の息の根を止めた決定的エピソード『空中神殿』の続編に当たります。

 『空中神殿』のエピソードは、「唯一の願い」という強烈な破壊装置を武器に、CLAMPのいい加減な作品設定などいつでも破壊できることを宣言した極めて辛らつな一本。「唯一の願い」があれば、旅の仲間の結束も、旅の動機も、すべてが無効化される可能性があるわけですから。これで第1シーズンを終えた真下は本当にいい根性していると思います(^^;

 ある意味で「旅とは何か」「物語る行為とは何か」を考察した、批評性の強い一本でした。

 そんな作品の続編だというのだから、普通に終わるわけはないわけで。

 まず、前回にサクラが最後に下した決断を否定するところから初めてしまいます。これからしてまずすごい。前回の結論はかなり巧妙に思えたのですが、そこに既に問題点が潜んでいることを真下は見切っていたのですね。

 「お願いすることで何かを解決しようとする態度は、結局何も解決できずに終わってしまう」
 という、かなり反ファンタジー的な態度がすごい。「マイメロ」に聞かせてやりたいですね。というか、マイメロもいつも何も解決できず騒動を拡大するだけではあるんですけどね。あ、そういう意味では、このエピソードもマイメロも同じスタンスなのか(^^;

 常に自己を絶対視せず、過去のすべてを相対的に見つめ分析しながら進んでいく、真下のこの作品における批評的な方策は、とても独創的だし、斬新に思えます。原作つきエピソードで辛らつな皮肉を織り込んで展開しているわけですから、

「ならばこの作品はどう語られるべきか」

という結論は必要になるわけで。4話おきのオリジナルエピソードは、常にその結論としての意味を示し続けてきました。

 今回は、CLAMPがお手軽に絶対化してしまっているサクラの力でも何の役にも立たないこともあることを描いてしまっています。なんという容赦のなさ!
 でも、「何の役にも立たない」ことを悟らされたときに、どう行動するかで、その人の価値は決まる、真下はそう考えているのでしょう。「絶対的な強大な力」などというものを描くナンセンスさ。CLAMPにそんなことを言っても仕方ない、というか、もはや手遅れなんですけどね(^^;
 アニメはそこから抜け出たその先を描こうという意欲満々。この先が楽しみです。
posted by てんちょ at 23:32| 🌁| Comment(4) | TrackBack(9) | ツバサ・クロニクル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
てんちょさん、こんにちは。

あいかわらず、”愉快痛快怪物君は〜”と歌いだしたくなるような切れ味の記事で、読んでて気持ちいいです。

そうか。オリジナルは、原作への痛烈な皮肉なのですか。まったく気付かずに、「真下監督も天下のCLAMP作品だとおとなしいのね〜」などと無邪気に思っていた私としては、真下監督ごめんなさい状態です。(^^;)
Posted by ふにゃ at 2006年05月22日 00:10
今回の真下監督の作戦は、単にサクラ姫のお願いの無効化というよりも、「死からの復活のあらゆる形」を封じることで、CLAMPのこれからの物語展開に対しある種外堀を埋めるということにあるのではないでしょうか。
すなわち、連載の最終回で死んだ小狼をサクラ姫の奇跡だとかそれ以外のデウス・エクス・マキナで復活させる・・・などという安易な結末のつけ方に対してそれをあらかじめ無効化しておくことにあると思うのですが。
もしこれが正しいとしたらえらい「やれるもんならやってみろ!」というメッセージもあったものですねえ。
わたしの読みはたいてい間違っているので今回もたぶん間違っているでしょうけど(笑)。
Posted by ポール・ブリッツ at 2006年05月22日 16:59
初めまして、突撃ネズミと申します。
真下版イートマンにはまってから、氏の作品の世界観と演出に惹かれていった経緯で色々なサイトを渡り歩き、このホームページに辿り着きました
新参者ではありますが宜しくお願いします。

長い挨拶から始まりましたが今回のテーマ、ツバサ・クロニクル「哀しいキセキ」ですが、今回の話を見ていてイートマン第9話「孤高の空」を思い出してしまいました。
ストーリーだけでなく絵的なもの(目標に対してロープ(ワイヤー)を絡める主人公と村の青年、村の危機を救うため、そして恋人のために奮起する青年、ロープが切れて湖に落ちる主人公)にも
ある種のデ・ジャヴを感じました。
ただ、あの時と大きく違うのは青年だけでなく一度死んだ人々、そして恋人も死んでしまった事。そして、飛王・リードが原作以上に暗く黒く描かれている事です。
第一期ではそこそこ普通のレべルの悪の親玉のように見えたのに今回の演出でマンティッドとザッハ・トルテを足してフライデー・マンデーの爪の垢を飲ませた様な黒い人に・・・
もしかして、アニメ版は我々が思っている以上の何かになってしまうのでしょうか?
Posted by 突撃ネズミ at 2006年05月22日 21:53
レス遅れすみませぬ〜
>ふにゃさん
 まあ、NHKがメイン視聴者として想定しているであろう中高生には、そんなことはどーでもいいことかもしれませんが、「アニメ版はCLAMPと全然違うことを考えている」ということは分かってくれているみたいで。その「引っかかり」を足がかりに「真下耕一作品」として「ツバサ・クロニクル」を見てくれるようになったらいいなーなんて思ってます。まあ、真下はオレ流の作品しか作らないしそれ以外の作品を作る気なんてカケラもないでしょうけどね。

>ポールさん
 CLAMPのことですから、サクラの記憶を集めることで飛王の野望がかなってしまうとか、関係者全員が死ぬとか、陰湿なだけで何の説得力もないオチを用意しているんでしょうが、真下は「そんなものは知ったことではない」と思っているんでしょうな、きっと。

>突撃ネズミさん
 いえいえこちらこそはじめまして。真下ファンは押井ファンほどまだ組織化されていないので、みんなでぜひ盛り上げていきましょう。
 私も真下ファンになったきっかけはイートマンです。明らかに真下にとってターニングポイントとなった作品ですよねこれは。低予算を逆手に取った前衛的な演出。
 「孤高の空」は、解体屋ルーカスの話でしたっけ。ちょっとそんなことは思いつきもしませんでしたけど、なるほど、そうすると「空中神殿」と飛空船が対応する「不条理な超存在」ということになるんでしょうか(ウロ覚えで書いてますんで、違ったらごめんなさい)
Posted by てんちょ at 2006年05月23日 23:12
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