2008年10月12日

壁抜け男は物理法則に反しない

XYZさんとの対話が続いています。長くなってきたのでまたこちらに移動して続けます。話は物理的可能性の定義に移りつつあります。過去の展開はこちら↓

http://tenchyo.seesaa.net/article/107812967.html

 さて、XYZさん。すみません。
 どうやら私の勘違いのようですね。唯我論的な誤りをする人は非常に多いので、それだと早合点してしまいました。申し訳ない。

 なるほど。わかりました。「物理的可能性」というのを非常に狭くとらえておられるのですね。
「物理的可能性がない」ことと「物理的可能性が小さい」ことは厳密に分けて考えなければなりません。

 確かに古典物理の世界では、目を閉じてあさっての方向から銃を構えて百発百中なんてことはあり得ない。

 でも現代物理の世界では違うのです。ものすごく極端なことを言えば、生身の人間がコンクリの壁を通り抜けられる可能性でさえゼロではないのです。もちろんそれは全宇宙にある原子核の数のうちの1個を選び出す確率よりも低い可能性ですから、通常生活においてはまず起きないと考えていい。

 しかし可能性を操作できる力を持つものがいるならば、可能になってしまう。一見は物理法則を出し抜いているように見えますが、実際はそうではないのです。あくまで物理法則に則った現象であることは変わりません。非常に起こりにくい、というだけで絶対に起きないわけではない。

 そしてそれはこのアニメにおいても、「意志の力」などという神秘的なものではなく、「古代エリエス文明の技術によって脳をフォーマットされたものなら誰でも使えるテクノロジー」でしかない。

 確かにカロッスアとフライデーの問題はいまだに宿題のままの難題でした。せっかくなので、ここできちんと説明してみた方がいいでしょう。カロッスアはフライデーが意図的に放置した可能性のフラグで、不必要になったら切り落とせる枝のようなもの、と解釈していたのですが、おっしゃるとおり、ならばカロッスアの成し遂げたことも全部消えてしまうのではないか、という指摘は鋭い(^^;

 ただ、XYZさんの説のように多世界解釈を導入するならば、分裂した後の二人の世界が干渉し合うなどということはあり得ない。
 思うにカロッスアはフライデーの伸ばした「枝」でしかないので、選択の主導権は握れない。彼がフライデーを殺したと思っても、それは消え去る直前の選ばれなかった「残像」でしかない、というところでしょうか。

 じゃあなんでカロッスアのやったことが現実世界に残ってしまうのか。「真実の場所」は現実世界に開いた可能性の穴のようなもので、いわば「特異点」。ブラックホールと同じで、その中こそが、本当の意味で物理法則が成り立たなくなる世界ですね。

 何にせよそこから出てきたものが現実世界に及ぼした可能性は適当に折り合いを付けて受容されるしかないと。何しろマドラックスとマーガレットはそもそも同一なのに、別々の一個人として現実世界に影響を及ぼしているのですから。現実世界にとっては、出自が何であろうと、今現在二人なのなら、それぞれは別の個体として現実世界に影響を及ぼしていくことになります。

 カロッスアが「真実の場所」で消えたとしても、それはブラックホールに吸い込まれて出てこなくなった粒子が過去に宇宙空間に及ぼした影響まで消え去ることはないのと同じことです。

 と、まあとりあえずはそんなところで。まだ疑問点などありましたらどうぞ。他のみなさんもご意見・異論などありましたらぜひ。
 個人的な意見としては、MADLAXは純粋に現実世界から延長可能なテクノロジーに沿ってすべて説明可能な世界であり、個人の意識はすべて物理法則にのっとった活動として説明可能ではないかと考えます。
posted by てんちょ at 17:02| 大阪 ☁| Comment(5) | TrackBack(0) | MADLAX | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
てんちょ様、納得のいく御説を賜り感謝致します。今までの非礼も改めて御詫び致します。ただやはり言わせて頂きたいのですが、「物理的可能性というのを非常に狭くとらえておられるのですね」という仰りようですが、再三に渡って申し上げておりますようにこれは第3講にあった、てんちょさんの「どんなに物理法則に反することでも」という文言に照らしているのであり、それでは割り切れないことはあるというのも「無限の住人」7話の最初のコメントに「既存の物理法則を〜」という文言で説明しているのです。それを遠回しに私に非があるように仰るのだけはやめて頂きたいのです。それでは話を移させて頂くことを御許し下さい。私はとくに、「多世界解釈」もっといえば「量子論」でこの物語のすべてを説明できるとは考えていなかったのです。フライデーのコンピュータが量子コンピュータでないと考えるのは不自然だと思いますが、それ以外で確信犯的に量子論を狙ったといいきれるものはないのではないかと思っていたのですが、それは間違いだったのかもしれません。これについては番組終了後も製作サイドから情報を得られていたてんちょさんの御話を伺った上で判断しなければならないのかもしれません。とりあえず前述した認識に照らして、現時点では「カロッスアとフライデーの問題」については私の解釈のほうが自然に見えるという認識です。フライデーがカロッスアに撃たれてからカロッスアが死ぬまで彼の前に現れなかったのは何かの法則性にしたがっているようにも見えていたのですが、これは気のせいだったのかもしれません。あとお手空きでしたら「マドラックスとヴァネッサ、エリノアの問題」についても御説明頂ければ幸いです。
Posted by XYZ at 2008年10月12日 19:06
なんだか私の書く文章がすごく「えらそう」に見えるということですか。そうだとしたらごめんなさい。特にそんなつもりはないのです。

>「物理的可能性」というのを非常に狭くとらえておられるのですね
というのは、別にXYZさんを責めているわけでも責任を指弾しているわけでもないのです。事実、XYZさんのように考えておられる方が世の中の大半だと思います。ただ、私たち二人の間の齟齬がどうやらそこにあったらしい、ということでしかなくて。「非常に」というのは後から考えるとキツい言い方だったかもしれません。そこは謝罪します。

MADLAXがらみでリアルタイムに書いたサイトの文書は、考えながら書いていったもので、徐々に考えを固めていったわけなので、こうして細かい部分の表現を指摘されるとあれこれと矛盾点はあるかもしれません。そこはご容赦いただけませんか。あれはあれでリアルタイムの思考の記録なので、いま手直しするのも違う気がする。

ちなみにブログと同人誌でも報告していますが、北山プロデューサーの話を信じるならば、制作者サイドとしては量子論についてはまったく意識していなかったというのが本当のようです。ところが、どういうわけかあんなものができてしまったわけで、アニメ製作の不思議さを感じさせるエピソードです。

 ですから、量子論はこの壮大にしてなぞめいた話を読み解くひとつの方法にすぎず、何でもよいことになります。首尾一貫してさえいれば。そして私はあくまで物質主義的・量子論的側面のみ側面から読み解いているわけです。

 マドラックスが生き返ったシーンの件ですが、この場にいるメンバーの中で脳をフォーマットされているのはマドラックスだけですから、当然マドラックスの観測行為が勝つことになります。
Posted by てんちょ at 2008年10月13日 00:20
てんちょさん、真摯な御説明痛み入ります。
首尾一貫した真理を導き出す御姿勢、御手腕には畏敬の念を禁じ得ません。
Posted by XYZ at 2008年10月13日 19:37
いえいえ、いろいろとイヤな思いさせたみたいでごめんなさい。

真理…かどうかは分かりませんよ。こんな解釈もアリってことで。
Posted by てんちょ at 2008年10月15日 01:51
メールにおいて半年ほどかけて確認させて頂いたことですが、てんちょさんのコメントには不本意な誤解があることから、この場で訂正させて頂きます。そもそも論題となっていた「教えてなぜなにマドラックス」の、第4講には、フライデーを追い詰めたのは実際にはマーガレットなのですが、マドラックスであったと誤認されており、そのことに基づいてフライデーが驚いた事情も誤認されていると思わざるを得ない記述があります。このことに対する認識があった上であれば、できないような仰り方がブログに終始一貫して見受けられ、また「真理」の定義などはこの場合どうとでも都合のいいようにとれたはずなのですが、それをあえて「解釈」と訂正されていることから、「そんな解釈だけはナイ」というべき部分があることを御断りさせて頂きます。ついでながらこのコメントの二つ三つ前のコメントですが、「物理的可能性がない」ことと「物理的可能性が小さい」ことを分けて考えられなかったのは「なぜにマドラックス」を執筆された当時のてんちょさん御自身であって、私は最初からそのようなことはわきまえていたということを、そのことについて事前に御断りしておいた記述の書かれている箇所を具体的に示した上で申し上げており、「XYZさんのように考えておられる方が世の中の大半だと思います」をはじめとするコメントが御門違いであることも御断りさせて頂きます。
Posted by XYZ at 2009年05月29日 00:22
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック