2011年01月07日

「白いリボン」

 ひさびさに映画の話でも。いま現在、大阪・テアトル梅田などで上映中。



 ミヒャエル・ハネケは、ドイツのひねくれたキワもの映画監督。あのえげつない「ファニーゲーム」で一世を風靡した人ですが、「カフカの『城』」とか地味な破滅SF「タイム・オブ・ザ・ウルフ」とかも見ましたねそういえば。なんかどうでもいいぐらいエグい「ファニーゲーム」と、どんよりと地味なアート系作品の間で引き裂かれた印象のある人でしたが。

 このたびそのふたつを見事に統合した新作「白いリボン」をひっさげて登場。2時間半もある大作でしかもモノクロ、舞台は田舎町。ということでゲンナリしそうなものですが、ぜんぜん退屈せず。え、もう終わり?という感じでしたね。

 なにしろ村の医師が道に張られた針金につまづいて落馬し大怪我するシーンから始まり、常に何がしかの暴力が起きている。この何者かの悪意を引き金に、村全体が暴力のカオスに蝕まれていく。本当ならとても見ていられないほどえぐい話なんですが、ものすごく淡々と牧歌的に描写されているので、思わず見入ってしまう。まさしくハネケのふたつの顔がいい具合にブレンドされており、悲願のカンヌパルムドールを勝ち取ったのもむべなるかな。

 この暴力は通俗的なハリウッドの表現とも違うし、北野武の痛覚に訴える様式美とも違います。まったくの他者に与えられる暴力は無感動でどこかよそよそしい。その現実感の乏しさが、暴力の連鎖へのためらいをなくしてしまう。

 この映画の舞台は第一次世界大戦前夜でありナチスのナの字も出てこないのですが、やがてこの地を覆うであろうおぞましい暴力の嵐の予兆を強く感じさせる内容となっています。どんな暴力も最初はささいなことから始まっていること、そこに権力を持つ側が加わって暴力に加担してしまうと、もう止められない。何が原因でなんのために争っていたのかもわからなくなり、ただひたすら止めようもなく暴力の連鎖が続いていく。

 暴力とは何か?という哲学的な問いかけがいつまでも心に残ります。初めてハネケもいい映画撮るじゃないか、と思いましたね。お勧めです。
posted by てんちょ at 02:38| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(4) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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